またどこかで会えたら嬉しいです(仮)
タイトルはテキトーですっっj。結末考えてないので考えていきます。
0.「プロローグ」
月曜の朝から教室がガヤガヤと騒がしい。僕は後ろの窓際という理想的な席を手に入れているのだが、この煩い空間では僕は安眠できないので仕方なく窓を見て意味の分からない感傷に浸っていた。この騒がしい音波の震源をチラッと一瞥する。
モブA「なぁ、凛。今週どっか遊びに行かないか?最近流行の映画でも見に行こうぜ」
モブB「お〜い、凛。ちょっとこっち来てくれよ」
モブC「この問題教えてくれよ、凛」
たくさんのモブ共に呼ばれている鈴を鳴らした時に響くような名前、そいつがこのクラスで一番の人気者の奏凛だ。ルビを振らなかったら中国の人みたいになってしまいそうだ。
まぁ、どこの学校にでもそんな人気者の奴が少なくとも一人はいる。それだけである。
先生が入ってくるとそそくさとモブ共は自席に座り始めた。
授業が始まったので僕は先生に見つからないように眠ることにしよう。前の席の石垣くんには感謝している。
*****
あっという間に金曜日の夕方になった。一週間なんてのはあっという間に過ぎ去るもんだなと思いつつ僕はとっとと教室を飛び出そうとした。しかし、人生は塞翁が馬であるらしい。なんと今日の日直は僕だったらしい。それは初耳だった。そして僕は先生に呼び出されてしまった。日直の相方が先生にチクったらしい。律儀なヤツだな。
教室の掃除を一人ですることになってしまった。今日は珍しくクラス一の人気者が学校を休んでいたので珍しく教室が静かだったから休み時間の間はコンフォーテーブルにスリープモードにイントゥーしてました…。黒板の隅っこに書かれた名前など眼中に入らなかったわ。まぁ、仕方がない、これは身からでたさびであると致し方なく、誰もいない教室でただ無心で掃除をするのだった。
こういう時に美少女が何らかの忘れ物をとりにきて、そこでイベントが発生するといったシチュを妄想してしまうのはおそらく僕だけではあるまい。
机や椅子を移動させるのがあまりにも面倒臭そうだったので配置だけを整えてからその下をパパッとホウキで掃くことにした。
教室の掃除を全て終える頃にはすでに時計の短い針が円の最下点を軽く通り越していた。職員室から教室の鍵を奪取し教室のドアを閉めようとしたその時、教室の中で誰かの声が聞こえた。
チラリと教室を覗くとその教室には何故か今日風邪で休んでいたはずの人気者が俺の席に座っている描写が見えた。
もしかして…もしかしてだけどあいつ…もしかして…。
俺は今まで何も見ていなかったような素振りで教室に入りこむ。
すると突然のことで驚いていた人気者は、何か言いたそうに口をモゴモゴとしているが、あいにく僕の耳は千枚通しと同じくらいに鋭い。「あわわわわ」と言っている。何も喋らずに教室の一番ど真ん中の机に座り込む。
そして、そこで僕は右のほっぺたをペタリと机の上に乗せて人気者の方を向いて喋り始めたのだった。
「何も言わなくていい。僕は全てを理解してしまったからな」
そして僕は曲げた腰を真っ直ぐに伸ばしてから、引き出しから数枚の課題プリントを取り出した。
「コレ、取りに来たんだろ?」
そう、僕は理解している。人気者は重症だ。週末は学校が閉まってしまうから宿題をとりにきたのだろう。しかし、あまりの体調不良が原因で僕の席を自分の席だと思い込んでしまっているのだろう。そしてそのまま疲れ果てて今に至るという話だ。
そういえば、今日の放課後前のS H Rで人気者の家までプリントを届けてくれって先生がお願いしていた時、誰もが家を知らない感じだったな。
課題プリントの類を僕の机に置いて、提案した。
「僕がお前の家まで送ってやろうか?」
しかし、人気者は何も喋らず、ただ首を横に振り、プリントを握り締めてその場から去っていった。
僕も人気者に気が障らないようしつこく追いかける事はしないことにした。
全く、人騒がせなやつだ。
僕は自分の席に座り、赤く染まった校庭を眺めながらため息をついた。
腕を軽く伸ばして窓を開けて一言呟いた。
「今のが美少女だったらな…」
そこで本当に感傷に浸り始める。
言い忘れていたが実はここ、男子校なのである。
その次の日の土曜日のことだ。僕は街の繁華街を一人で歩いていた。今日は早朝から、ずっと前から楽しみにしていたゲームシリーズ最新版の発売日だったので長蛇の列に並ぶのを回避するために朝の6時から並んで何とかそれを手に入れた、入れてしまった。
フッフッフッと気持ち悪い笑い声は心の中に仕舞い込んでいるが、幸せなのが余裕で判る。気を緩めばニヤけてしまいそうだ。
さすがに徹夜したので今日は少し眠い。頭が少しぼーっとしていたがまぁ、そうなるだろうと無心で街を歩いていると、バッタリと出会ってしまったのは野生の人気者だった。
人気者を見て見ぬ振りをしてその側方を通り過ぎる。
すると、心外なことに向こうから話しかけてきたのだった。
「あ、あの」
僕はそれに誤って反応してしまう。
「な、何でしょう?」
「昨日は…、昨日は本当にごめんね」
モジモジとしながら人気者は話しかけてくる。何だかカワイイ。
「別に、気にしてない。元気になってて良かった」
そう言ったあと少しの間が空いてから突然人気者は泣き出した。
僕は突然のことにどうすればいいか分からなかったので取り敢えず手を取って近くの公園まで歩くことにした。
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「んで、一体どうしたんだ。まだ気分が悪いのか?」
人気者は泣き止んでは吐いたが鼻をすすっていた。そして、落ち着くと深呼吸をして僕に言った。
「実は、僕の余命、あと半年しかないらしいんだ」
僕は何も言わずにただ聞いていた。昨日ひどい目眩があったので病院に行ったところ、相当深刻な状態だったらしい。
「もう、みんなと会えなくなるかもしれない。これからは病院で入院するか、そのまま学校で生活を送るかの二択だと言われたよ。でも、僕はまだ死にたくないから病院に行くことを選ぶのかもしれない。それに…」
そこで、一旦唇の動きが止まった。それでも僕は何も語らなかった。
ただ聞いているだけ。
「これは誰にも言ってないんだけどね。君になら言ってもいいかな」
そして、僕の目を見ながら言った。
「実は僕、『夢』があるんだ。世界中の人々を助けることのできる医者になりたい。」
そして、少し沈黙があった。
「この事は学校の誰にも言わないでね」
そう言って人気者はゆっくりと立ち上がり、僕にまたねと言ってその場をさってしまった。
僕は、一つだけ気になったことがあった。
どうして人気者は誰にも言ってない『夢』を僕に話したのだろうか。
そんな答は出るはずもなく、家に帰ってゲームをする気にもならなかったのでそのまま眠りに落ちた。
ありがとう