④燃え盛る業火、ファイナ様復活へ
いよいよ4話目です!
ついに復活の石を手に入れたチアキたち。今日は、火の女神ファイナ様を復活に向かいます。しかし、ハルキにせまる魔の手が!?
1.神からの伝言
まあ、こうなることは分かってたけどね。ミユキが、私の家に住むことになるなんて。私の家、広いからいいけど…。
これを提案したのは蛇子。
「嫌われるのはつらいでしょう。チアキの家で暮らしませんか?」
と言い、ミユキが速攻でOKした、というわけ。ミユキは、
「みんな私から離れるのに、3人は違うんだね。嬉しい。」
と言っていた。あまりに嬉しそうだったから、流れで許可したけど…。
「ミユキ、起きてる?」
私は庭に出て、かまくらの中を見た。ミユキはいないから、もう起きているみたい。
(それにしても、まさかかまくらを部屋にするなんて…。)
部屋を無駄に減らさないように、と、わざわざそうしてくれたのだ。
私は、キッチンに行った。いつものように、蛇子が朝食を作っている。
「蛇子、おはよう。何作ってるの?」
「目玉焼きと卵焼きとみそ汁です。ご飯も炊いています。」
「今日は卵がメイン?」
「そのとおりです。ところで、ハルキは?」
「まだ寝てる。」
「やっぱり。」
「ドーン」
「んっ?」
2階から聞こえた。まさか…。
(ハルキが!?)
私は、慌てて階段を駆け上がった。そして、ハルキの様子を見るため、私の部屋に入ろうとした。…が、入れなかった。
部屋中がめちゃくちゃ。そして、床に倒れるハルキ。
(あれ?この流れは…。)
ミユキが言った。
「あっ、おはよう。ごめん、ちょっとやりすぎて…。」
「まただー!」
「また?」
「一応聞くけど、ハルキは?」
「まだ寝てるみたい。」
「やっぱりそうか…。」
(また部屋直さなくっちゃ。)
「皆さん、朝食ができました。」
1階から、蛇子の声が聞こえた。私とミユキは、まだ寝ているハルキを起こすのが惜しくなり、そのまま1階に向かった。
私たちが朝食を食べ終わるころ、ハルキはようやく起きたみたい。なぜなら、2階から声が聞こえたから。でも、私は思った。
(私の部屋に誰かいたっけ?独り言というか、誰かと話してるような…。)
心配になった私は、ハルキの様子を見にいった。
「はい、分かりました。」
「やっぱり、誰かと話してるんだ…。」←小声
すると、ハルキが私に気づき、こっちに来た。
「チアキ、おはよう!なんで部屋が荒れてるの?」
「あ、おはよう…。あの。」
「なに?」
「いや、さっき誰かと話してなかった?」
「あぁ、あれね。話してたというか、通信かな。」
「通信?」
(説明しよう!ハルキはさっき、ヒカリ様と通信していたのだ!)
「そう。僕から始めたんじゃなくて、ヒカリ様から通信が来たんだけどね。」
「通信機器でも持ってるの?」
「いや、そういうわけじゃなくて…」
(説明しよう!通信は、テレパシー的な感じの何かで行うのだ!)
「ナレーションにもよく分からないこと、あるんだね。…で、なんの通信をしてたの?」
「ヒカリ様から、復活の石の使い方について教わってたんだ。あと、8人の女神様についても、おさらいしたんだ。」
「そういえば私、ヒカリ様以外の神様のこと知らないや…。」
「確かに、まだ話してなかったね。そうだ。」
「何?」
「今の通信のことも合わせて、女神様達のことを詳しく教えよっか。2人も気になってるみたいだし。」
ハッとして振り返ると、ミユキと蛇子がこっちを見ていた。ミユキが言った。
「あっ、気づかれた。ごめん、なんか盗み聞きみたいだよね。」
「いいよ、別に。ほら、こっちに来て。」
2人は、私の横に座った。そして、ハルキが話し始めた。
「女神様は8人いて、火の女神のファイナ様、水の女神のスフラ様、電気の女神のサンダラン様、土の女神のロキ様、風の女神のウィンデ様、氷の女神のアイ様、太陽の女神のヒカリ様、月の女神のヒカル様。で、さっきの通信では、復活の石についてを聞いたんだ。使い方は簡単。復活させたいものに石を当てて、祈りの言葉を唱えるだけ。」
「で、その石の力を使って、散り散りになった女神様達を復活させるのね。」
「そういうこと。ミユキは賢いね。」
「……ありがと。」
「あのー。」
蛇子が言った。
「『祈りの言葉』って、なんですか?」
「それは…女神様が知ってるんじゃない?」
「そこは分からないのですね。まあ、仕方ないでしょう。」
「それで、今日、早速ファイナ様を復活させに行こうと思うんだけど、どうかな?」
「いいと思う!」
「私も。」
「私もです。」
こうと決まれば、私は勢いに乗った。
「よし、じゃあもう行こう!朝食食べたし、準備万端だし。」
「そうですね。行きますか。」
私たちは、階段を駆け下りた。
「ちょっとー!僕まだ何も食べてないよ!」
2.火の島へ
ハルキが朝食を食べる間、私は言った。
「そういえば、ミユキって髪の色白いけど、嫌じゃないの?」
「いいの。」
「生まれつきですか?」
「いや、ちょっといろいろあって…。」
「いろいろって?」
「実は昔、友達と離ればなれになって、そのショックで…。元々は水色の髪だったの…。」
「そうだったんだ…。」
「準備できたよ〜!」
ハルキの声が聞こえた。
「じゃあ、行こっか!」
私たちは外に出て、蛇子に言った。
「蛇子、お願い。」
「はい。」
「えっ、何をするの?」
(そういえば、ミユキにまだ言ってなかったっけ。高所恐怖症とかじゃなかったらいいんだけど。)
はたして、ミユキの反応は…。
蛇子が目を閉じ、紫色のオーラが私たちを包み込んだ。
「くる、くるぞ…。」
ハルキが、若干興奮気味につぶやいた。そして、蛇子がカッと目を開き、私たちは宙に浮いた。
「きたーーっ!」
「ハルキは本当にこれが好きですね。」
「……。」
「ミユキ?」
ミユキが黙り込んでいる。
(もしかして、怖かったかな…。)
そして、ようやくつぶやいた一言は…。
「何これっ、楽しい!」
だった。
「ねえ、これってどういう仕組みなの?超能力なの?」
「えぇ。」
「蛇子って、すごいね!」
「それほどでもないですよ。」
「いやいや、蛇子はすごいんだ!僕を飛ばせてくれるんだから!」
「当然のことです。こうしないと、スカイアイランドに行けませんし。」
こんな会話をしている間に、あっという間に到着した。そして着地(ミユキはバランスをとらないといけないことをしらず、しりもちをついた)。
「痛い…。」
「すみません。先に言っておくべきでしたね。」
「ううん、もう大丈夫。」
と、ふいにミユキの瞳が、揺れたように見えた。
「あら、もう来てくれたのですね。」
「あっ、ヒカリ様!」
「ハルキは元気でやっているようですね。ところで、そちらの方は?」
「ミユキです。魔法族で、氷の魔法が得意です。」
「それは、ずいぶんと頼れそうですね。」
「いえ、そんなことは…。」
とは言ったものの、ミユキの嬉しそうな表情を、私は見逃さなかった。
「あの、ヒカリ様。今からファイナ様を探しに行くんですけど、どっちに行ったらいいですか?」
「あぁ、それでしたら。」
ヒカリ様はそう言い、ハルキに地図を渡した。
「これは?」
「スカイアイランドの地図です。おおまかですが、場所は分かりますよ。」
地図には6つの島が円を描くように並んでおり、その中心に一回り大きな島が1つ。
「現在地は、赤い点で記されるんです。今はここですね。」
赤い点は、「光の島」と書いてある島の中にあった。
「で、火の島はここから北に進めばありますね。」
「火の島にファイナ様がいるんですか?」
「可能性はあります。」
「じゃあ、行こっか!」
「うん!」
私たちは、ハルキのあとに続き、歩きだした。
3.砂だらけで暑すぎる!
なんとか地図を頼りに、火の島についた。が…。
「暑いっ!」
「とても暑いですね。」
「しかも砂ばっかり。砂漠みたい。」
「火の島はこういう場所だよ。でも、こんなに暑かったっけ…。」
「こんなに暑いと、ファイナ様も大変なんじゃあ…。」
「いや、それは大丈夫。ファイナ様、火の中でも平気だから。というより、火に当たりたがってるのかな?」
「すごいね、私とは大違い。」
ミユキはそう言い、自分の杖を見た。ハルキは言った。
「確かファイナ様は、火の島で唯一の湖の近くに住んでいたはず。」
「オアシスってやつ?」
「そう。たぶんあっちかな。」
私たちは、ハルキの言うことを信じ、再び歩き始めた。
10分後……
「ほ、本当にこっちなの?」
「そのはずなんだけど…。」
「私、もう限界。」
私は、その場に座り込んだ。
「チアキ、大丈夫?そろそろ休む?」
「うん、ちょっと休む…。」
ハルキも足を止め、ひと息ついた。
「ハルキはやっぱりすごいね。全然疲れてないじゃん。」
「いや、さすがに暑さで少し疲れたよ。」
「そうは感じさせない余裕ですね。うらやましいです。」
「いやいや…。あれっ、ミユキは?」
「あれっ、さっきまでいたはずなのに。」
「どこにいったのでしょう…。」
暑い。ただそれだけのことなのに、体力がどんどん削られていく。ハルキたちと並んで歩けなくなり、私は砂の上に倒れた。半歩後ろを歩いていたせいか、気づいてもらえなかった。
(こんなとき、カメちゃんがいてくれたら…。)
うっすらと開いた目は、ほとんどあてにならない。乾いた喉からは声も出せず、遠くに黒っぽい人影が見える。
(ついに幻覚が…。)
その人影は、こちらに向かってくる。
(誰だろう…。蛇子かな…。)
でも、私の限界は近かった。そして気を失いかけた、その時。
「大丈夫?」
全身黒ずくめの男が、私に言った。声からして私と同い年か、1、2歳年の離れた人だ。
「あ、あ…。」
まともに声を出せない。暑さに耐えきれず、私は気を失った。その寸前、
「『ヒーリングライト』。」
という声が聞こえた気がした…。
「ミユキ!しっかりして!」
私は、ひどいことをしてしまった。ミユキが倒れたことも知らず、勝手に進んでいたのだ。
「チアキ、大丈夫です。気を失っただけです。ほら、息をしていますよ。」
「でも…。」
(説明しよう!ミユキは暑さに弱く、気温が35度を超えると、すごく疲れるのだ!)
「そういうの、早く言ってよ!」
ついついナレーションにあたってしまった。
「うーん…。」
「あっ!」
ミユキがうっすらと目を開いた。
「ミユキ!大丈夫?」
「心配しましたよ。」
「あれ?」
ミユキは、目をぱちくりさせた。
「どうしたの?」
「なんでだろう、疲れが全く無い…。」
「えっ?」
「まあ、無事で何よりです。」
「うん…。」
ミユキは、ゆっくりと立ち上がった。と、ハルキが言った。
「ミユキ!」
「えっ、な、何?」
「あの、本当にごめん…。ミユキがいないことに全然気づかなくて…。もっと早く気づいてあげたかったんだけど…。ごめん、こんなの言い訳にしかならないよね。」
「ううん、大丈夫。そういうことだってあるよ。」
「大丈夫なんかじゃない。こんなの、前と同じだ…。」
「前?」
「ツバキがさらわれたのは、僕が自分のことしか考えてなかったからなんだ。今回も似たようなことじゃないか…。」
「ハルキ…。」
ミユキは、ハルキの肩に手をポンとおいて、言った。
「すごく、弟思いなんだね。でも、今ここにいるってことは、本当に自分のことしか考えてないの?」
「!」
「ハルキが落ち込むなんて、らしくないよ。先に進もう!」
「…うん、ありがとう。」
「すみません、話しているところ悪いのですが。」
蛇子が言った。
「オアシスって、あれですか?」
「えっ?」
蛇子が指差す方には、湖があった。周りには木々が生い茂っている。そのすぐそばに、神殿のような建物が。
「確かに、あれじゃん!」
ハルキの表情が明るくなった。そして私たちは、その神殿に向かった。
4.まさかの…
神殿には、「火の神殿」とあった。おそらく、この中にファイナ様がいるのだろう。私は言った。
「これってさ、入ってもいいやつ?」
「たぶん、大丈夫。」
「しかし、女神様のお宅に勝手に入るのは…。」
「でも、待ってても何も始まらないし…。」
「うーん…。」
私たちがためらっていると、中から声が聞こえた。
「誰かいるの?」
「えっ?今、声が…。」
「ファイナ様の声だ!無事だったんだ!」
「その声は…もしや!」
ドタドタと足音が聞こえ始めた。徐々に近づいてくる。そして、神殿の中から誰かが飛び出してきた。
「あーっ!ハル君じゃん!」
「やっぱりファイナ様でしたか。…ん?」
ハルキは喜んだ様子を見せたが、瞬時に表情を曇らせた。
「ファイナ様?小さくなりました?」
「そう?」
ファイナ様は、湖に体をうつし、確認した。そして言った。
「えっ!ちっさ!」
私は不信に感じた。
(確かに、私と同じくらいだけど、そういうもんじゃないの?…でも、ヒカリ様は蛇子と同じくらい背が高かったっけ…。)
「何、なんなの!?髪が短くて2つ結びできない!しかも、ズボンが膝丈のミニスカに!スカートいやだー!」
「ファイナ様、落ち着いてください。」
蛇子が言った。
「おそらく、魔族が何かしたのでしょう。そのせいで、子供になってしまったのです。」
「そんな〜っ!でも…。」
ファイナ様は落ち込んだ素振りを見せたが、パッと表情を明るくした。
「ハル君が無事で、よかった!」
「ファイナ様…。」
「ところで、その人たちは?翼が無いけど、もしかして…。」
「あぁ、そうですね。説明を忘れてました。ピンクの髪の子が騎士族のチアキ。僕を助けてくれた人です。それから、黒い髪の人が蛇子。人間族だけど、超能力が使えるすごい人です。そして、白い髪の子が魔法族のミユキ。氷の魔法を使える、頼れる仲間です。」
「つまり、地上の人?」
「はい。」
その途端、ファイナ様の背後に炎が。
「ファイナ様?」
「すっごーい!地上の人と会う日が来るなんて、夢のまた夢だと思ってたのに!ハル君と一緒に私のところに来てくれるなんて!うれしー!」
(説明しよう!火の女神ファイナは、興奮すると背後が燃えるのだ!)
「ファイナ様を呼び捨てしちゃだめでしょ!?」
「いいよ、全然。」
(説明しよう!ファイナはとても明るく、少し強気な性格で、誰とでも仲良くなれるのだ!彼女の中に、上下関係の文字はない!)
「あっ、そうなんだ…。」
「ところでさ、ここに来るの大変だったでしょ?少し休んでいきなよ。湖もあるし、体を冷やしたらどうかな?」
「じゃあ、お言葉に甘えて…。」
私は、湖の水を両手ですくい、顔にかけた。
(冷たくて気持ちいい。砂漠ってことを忘れそう。)
「そういえば、ファイナさ…いや、ファイナ。」
「なに?」
「火の島、いつもより暑くないですか?」
「あー、それね。実は私、火の島が暑くなりすぎないように、いつも熱を吸収していたの。で、私が興奮したときように、体内に貯めていたの。でも、子供になっちゃったから、吸収できる量も減って、燃えるときの火が小さくなったから、暑さが増したのかも。」
「そういうことか…。」
「ハルキ、もしかして、復活の石なら…。」
「元に戻せるかも!」
「えっ、どうやって復活の石を!?」
「カクカクシカジカあったんです。」
「なるほどねー。って、分かるかい!」
「よし、じゃあ早速…」
そう言って、ハルキが復活の石を出すと。
「シュッ」
ハルキの前を黒い影が横切り、気がつくと、復活の石が無くなっていた。
「えっ!?」
「ごくろうさん。わざわざ出してくれるとは。」
(この声、あの時、リーダー←名前 を消した人の!)
私が振り返ると、そこには、1人の男が立っていた。
5.最強悪魔カメリア
私は剣を抜き、男の方に向けた。仮面をつけており、瞳の色は分からないが、不吉な笑みをこぼしているのは分かった。
「チアキ、だったか。来てやったぜ。」
「やっぱりあの時の…。」
(ただ脅されていただけの人を消した…。許せない!)
私は、男に切りかかった。が、剣を振りきって気づいた。男がいない。
「おやおや、意外と遅いな。あと、話ぐらい聞けって。」
男は、私のすぐ後ろでつぶやいた。
(速っ!)
「いきなり攻撃にくるとは、やっぱりお前は味がある。」
(殺意はないのかな…。っていうか、思ってたより小さい。)
男は、私の肩ほどの身長だった。 ※チアキ 身長155cm
「俺の名はカメリア。魔族最強の悪魔だ。あっ、エンマ様の次に。」
「私はチアキ。騎士族。」
「騎士族か。なのにおとなしい…。ますますお前は面白いやつだ。」
「カメリア、あなたに聞きたいことがあるの。」
「なんだ?」
「ツバキはどこ?」
「さあな。」
「教えて。」
「断る。」
「教えろ!」
突然、ハルキが言った。
「知っているはずだ!話せ!」
「ハルキ…。」
「おっ、神力使いじゃないか。ちょうどいい、復活の石をもらうついでに…。」
カメリアは一瞬のうちにハルキの左腕をつかみ、走り出した。
「あっ!」
「ハル君!」
「カメリア、待ってください!」
当然、カメリアは言うことを聞かない。
「待って!『アイスロード』!」
ミユキが杖を地面に突き刺すと、かなり広範囲が凍りついた。ミユキは氷の上を、スケートのように滑って追いかけた。普段のミユキより、何倍も速い。
カメリアは、あまりにも突然だったからか、転んでしまっていた。
「カメリア、ハルキを離して!」
「…しつこいやつめ。」
カメリアはハルキを持ったまま、高くジャンプした。
「なら、落ちてきたときに!」
ミユキは杖を構えたが、カメリアは落ちてこない。上を見ると、カメリアは宙に浮いていた。
「悪いな。俺、空飛べるんだ。」
そして、ものすごい速さで飛んでいった。まるで、自動車のように。
「案外すぐだったな。弱い奴らだった。」
「離せ、離せ!」
僕は、なんとしてでもカメリアの手を振りほどこうとした。しかし案の定、ものすごい力で掴まれているため、全く離れない。
「少しはおとなしくしたらどうだ。」
「嫌だ、離せ!」
「うるせえな。分かった。離してやるよ。」
そして、ものすごい高さまで飛び上がり、地面がかすれて見えるころに手を離した。
「なっ…卑怯だぞ!」
「言った通りにしただけさ。卑怯呼ばわりするなよ。」
「くっ…。」
飛べない僕は、落ちることしかできない。悔しく思っているとき、ふいに思い出した。
(そういえば、ムーンウルフが噛みついたとき、投げ飛ばしたっけ…。)
地面は近づいてくる。
「やっぱりお前は飛べないか。助かるすべもなし。まあどっちにしろ、神力だけを吸い取ればいいんだがな。」
(カメリアめ、見返してやる!)
僕は、左手を地面に向けた。そして、地面につく瞬間、左手を強く地面にあてた。
僕の予想通り、落下の衝撃が嘘のようになかった。
(覚醒してなくても、ある程度の力はあるのか…。)
今まで気づかなかったけど、どうやらそのようだ。
カメリアが、驚いた様子で降りてきた。
「なぜ…。」
「助かるすべ、あったよ。」
カメリアは悔しい素振りを見せ、飛び去っていった。
「あっ、待て!ツバキはどこだ!」
僕は追いかけようと、翼を動かそうとした。が、やはりだめだった。
「ハルキー!大丈夫だったー!?」
チアキの声が聞こえた。僕はしぶしぶカメリアを諦め、チアキの方に向かった。
6.ファイナ復活
ハルキがこちらに走ってきたのが見え、私はホッと胸をなでおろした。
「ハル君!ハルくーん!」
ファイナが、ハルキの方に走っていった。
(あっ、このままじゃあ、ハルキとファイナがぶつかって、大変なことに…。)
(説明しよう!ハルキは、時速50kmで走れる!自動車並みの速さなのだ!)
「それ、やばいじゃん!」
「どうしましょう。」
しかし、心配の必要はなかった。ファイナは、ハルキと見事にぶつかったが、全くの無傷だった。
「ハル君、大丈夫だった?あのカメリアって奴、ひどいよね!」
「でも、全然平気です。」
「ならよかった。」
「ねえ、ハルキ。」
ミユキが言った。
「復活の石は?」
私は、慌てた。
「あっ、確かに!ハルキは助かったけど、復活の石が!」
「それなら大丈夫。」
ハルキは、ポケットから復活の石を取り出した。
「それ、どうやって?」
「カメリアに掴まれてるとき、右手はあいてたんだ。だから、隙を見て取ったんだ。」
「さすがハルキ。」
「じゃあ、ファイナ。元に戻しましょうか?」
「もちろん!」
ハルキは、復活の石をファイナの額に当てた。
「祈りの言葉、言っていい?」
「もちろん。」
「じゃあ。」
ファイナは、ひと息置いて、言った。
「復活の石よ。その力で、私を元にお戻しください。炎のように熱い力を、どうかお授けください。太古の王ハレン様、私は今、ここに祈ります。」
言い終わった途端、ファイナが炎で包まれた。そして、炎がなくなると、大人のように大きくなったファイナがいた。短かった赤い髪は長く伸びて、ツインテールになっている。また、ミニスカがズボンに変わっている。首にかけたネックレスには、炎の形をした赤い宝石がついていた。
すると、ファイナの背後に、青白い大きな炎が。
「ももももも、戻ったーっ!やっぱりこれが1番!」
(子供になったからじゃなくて、元々そういう口調なんだ。)
「ウチを元に戻してくれて、ありがとう!…そうだ!」
ファイナは、ネックレスと同じ形の宝石を、ハルキに渡した。
「お礼にあげるよ。何かあったら使えるかもよ?」
「あっ、ありがとうございます!」
「チアキたちも、ありがとう!」
そう言って、私たち1人1人の手をとり、握手した。
「あっ、そういえば、ヒカリは?」
「ヒカリ様は、太陽の神殿に。」
「無事なのね!よかった!じゃあウチは、ヒカリに会いにいくから。…あっ、ヒカルは?」
「ヒカル様は…。」
ハルキは、言葉をつまらせた。
「まあ、私みたいに、どこかでひっそりと生活してるかもよ?」
「そう、ですよね。」
「じゃあ、またねー!」
ファイナは、足から火を噴出し、飛び立っていった。
「ひとまず、ファイナ様が無事でよかった。」
「うん。」
「この調子で、全員助け出しましょう!」
私たちは目を合わせ、ニコッと笑った。
でも、ミユキだけは空を見ていた。何かを懐かしむような表情だった。
私のことを助けてくれたのは、カメちゃんなのかもしれない。カメちゃんはきっと、どこかで生きている。いつか必ず、会いに行くから。
読んでくださった皆さん、どうでしたか?
ハルキの神力、覚醒していないのにすごい力ですよね。覚醒したら、一体どんな強さになるのでしょう?
次回は水の女神、スフラ様を復活へ!