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世界2周目、君はモブ。  作者: 有在ありおり
第3章
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異能力検査

「ぐすっ、今日もみんな、無事に学校にたどり着いてくれて、先生は嬉しいぞぉっ」


九条先生は、世界が変わってから涙もろくなってしまった。眼鏡を外して、スーツの袖で涙を拭っている。


「巷では、異能力者同士の争いが死者を出している。困ったことがあったらすぐに、『異能力専門ダイヤル』に電話するんだぞ」


ひとしきり泣いた後、九条先生は、きりっとした顔になって、


「それと関連して、我が校でも明日、“異能力検査”をすることになった。政府の機関から、“鑑定”の異能を持つ人間が派遣されるそうだ。これは重要な検査なので、出席するように」




異能力検査。


不思議な世の中になったもんだと俺は思った。


「わざわざ“鑑定”してもらわなくても、自己申告でよくね?」 

「じゃあ俺は触ったものを黄金に変える能力!」

「こうやって嘘つく奴がいるからわざわざ鑑定されるんだよなぁ」


わいのわいのと盛り上がる教室。“鑑定”の異能力かぁ。いろんなところで重宝されそうだなぁ。


「お、ま、え、は、何を余裕ぶっこいてんだよ!」


俺の前に来て、勢いよく(ひそひそ声で)叫んだのは、二階堂に席を略奪された西村だ。


「よっ、西村」

「よっ。じゃねえんだよ、もっと危機感を持てよ!?」


さらに首に腕を回され、西村の声がどんどん小さくなっていく。


「お前、どうやって“異能力検査”を乗り切る気だよ!? 今はメイネちゃんのことを異能扱いにしてるけど、本職が来たらあっという間に嘘がバレちまうぞ!?」

「あっ!?」


そうだった。俺、無能力者なんだった!


「いや、逆に“鑑定”で俺の気付いていない才能が明らかになったりとか」

「目が泳ぎまくってんだよ。あーもうどうしよう、佳太が研究機関に連れていかれちまう。お前、明日学校休んで南の島とか行ってこいよ」

「そうしたら、後日に回されるだけだよ」


俺と西村が唸っていると、涼しい声が隣から聞こえた。二階堂が、さらりと髪をかき分けて、俺に向かって微笑んでいた。嫌な予感。


「“異能力検査”かぁ」

「お前の差し金か?」

「まさか。私にはそんな権限ないし、政府機関が勝手にやってることだよ」


読めない笑みで、二階堂はそう言った。


「私って、内政できるだけの力無いから。異能力が蔓延っても、今の日本を支えてるのは、偉い政治家の人だよ。今回の“異能力検査”は、乱れた秩序を元に戻すための一環ってところかな? そんなの、無駄なのにね」

「どうしてそんなことが言えるんだ?」


二階堂が、人差し指と中指を立てた。


「異能には、二つの種類があるから」




『大丈夫です佳太さん、いざとなったら、天使の力でみなさんの記憶を消しますから!』

「頼りにしてるぞメイネ!」

「佳太君、それ、悪魔の囁きだよ。手っ取り早いのは、“鑑定”の異能を持った人間を片っ端から……」

「なんてことを言うんだ東堂さん」


体操服に着替えた俺たちは、健康診断の時みたいに保健室の前でそわそわとしていた。


いっときは逃亡を考えた俺だが、そもそも異能力がなかったからって何なんだろうか。前の世界ではみんなそうだったのだから、モルモットもへったくれもないだろう。


「白永佳太さん。中に入ってください」

「は、はいっ」


声が裏返ってしまった。これは出席番号順だから、東堂さんも西村も、二階堂も俺より後だ。 


保健室の扉を開けると、柔らかな雰囲気の女の人が椅子に座っていた。この人が、“鑑定”の能力を持っているのだろうか。


「はじめまして。私は、警察庁刑事局異能力対策課に所属している、升宮(ますみや) 硝子(しょうこ)といいます。まず最初に述べておきますが、貴方の異能を把握するのは、貴方が犯罪に巻き込まれてしまった時に貴方自身の身を守るためです。この検査の結果は口外されませんし、鑑定されることで貴方に不利が生じることはありません。ご安心ください」

「は、はいっ」

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。すぐに終わりますから。目を閉じてください」


この人に“鑑定”の能力が備わったのは、神様の名采配だ。額にかざされた手に、俺は安心して目を閉じた。


「あら」


しばらくして。俺が目を開けると、升宮さんは、自分の手を見つめていた。


「驚きました。鑑定不能」

「いやっ、あの、それはっ」


慌てる俺。だが、升宮さんは、おっとりとして言った。


「これで、15人目ですね」

「……へ?」

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