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世界2周目、君はモブ。  作者: 有在ありおり
第1章
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白永墨斗

「あれ、佳太は? いないのか」

「コンビニに行ってくるって言ってたけど、遅いわねぇ……」

「俺、ちょっと見てくるよ」


白永墨斗(ぼくと)は上着を羽織り、弟の佳太を探しに行った。


時刻は午後7時。日は沈み切っており、街灯が道を心許なく照らしていた。


「まったく。佳ちゃんは、どこで道草を食ってるんだか……ん」


家とコンビニの中間地点で、墨斗は、見慣れたものを見つけた。それは、佳太がコンビニに行くときに持っていったエコバッグだ。中身を点検すると、思った通り、いくつかの商品と、佳太の母が頼んだコンビニスイーツが、ぐしゃぐしゃになって入っていた。


「何かに巻き込まれたのかな」


とりあえず、エコバッグを回収し、コンビニに向かう。途中、何やら喧嘩している二人組に出会った。


「なーにが重要人物ではありません、よ! 思いっきり重要人物じゃないの!!」

「ですが、私のブックには……」

「不良品なんじゃないの、それ!」

「あのう」

「はぁ? なによ?」


赤い髪の少女が、墨斗に向かって凄む。それには臆せず、墨斗は、少女が手に持っているスマートフォンを指さした。


「それ、どこで拾ったんですか?」


少女は、慌てた様子で、服の中にそれを隠した。


「どこだって良いじゃ無いの。ていうかなに? 言いがかり? これは私のだからーー」

「いいや、これは、弟のです。ケースでわかります。なんなら、ここで電話をしてみても良いですよ」


墨斗が自分のスマートフォンを取り出すと、少女が舌打ち。後、目を瞠る。


「弟、ってことはアンタ、アイツの家族?」

「はい。俺は、白永佳太の兄です。貴方達は、弟に何かしましたか?」

「……何もしてないわよ。このスマホを拾ったから、返してやろうと思っただけ」

「ネコババしようとしたのに?」 


少女は舌打ちし、「おいで」と呟いた。墨斗の足元から、植物がめきめきと生えてくる。


「兄弟揃って、ムカつくわね! ちょうどいい、アンタを餌にして、白永佳太とやらを誘きだ、何すんのよっ」

(あかり)さん」


少女は、フード男に、猫の子のように後ろ首を掴まれていた。


「私のブックではーー」

「またアテにならないブックの話!? ていうか、名前で呼ぶな!」

「この人、いつ死んだかわかりません」

「……」

「誰ですか、この人。前の世界にいなかった人です。おかしいですよ、この人、本当におかしい」

「とりあえず」


墨斗は、足元の植物を靴で踏み潰した。


「佳ちゃんのスマホを返してもらってもいいかな?」






「あっ、ヤバい、スマホ置いてきちゃった」


天使と名乗る女の子に抱えられて、空を飛んでいる最中。無事にあの二人組から逃げ切れたところで、俺は、とんでもないことに気付いた。


「お、俺の無課金の成果がぁ! ログインボーナスがぁ〜!!」

「ふふん、佳太さん。ログインボーナスなんて、私の異能でちょちょいのちょいですよ! 天使の奇跡を使いましょうか?」

「いや、こういうのに奇跡は使いたくないかも」

「難儀なものですね」


うーん、と難しそうな顔で唸る天使。


「私は、貴方の喜ぶことはなんでもしたいのですが」

「それだよそれ。どうして、俺のことを知ってるんだ? 俺は、ごめんだけど、君のことを覚えてない」

「……それで良いんですよ」


ちょっとだけ寂しそうに、天使は笑った。


「貴方は、何も知らないままでいてください。そうしたら、今度こそ、幸せになれますから」

「幸せ?」


星が、月が近い。手を伸ばせば、それらに届きそうだ。もちろん、そんなことはないんだけど。


「……さぁ、お家に着きますよ」

「ちょっと待って」

「これ以上は話せません、思わせぶりなことを言っておいてなんですが」

「じゃなくて、ここ、俺の家じゃない」

「……え?」


天使の着地したところは、空き地だった。


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