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世界2周目、君はモブ。  作者: 有在ありおり
第2章
14/44

うまく行ってるようで、安心したの。

「はあ、はあ……」


少女は、壁に手をついて、荒れ果てた永田町を歩いていた。

街の様相に違わず、少女自身もまた異様だった。だぼだぼのシャツの裾を捲り上げ、伸びた髪をネクタイで縛り。通常であれば不審者だが、この街には似たような人々がたくさんいる。


突如、日本に降ってきた異能のおかげで、少女は然程目立たなかった。だが、少女はあまりにも、美しすぎた。


ーーひどいありさまだ。


顔を顰める少女に、近づいてくる下衆な人間は多かった。


「よお、姉ちゃん。あんたはどんな異能を手に入れたんだ?」

「おっぱいでけえな。ちょーっと触らせてくれよ」


風紀など、あったものではない。少女はじっと、男を見た。


「胸を触らせれば良いのか?」

「え?」

「胸を触らせれば満足するのかと聞いている」


なぜか威圧する少女に、男たちは間抜けな声を出した。少女は、シャツのボタンを外し始めた。


「こんなニセモノ、いくらでも触らせてやる。だが後悔するなよ。お前たちが触ったのは、おーーぎゃっ!?」

「え?」


男たちは、二回目の間抜けな声を出した。なぜか胸を露出させようとしていた少女が、スーツを着た女によって、頭を叩かれていたからだ。


「まったく、貴方という人は……」


溜め息を吐く女は、ぎろりと男たちを見た。


「な、なんだよ。あんたも相手させてやろうか?」

「ていうか、あんた、もしかして、二世ぎっ」

「喋んな、三下」


少女を抱いたまま、女は男たちを吹き飛ばした。


「私の異能は、“風を操る能力”です。それなりに役立つと思われます」

「……神藤君」

「私も同行させてください。あの場所に行くのでしょう?」

「なぜそれを」 

「ふふっ、何故でしょうか。お一人での道中は危険です。私も、同行させてください」

「だめだ。君はもう、私の部下ではない。私に従う理由はない」

「いいえ、私はまだ貴方の部下です」


女の瞳は、どこまでも真摯だった。膝を折り、少女の手をとる。


「拾ってもらった御恩を返したいんです。お願いします、連れて行ってくださいーー中田原総理」






「臭い。すぐに燃やして」


まったく、我らがリーダーにも困ったものである。衆議院から出てくるや否や、未だに玄関にある死体に、二階堂鏡子は、顔を顰めた。


「はやく」


苛立ったような声。


「しかし、()()はとっておいた方が良いのではないですか? 今の時代、本物と偽物の区別はつきにくい。私の“中継”も、どの程度信じられているのかわかりません」

「本物でも偽物でも変わりないわ。重要なのは、想像力を掻き立てることだから。私たちがどんなに残虐なことをできるか、反抗する人間を殺せるか」

「わかりました……総理の遺体を燃やしてください」


炎系の能力者がいて助かった。中田原総理の遺体が燃えるのを、二階堂鏡子は、じっと見つめていた。


「もっと火力出ないの?」


無茶を言う。


「私、早く帰りたいんだけど」

「でしたら、この場を去れば良いだけでは?」


そもそも、臭いと言うのなら、すぐに組織の本部に帰るべきだ。それなのに、二階堂鏡子は、遺体が燃え尽きるまで、その場を動かなかった。


焦げた床を見て、頷く。


「うん、すっきりした。これで教主活動に専念できそう!」




来た時と同じく、正面玄関から出た青桐と二階堂鏡子は、待っていた車に乗り込んだ。 


「あそこを拠点としても良かったのでは?」

「あんな旧時代の遺物に住むわけないでしょ」

「だからといって、あのような場所に行かなくても……」

「あそこじゃなきゃダメなの」


二階堂鏡子は、相変わらず頬杖をつき、見えもしない窓の外を見ていた……おや。


「今、笑いました?」

「ええ、笑ったわ。うまく行ってるようで、安心したの」

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