本当、気持ち悪い話だよね。
「本当、気持ち悪い話だよね」
二階堂鏡子は、足を組み替え、伸びをするように組んだ両手で足を包んだ。そうすると、彼女の姿勢は前傾になって、燈たちから少し目を逸らす格好になる。
「だから、私はここを作ったんだ。あの男の罪を糾弾するために」
ゆらゆらと、鏡子が体を揺らす。相変わらず、視線は床に向けられている。
「……私がここに、教団の本拠地を構えたのはね。前の世界ではここが、佳太の家だったからなの」
「白永家があった場所……ということですか?」
シャクノの言葉に、鏡子は首を振る。
「白永家じゃない、薄家だよ。ここにはね、本来、薄佳太の家があったんだ。私が愛してやまなかった佳太の家が」
「……ええと」
よく、飲み込めない。というのが、燈と、おそらくシャクノの感想だ。鏡子の言い方からして、ただ単に苗字が変わっているというだけではないのだろう。
ーー本来あるはずの家が一つなくなっていて、それが、白永佳太の薄家で……。
「しろ、薄佳太の家族も、違うということですか?」
これまでの情報を整理すればそうなるだろうか。白永墨斗の家族に、薄佳太だけが組み込まれた……本来の家族は存在を消された?
コンビニスイーツが大好きな、佳太の母親は、本当は母親ではないというのか。
だが。鏡子は、燈の質問に首を横に振る。
「佳太と両親は、正真正銘の家族だよ。薄家は、白永墨斗によってこの世界で再編されたからね。排除されたのは、元の白永家の方」
再編。不穏な言葉が出てきて、燈は喉を鳴らした。
「最期までお友達に振られて傷心の教祖様が、神様の力を使って、自分以外の家族を消去して、幸せな家庭に異分子として潜り込んだっていうのが正解かな。佳太の生まれる年を操作して、自分は兄のポジションに着いた。ほんっと、気持ち悪」
吐き捨てるように言う鏡子。
「さて、燈、シャクノ君。ここまで聞いて、なにか疑問に思うことがない?」
ようやく、鏡子は顔を上げた。足を組んでいたのも解いて、鷹揚にソファに座っている。手足をだらんと投げ出して、まるでそれは、裁きを待つ人間のようにも見えた。
「どうして貴女が、そんなに詳しいことを知っているか、でしょうね」
出現した“ブック”をこんと叩いて、シャクノが言う。鏡子が正解とでも言うように、両手を合わせた。シャクノが、低い声で言う。
「私のブックにも載っていない人物の情報を知っている。貴女もまた、“再編”とやらから免れたのでしょう」
「それで、答えは?」
鏡子は優雅に笑いながら問う。優雅ではあるけれど、それは、たぶん。
「貴女は、白永墨斗の共犯者だ」
「ふふっ、正解」
たぶん、自虐の笑みなのだ。白永墨斗の話をするフリをして、彼女は自分を断罪していた。
明るい色の髪を、耳にかける。
とびきりの悪女の笑顔。
「私たちはね、二人で、世界を終わらせたんだ」
第4章はこれで終わり。次は第5章でお会いしましょう!




