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世界2周目、君はモブ。  作者: 有在ありおり
第3章
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転校生を紹介するぞー

「安心したまえっ、カレーは無事だ!」


人質をとられている人にかける言葉みたいだなと、俺は思った。


目の前でカレーを食べるのは、現実にはあまりいない、でも今の世界にはけっこういる、青色の髪の女の子である。俺の同級生よりも年上に見えるから、大学生くらいだろうか? 


青色の目を細めて、彼女は俺をまじまじと見た。


「君の分のカレーは、冷蔵庫にとってある。まずはそれを食しながら、我々の話を聞いてくれないか?」


ずいぶん、不思議な話し方をする女の子だ。女の子は、メイネを見た。


「そちらの、女神様と一緒にね」




「こちら側で紹介するのは、本当はあと一人いるのだが、彼女は風呂に入っていてね。後で紹介しよう」

「はい」


メイネのことを、女神と呼んだ女の子に、俺は固くなって答えた。それを知っているのは、“神待つ者たち”の関係者だと推測できるからだ。


台所。俺は、女の子の向かい側の席に座って、温めたカレーを食べていた。メイネは俺の隣で、やっぱりカレーを食べている。


「うーん、一晩寝かせたカレーもまた美味しい……」

「メイネは全然緊張してないな」

「この人のことは覚えていますから。悪い人じゃないですよ。どうしてすぐに自分のことを名乗らないのかってことを考えると、なかなか食えないなって思いますけど」 


メイネが金の瞳を細めるのを、肩をすくめるだけで受け止める女の子。


「それは、彼女が来てからの方が説得力が増すと思って……ああ、来たようだね」

「遅くなり申し訳ありません。久しぶりのお風呂だったので、つい、長風呂になってしまって……」


ガチャリと音がして、人が入ってくる。母さんの服を着ているその人は、世界が変わる前、よくテレビで見た人だった。


「し、神藤(しんどう)議員!?」


茶髪の髪は今はおろしているが、それをきゅっとまとめれば、あの政権与党の急先鋒、神藤議員の完成だ。


テレビでは見たことない柔らかな笑顔で、神藤議員は微笑んだ。


「ええ、佳太さんのおっしゃる通り、私は、神藤綾女(あやめ)です」

「それじゃあ、この人は?」

「この人は……」


ちらりと、神藤議員は女の子を見る。女の子は頷いた。


「この人は、中田原善晴(よしはる)総理です。今は、可愛らしい少女の姿ですが」


からんからーん。


俺が、スプーンを落とした音である。




「テレビで殺されたのは……偽物の私だ。正確には、自分の姿を変えることのできる能力を持った、与党議員だった……」


カレーを食べる手を止めて、女の子、もとい、中田原総理はそう言った。 


「私は、差出人不明の手紙の内容に従ったんだ。その手紙には、“神待つ者たち”がこれからする蛮行について書かれていた。それと、私と……私の身代わりになった彼の異能も」


中田原総理は、とても苦しそうだった。テレビで何度も見た殺害現場は、偽物じゃない。本当に、人が死んだんだ。


俯いていた中田原総理は、俺のことを見た。


「それから、白永佳太君。君のことも書いてあった。生き延びることに成功した暁には、ここの住所に住んでいるであろう、“佳太”という少年を頼れ、と」

「俺を、ですか?」

「そうだ。その手紙によると……君は、“神待つ者たち”を止める唯一の手立てを持っているとのことだった。女神の制御装置、ともね」


女神の制御装置。それって、どういう意味なんだろう。


「だから私は、ここに来た。頼む、白永佳太君。日本を、日本を、救ってくれ!」




「と、言われてもなあ……」


たぶん、すごかったのは、世界1周目の俺であって、今の俺じゃない。今の俺は、こうして学校に通うことしかできないし。


「よーし、ほぼみんな揃ってるな、転校生を紹介するぞー」


転校生? こんな時期っていうか、こんな時に?


言葉とは裏腹に、かっちんこっちんな動きをする九条先生が、急に意を決したように、「どうぞお入りください!!」と、叫ぶ。普通に入口の引き戸が引かれて、クラスにほっとした空気が流れーー凍りつく。


ウチの高校の地味なベージュのブレザーが似合うのは、東堂さんだけだと思っていたけど。


じゃ、なくて! 


「初めまして。いや、初めましてではないかな。今日からこのクラスの生徒になる、二階堂鏡子です」


教壇の前に立つ彼女は、優雅に微笑んで。


「このクラスでたくさん、楽しい思い出を作りたいと思います。よろしくお願いします」

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