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世界2周目、君はモブ。  作者: 有在ありおり
第1章
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どうか、選別に耐えられますよう。

「あれ? おかしいですね」


天使は、羽を畳んで、キョロキョロと辺りを見回す。


「私の記憶では、確か、ここだった気がするんですけど」

「売地って書いてあるな」


空き地のど真ん中に、看板が挿してある。この空き地は、住宅と住宅の間にあって、どうやら、どこかの家を取り壊した跡のようだ。


「というか、記憶?」 

「あぁ〜、何でもないです! はい!」


そう言って、天使は俺を再び抱えた。


「重くないか?」


天使は、華奢な女の子だ。羽が生えているとはいえ、人一人、それも、高校生の男を運ぶのは、疲れてしまわないだろうか。だが俺の心配とは裏腹に、天使は首を横に振った。


「私は天使ですよ? 佳太さん」


そう言って、彼女は頬擦りしてきた。


「それに、今はこの重みが、とっても嬉しいんです!」

「そういうものなのか?」

「そういうものです! さっ、今度こそお家に帰りましょう。案内していただいて良いですか?」




「佳ちゃん!!」


さすがに家の真ん前は怪しまれるので、ちょっと離れたところで降ろしてもらってから帰宅した。


玄関に立っていた兄貴は、俺に駆け寄ってきた。


「帰りが遅いと思って心配してたんだ。電話にも出ないし……大丈夫だった?」

「あー、大丈夫だったよ。どっかにスマホを落としちゃって、探してたんだ」

「やっぱり」


やっぱり? 俺は首を傾げた。


「まったく、佳ちゃんはそそっかしいんだから。ほら」


兄貴が取り出したのは、赤い髪の女の子に没収されたはずの、俺のスマホだった。


「あと、これも落ちてたよ」


ついでに、コンビニで買った物が入っているエコバッグ。無いと思ってたけど、兄貴が拾ってたんだな。


それにしても、エコバッグはともかく、スマホが戻ってくるとは思っていなかった。


「あ、ありがと。これ、どこで?」

「道端に落ちてたよ」

「よ、良かったぁ〜」


スマホのロックを外す。確かに、数分前に兄貴からの着信が入っていた。ソシャゲのデータも無事で、ほっとした。


「ところで佳ちゃん、あちらの方は知り合い?」

「へ?」


兄貴の視線は、俺の背後へと向いていた。俺が振り向くと、電柱の陰に、天使が隠れていた。羽を畳んだ状態だから、可愛い外国の女の子にしか見えない。


天使は、意を決したように頷いて、こちらに近づいてきた。俺の隣に立ち、兄貴にぺこりと頭を下げる。


「お願いします、私、行くところがないんです。居候させてください!」




数分前までは、「私のことはお気になさらず」と儚いことを言っていたのが嘘みたいだ。


「うぅ〜っ、この唐揚げ美味しすぎます! ほくほく、ジューシーっ!!」


ほっぺたを抑えて、できたて唐揚げの旨さに打ち震える天使。それを微笑みながら見守る俺の家族。


順応力高すぎないか? 外国の、しかもピンク髪の女の子だぞ? 今は見えないけど羽も生えてるし。ていうか、唐揚げ食べてる天使って何?


「いっぱい食べてね、メイネちゃん」

「良い食べっぷりだ」

「メイネさん、サラダもどう?」

「いただきますっ!!」


ちなみに、天使は名前を聞かれた時、メイネ・クライスと名乗った。ちゃんと名前があって良かったが、「二人きりの時は、天使と呼んでくださいね」と言われてしまった。


彼女は、俺に天使と呼ばれることにこだわっている。


なんでなんだろ。


なんとなく見たダイニングのテレビでは、お笑い番組が映し出されていた。家族は、時折それを見ては笑っている。と。



ポーン、ポーン。



どこか不安になるような音ともに、テレビ画面の上に字幕が表示される。それは一瞬で、すぐにテレビ局のスタジオらしき映像に切り替わった。


『えー番組の途中ですが、ニュースをお伝えします』


落ち着き払った様子のアナウンサーが、


『先程、首相官邸では記者会見が行われ、“国家非常事態宣言”が発令されました。国民の皆様は』


にやりと、嗤った。


『どうか、選別に耐えられますよう』

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