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世界2周目、君はモブ。  作者: 有在ありおり
第1章
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警察は呼べなかったけど、別のものは喚べた。

ーー警察。


警察に連絡しなきゃ。


エコバッグの中に入っていたコンビニスイーツは、ぐちゃぐちゃになっていた。


「はあ? 何よあんた?」


さっきから聞こえていた声のイメージとぴったりの、赤い髪の女の子がこっちを向いた。勝気そうな女の子だ。その女の子のそばにいるのは、あからさまにヤバい奴。


フードをかぶっていて、男か女かもわからない。だけど、包丁を握っている手は、男っぽいかもしれない。


ーー包丁!


どくんと、心臓が音を立てた。東堂さんを襲った通り魔は、まだ見つかっていない。さっき聞こえた会話からして、たぶん、こいつが犯人だ。


ーー逃げなきゃ、逃げなきゃ逃げなきゃ。


「あっ、こらっ!」


俺は、エコバッグもそのままに、方向転換。ポケットに入っているスマホの、緊急通報ボタンを押そうとして、転んでしまった。いや違う、これは、転ばされたのだ。


「なんだよコレッ……」


アスファルトから、突然にょっきりと生えてきた植物。たぶん、ツタの種類だ。それに足首をとられて、俺は転んでしまった。


スマホが小気味良い音を立てて、飛んでいく。それを拾った女の子は、「へぇ……」と悪そうな笑みを浮かべた。


「通報しようとしたんだぁ?」


シュルシュルと、蔦が体に巻きついていって、俺は女の子の前に正座させられた。今日はなにかと地面に縁が多い日だ。

女の子は後ろを振り向いた。


「まったく、あんたの見た目が怪しすぎるせいなんだからね。そんな物騒なもの、しまいなさいよ」

「そう言われましても……私には、これが無いと、安心できません」


怪しいフード男はやっぱり男の声で、意外にも、気弱な声だった。女の子は、ふんっと鼻を鳴らして、俺を見下ろした。


「それで? アンタの()()()だと、この男には利用価値があるの?」

「ありません。この男は、重要人物ではありませんから」

「じゃ、モブってところか……殺しても、問題は無いわよね?」


女の子がにたりと嫌な笑みを浮かべる。俺の首周りに、蔦が巻きつこうとしている。


理解が追いつかない。地面から植物を生やす見た目小学生に、俺は殺されようとしているのだ。


やばい。

やばい、やばい。やばい。


「くそっ」

「力なき者は、この先を生き残れない。先に死ねて良かったじゃない」

「なにがこの先だ、このイカれ小学生が。っていうか、お前!」

「……私ですか」

「そうだ」


俺は、きょとんとしている様子のフード男を指さした。


「お前が、東堂さんを襲ったのか?」

「はい。我々の障害になりそうでしたので。貴方は、東堂光希の知り合いですか?」

「俺は、彼氏だ!」

「はて、そんな情報、ブックには……」

「これから死ぬからって、頭おかしくなっちゃったんじゃない?」


肩をすくめる女の子。俺は、巻きついてくる蔦に抵抗しながら言った。


「よくも、東堂さんを傷つけたな。地獄に落ちろ」

「はあ……あんたがするべきは命乞いじゃないのかしら?」


そう言って、女の子は指を鳴らした。


「ぐ、ぅっ」


苦しい苦しい苦しい。身体中から、何かが出てきそうになる。くそ、警察に通報したいのに、誰か、誰か通りかかってくれれば……。

おんぼろ街灯が、ちかちかと明滅した。薄れていく視界に、舞い散る羽が見えた、気がした。


「うそ……どうして、まだ出現時期じゃないはず……」


それは、気のせいじゃなかったらしい。薄桃色の緩くうねった長い髪に、優しげな金の瞳。薄手のレース生地を纏った彼女は、背中から、羽根を生やしていた。


「どうして、女神が……」

「いいえ、私は女神ではありません。ね、佳太さん?」


ぱちん、と彼女がウインクする。気付けば、俺の拘束は解けていた。


「私は、神ではなく天使です。そこのところ、お忘れなきよう。では、さようなら?」

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