これが、一番手応えがありそうなので
しれっと4章です
現在、世界各地で横行する、異能力による痛ましい事故・事件。日本も例外ではなく、書類上で数えきれないほどの人間が死んでいる。
そんな状況を鑑みて、文部科学省および、警察庁刑事局異能力対策課が打ち出したのが、子供たちの異能力検査である。タガの外れた大人たちではなく、学校という枠にある、比較的統制のしやすい子供たちから“管理”していこうという考えだ。
“管理”というのは、苦渋の決断である。
文部科学省の中には、人権の観点から、検査をするべきではないとする意見もあった。なぜなら、人格にかかわらず、強力な異能を持つ生徒は、危険視をされてしまうからだ。異能力検査は、学力検査や、スポーツ能力の検査ではない。
どんなに建前で着飾ったところで、危険人物の特定という面は拭いきれない。
能力によっては、言論や職業選択、信教の自由も脅かされてしまうかもしれない、と。
「だけど、それをする意味はある」
三枝に手渡された資料を手にして、白永墨斗は微笑んだ。
「青田買いってヤツだね。この中で、有望な人材に声をかける。そうして、駒へと仕立て上げるんだ」
「有望な人材が、お前になびくとは限らないだろ」
「その場合は、家族やそれに等しい人間を人質にとるか、もしくは、諦めるかだね」
こともなげに、墨斗はそう言い放つ。諦める。その響きに、不気味なものを感じる三枝。
「じゃあ、あんたの弟も諦めると?」
「あの子だけは諦めないし、あの子が俺についてこないはずがない。貴方も、それはわかっているはずだ」
愚問を投げかけてしまったと、三枝は思った。だが、ひとつ。彼には、疑問があった。
「なあ、あんたは、弟と喧嘩したことがあるか?」
「は?」
何を言っているんだと言わんばかりの墨斗。
「俺はあるぜ。しょっちゅうあった。俺が弟のゲームをとっちまった時とか、俺が弟のおやつを食っちまった時とか」
「全部、貴方のせいでは?」
墨斗は半眼で、三枝を見つめている。三枝は、髪を掻いた。
……途中で方向転換してしまったが、それは、正解だと思った。
白永墨斗は、三枝と同じ、弟を愛するものだと言うけれど、三枝は違うと思う。そりゃあ、兄弟の関係というのは十人十色、二十人二十色? あると思うが。
ーーあのド下手な勧誘。あれは、こいつの思う兄弟像を押しつけただけだ。
弟を喪った人間に、弟の遺志を継げと言う。なるほど、一見理にかなっているが。
ーーそれは、第三者が言うことじゃない。
白永墨斗は、“自分の物語”を信じている。弟を殺された兄は、必ず復讐をするのだと。だから、第三者でありながら、三枝に接触してきた。
認知のズレ、だ。
極度のブラコン。こうあるべきという兄弟像。
それがあるからこそ、白永墨斗は、三枝に接触した。
ーーまあ勿論、こいつの弟が、超性格良くて非の打ち所がない完璧超人だって可能性もあるが。
「何を考えてるんですか?」
「うんにゃ。なあ、教主様。今度、あんたの家に行っていいか?」
「は? ダメですけど」
ぴんぽんぴんぽんぴんぽん。
「はいはいはーい」
インターフォンを連打されて、俺はカメラを覗き込んだ。学校から帰ってきて、すぐのことだ。
「って、あ、貴方は」
「フード男さんですねぇ」
メイネの言う通り。フード男は、ぺこりと画面の中でお辞儀をした。その隣に、箱根さんは、いない。
「一体どうしたんですか? 箱根さんは?」
フード男の返事はない。
とりあえず、俺は玄関を開けて、フード男を招き入れる。と、次の瞬間。
「貴方、どういうつもりですか?」
メイネの低い声が聞こえて。ひんやりとした感触が、俺の首元にあたった。フード男は、平坦な声で言う。
「これが、一番手応えがありそうなので……申し訳ありませんが、人質になってください」




