人それを、フラグと言う。
「出ないっ、俺は出ないですからぁ!!」
よりによって、家族がいない時間帯。
その時間を狙って、箱根さんとフード男(まだ名前を教えてもらっていない)はまたもや襲撃(?)してきた。
『いるのはわかってんのよ白永佳太! ここを開けなさい!』
「東堂さんと居留守を貫くって約束したから絶対に出ません!!」
『どうして律儀に返事をしてしまうんだ、この少年は』
ぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽ
「地味に嫌な攻撃されてるっ」
インターフォン連打。
『早くしないと私の指が疲れちゃうでしょうが!』
「じゃあ押さなきゃ良いのでは!?」
『そういうわけにはいかないのよ! えっ、ああ、違うんです。近所のお兄ちゃんに会いにきてて、はい、トイレに行ってるからって。あっ、ごめんなさい、うるさかったですよね、えへ…………どうしてくれんのよ、ぶりっ子演技しちゃったじゃない!?』
『さっきから思ってますが、燈さんの自業自得では?』
お巡りさんのことをうまくやり過ごした箱根さんは、インターフォンのカメラに向かって怒鳴ってきた。この前の絶縁性の人といい、意外と警察は機能しているものだ。あと、フード男は意外と冷静なツッコミをする。
『とにかく入れなさいよ、じゃなきゃ、外に出てきなさい』
「嫌です。東堂さんに減点されるから!」
『何よ減点って!? あ、やば……』
その声を最後に、箱根さんの声は止み、ついでにフード男の声も止んだ。そして、2人の姿はカメラから見えなくなった。
「何が起こったんだ……?」
「大方予想がつきますけどね」
メイネが苦笑い。しばらくすると、連打ではないインターフォンの音が聞こえて、
『佳太くん、いる? 邪魔な2人はどこかに行ったから、安心してね』
東堂さんが、カメラの向こうでひらひらと手を振っていた。すごく爽やかな笑顔。
『じゃあ、私は少しやる事があるから、行くね。約束守ってくれてありがとう』
そう言って、東堂さんはカメラに背を向けた。推察するに、あの2人は。
「ヤられたな」
「ヤられましたねぇ」
メイネも同意してくれた。
「どうしよう、東堂さんには、殺人犯にはなってほしくない」
「どうして殺す前提なんですか」
なんだか、殺意に満ち満ちていた笑顔だったからだ。
「東堂さんを追わなきゃ」
「東堂光希は人殺しなんかしませんよ。復讐をするなら、本人手ずからというのが良いのでは?」
人殺しなんかしない、と言ったメイネの瞳は、確信に満ちていた。
「そりゃそうか。東堂さんは、あのフードの人に滅多刺しにされたんだし、良い機会になるのかな?」
「そうですよ。心配しなくても、東堂光希はすぐに帰ってきますよ。あれは出鱈目に強いですし」
「さて、と」
超人的な力で、人気のない山へと連れてこられた燈たちは、がくがくぶるぶると震えていた。
前の世界で、“神待つ者たち”の障害となったらしい東堂光希は、この世界でも、彼らの障害となっていた。
「私の彼氏に手を出したんだから、それ相応の覚悟はできてるよね?」
「私が刺したことに怒っているんじゃないんですか?」
「貴方に刺されたことによって、私はいち早く能力を発現できたから、むしろ感謝というところかな」
「メンタルが鋼すぎる……」
「そうでしょ?」
なぜか、東堂光希は嬉しそうに笑う。
「だけど、それはそれとして。人のことを12回も刺す危険人物のメンタルは、ボッキボキに折っておかないとね?」
「ひえっ」
恐怖の処刑ショーの始まりである。東堂光希が、一歩踏み出した、その、瞬間。
「急拵えのメンタルで、よくもまあ、そんなことが言えたものね?」
3人以外はいないはずの空間に、声が、響いた。




