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世界2周目、君はモブ。  作者: 有在ありおり
第2章
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優しかったら、関わらないでしょ。

潮風の匂いがした。 


「君、大丈夫かい?」


いつのまにか、気絶していたらしい。体を起こすと、警察の人が、心配そうに俺を見てきた。


「どうしてこんなところに? もう夕方だよ。家に帰りなさい」

「はい……」

「本当に大丈夫? 送ってこうか?」

「いえ、大丈夫です」


なんとか復旧したゆりかもめには、車掌が乗っていた。なんでも、磁気を操る能力を手に入れた鉄道関係者が乗っているのだとか。


能力が自分の職業に合わなくて、仕事を辞めた人もいる中で、こういう人もいる。自分の能力を人のために使える人がいるのだ。


なんの力も持ってない俺は、メイネを容易く奪われた俺は、東堂さんの彼氏として失格なんじゃないか。窓の外に映る、真っ赤に染まった東京湾。

降りた駅には、夕日と同じくらい真っ赤な髪の女の子。


「……どうして」

「どうしてでしょうね。私にもわからないわ」


箱根さんは、自分の左隣の椅子を、ぺしぺしと叩いた。




「ちょうどいいんじゃない?」


箱根さんは、そう言った。隣に座る俺と視線を合わせようとはせずに、固く閉まっているホームドアを、じっと見ていた。


「凡人のアンタには、扱いきれないことだったでしょ。鏡子様が取り除いてくれて、良かったじゃない」

「東堂さんは、殺されるかもしれないんだぞ……メイネだって、無事じゃ済まないかもしれない」

「だから何? アンタには、関係ないでしょ」

「でも」

「これ以上、被害者になる必要はない」

「ひがいしゃ?」

「そう」


だってそうでしょ、と箱根さんは呟いた。


「何にもわからない状態で、勝手に期待をかけられて。挙句、死にそうになるなんて」


これはたぶん、箱根さんの話だ。箱根さんは、足をぶらぶらと揺らしていた。


「……アンタって、結構家族に恵まれてる方だと思う。だから、アンタが死んだら、皆悲しむわよ。今怪我してるのだって、悲しむと思う」

「結構優しいんですね、箱根さんって」

「一般論を言ってるだけ。東堂光希もそう、彼氏のアンタが死んだら、悲しむわよ」

「東堂さんは、優しいからなぁ」

「……」


箱根さんが、俯いたまま、無言になった。ホームドアはずっと、固く閉じられたまま。


「優しかったら、関わらないでしょ。凡人のアンタを、こんなところまで連れて来ない。アンタに、余計な選択肢を与えた時点で、あの女は優しくない」

「うまく言えないんですけど、東堂さんは、俺のために関わってくれたんです。俺を死なせないようにって」

「…………る」

「メイネもそう。俺なんかを助けてくれた。2人とも、とっても優しいんですよ」


「そんなの、もうとっくに知ってんのよ!!」


箱根さんが顔を上げて、俺の襟を掴んだ。


「なんでアンタ、優しいで済まそうとするの!? どうして後悔したって言わないの!? あんな女達に関わるんじゃなかったって言わないの!? ……どうして原因を作った私となんか、話してるのよ」


そんなの、待っていてくれたからにすぎない。


そう言うと、「当たってほしくなかった」と、そっぽを向かれた。同時に、襟を掴む手も離された。


「アンタは、この駅で降りるだろうからって、あの女が」

「あの女って……」

「東堂光希ですよ」


箱根さんの右隣に座って、ずっと黙っていたフード男が、口を開いた。


「君を止めてくれと、彼女に言われたんです。青桐の所に行こうとしているんでしょう。テレビ局には、この駅が近いですからね」

「……」


俺は、急いで立ち上がった。


「座りなさい」


のに、植物が邪魔をして、俺を強制的に椅子に座らせる。


「これ、どけてください。東堂さんの頼みでもそれは聞けない」

「落ち着けって言ってんのよ。青桐に会ったところで、アイツが口を割るわけないでしょ」

「それより、もっと良い方法があります」 


ちょうど、次の電車が来た。ホームドアが開く。箱根さんとフード男は、にんまりと笑った。


「総本山を、叩きに行くわよ!」

「……へ?」


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