③魔法使いと復活の石
いよいよ3話目です!
果たしてチアキたちは、復活の石を手に入れられるのでしょうか?
そして、新たなる仲間が登場!
私は今日も1人だ。やることといったら、侵入者を追い出すくらい。でも侵入者なんてめったにいないから、本当に暇だ。
魔法を極めればいいのだが、これ以上極めると杖が壊れてしまう。暇な間に杖を磨いていたせいか、誰よりもきれいになっていた。
「あ〜、暇。誰か話し相手になってよ。」
と言っても、友達無し、家族無しの私に、味方なんていない。誰も私に近づかない。
ふいに周りを見渡すと、剣を持った女の子が見えた。
「あんな人いたっけ?」
私はしばらく考え、気がついた。
「魔法族は剣なんか持たない。じゃああの人は…騎士族!?」
騎士族は怖い人の集まり。勝てる気がしない…。
(でも、侵入者は追い出さなくては。)
そして私は、その人の方に行った。
1.宝の地図
「う〜ん、よく寝た。」
私は、ベッドから起き上がった。横には、まだ眠っているハルキがいる。
(すごく気持ち良さそう。)
幸せそうなハルキを起こすのが惜しくなって、カーテンを開こうとする手を止める。
リビングで音がするから、蛇子はもう起きているのだろう。私は階段を降りて、リビングに向かった。
「蛇子〜、おはよう!」
「おはようございます。あら、ハルキは?」
「まだ寝てるよ。」
「そうですか。では、起こしてきますね。」
蛇子は私の部屋に向かった。
ちなみに、なぜこの2人が私の家にいるのかというと…。
前日……
「え〜っ!それ、本気ですか?」
ヒカリ様の驚きの一言に、私はびっくりした。
「本気です。ハルキがスカイアイランドに戻ったら、また奴らがやってきます。魔族は地上の人達に気づかれてはいけないようなので、おそらく地上にはこないかと。」
「で、でも、私とハルキは今日会ったばかりで、一緒に住むなんて…。」
「しかし、騎士族は強いのでしょう?万が一のことがあっても、守ってくださりますよね?」
「私はまだまだ未熟です。強いだなんて、そんな…。」
「不安なのですか?」
蛇子が言った。
「私も、一緒に住みましょうか?」
「えっ?それいいの?人間族のすみかは『ヒューマンワールド』でしょ?勝手に私の家に住んだら、いろんな人に怒られるんじゃあ…。」
「いいんです。家無いので。」
「えっ…?」
「でもさ、確かに蛇子もいたら、百人力だよね!」
ハルキものっているから、私は言った。
「…分かりました。ハルキはうちに住ませます。」
「お願いしますね。」
「よっしゃー!」
というわけ。でもいざ一緒に住むと、楽しくなってきた。1人より、3人の方が楽しいよね。
「ドーン」
「へっ?」
私は、部屋に戻った。部屋はもう、大変なことになっていた。床に倒れているハルキ。
「蛇子、これは一体…。」
「なかなか起きなかったので、ついうっかり。」
「えっこれ…たった一発の超能力でこれ!?」
「はい。」
「てか、ハルキは無事なの?」
「これはまだ寝てるだけです。」
「あっ、そうなんだ、良かった〜。」
(って、まだ起きないのすごっ!)
「郵便でーす。」
外から声が聞こえた。
「私、ちょっと出てくるね。」
ドアを開けても、誰もいなかった。
「あれ、おかしいなぁ。確かに声がしたのに。」
「郵便」と言っていたから、ポストの中をのぞいた。そこには、一通の手紙があった。
「あっ、これのことか。どれどれ…。」
中身を確認した私は、思わず叫びそうになった。
私は、慌てて2人の元に行った。ハルキは今起きたようで、目をこすっている。
「おはよう、チアキ…。」
「おはよう、ハルキ!起きたばかりで悪いけど、すごい物が届いたよ!」
「えっ、何?」
「なんですか?」
私は、届いた物を2人に見せた。
「ジャーン!宝の地図!」
「え〜っ!?」
「なんの宝の地図ですか?」
「分かんない!」
「ズコッ」
「だって、肝心なところが読めなくなってるもん!」
『○○の地図』と書いてあるのだが、ちょうど、○○のところにシミがある。
「確かに、読めませんね。」
「えっ?僕は読めるけど…。」
「そうなの!?種族によって見えたり見えなかったりするのかな?」
「僕、目がいいんだ。視力は5.0くらいかな。」
「視力は関係ないと思いますけど…。」
「で、なんて書いてあるの?」
「それがね、『復活の石の地図』って書いてあるんだよ!」
「へぇ〜。…って、えっ!?」
「いきなり情報ゲットですね。」
「僕たち超ラッキーじゃん!早速行こうよ!」
「もちろん!」
そうして私たちは、復活の石を探す旅に出た。
2.氷の魔法少女
私たちは地図の通り、とある種族の住むエリアにやってきた。けど…。
「2人とも、これはまずいと思いますよ。」
「そう言われても仕方ないよ〜っ。」
蛇子がそう言うのも無理もない。だってここは『マジシャン山』。魔法族の住む山だ。警備が厳重なこの国に、パスポートを持っていない私たちは今、いわゆる不法侵入をしているから。
「もし見つかったらきっと、いや確実に大変なことになります。もっといい方法は無かったのですか?」
「これしか思いつかなくて。」
「ところで、マジシャン山のどこにあるのかな?」
「地図によると、頂上にあるみたい。」
(説明しよう!マジシャン山の頂上には、最強の魔法族が住んでいるらしい!)
「それ、本当ですか?」
「ナレーションの情報って、絶対本当なんだよね。うるさいけど。」
「あっ、誰か来る!」
幸い、近くに大木があったから、私たちはその後ろに隠れた。
(どんどん近づいてくる…。気づかれたのかな?)
心臓の鼓動が早まり、汗もにじみ出てきた。私たちの間に緊張がはしる。
そして、次の瞬間、その人は私に杖を向けて…
「『アイスブラスト』!」
と言った。その途端、私たちの周りに氷の塊が現れた。そして…
「バーン」
「ギャーッ!」
「うわーっ!」
爆発した。
(何、今の?)
私とハルキは、その爆風をモロにくらってしまった。にも関わらず、なんのダメージもない。
「2人とも、大丈夫ですか?」
「うん!」
「大丈夫!」
「超能力が上手くいって良かったです。」
(説明しよう!蛇子はさっきの一瞬でバリアを張り、2人を守ったのだ!)
「そうなんだ。蛇子、ありがとう!」
「いえいえ。……で、あなた。私たちに恨みでも?」
「ち、違う…。」
その人は、ガタガタと震えていた。おそらく、蛇子の強さに驚いたのだろう。
「では、なぜあんなことを?」
「それは、その…。」
(かなり怯えてる…。)
すると、ハルキが言った。
「怖がらなくていいよ。誰も、君を傷つけないから。」
「本当?」
「もちろん!僕が話を聞くよ。」
その人は、落ち着いて話し始めた。
「私の名前は、ミユキです。まだ13歳なんですけど、強力な魔法が使えるからという理由で、ここの警備をしています。」
「僕はハルキ。天族だよ。そこのピンク色の髪の人が騎士族のチアキで、黒い髪の人が人間族の蛇子。蛇子は20歳だけど、僕とチアキは13歳だから、ミユキと同い年だね。」
その途端、ミユキの手の震えが止まった。きっと、安心したのだろう。そして言った。
「…あの、どうしてここに来たんですか?」
「それは…。」
ハルキは迷っていた。天使や女神のことを話していいのか。
しかし、蛇子が言った。
「ハルキ、迷ってはいけません。全てを話すべきです。この人は信用できます。」
「蛇子がそう言うなら。」
そう言ってハルキは、ミユキに全てを明かした。
ミユキは言った。
「そうだったんですか。私も協力しましょうか?」
「本当?」
「はい。」
「ありがとう!」
ここで私は、ふと気になったことを聞いてみた。
「ミユキ、だったっけ?ここにいるってことは、魔法族でしょ?どんな魔法が使えるの?」
「えーっと…。」
(私が説明しよう!先程ミユキが使った魔法、『アイスブラスト』とは、相手の周囲にたくさんの氷の塊を出し、それを爆破させる攻撃だ!その他にも、ミユキは氷属性の魔法を使えるのだ!)
「今の声は?」
「ただのナレーションだから、気にしないで。」
「先程のナレーションから推測するに、ミユキはいわゆる『氷の魔法少女』というわけですね。」
「…『魔法少女』じゃなくて、『魔女』だから。」
「やっと、敬語じゃなくなったね。」
ハルキが言った。
「心を開いてくれて嬉しいよ。ありがとう!」
「えっ…。」
(ん?ミユキ今、顔赤くなった?)
でも、すぐに元の真っ白な肌に戻った。
(気のせいか。)
ミユキは、コホンとせきばらいをして、言った。
「で、復活の石を探してるんでしょう?私、どこにあるか知ってるから、案内しよっか?」
「本当?」
「うん。」
(説明しよう!魔法族の全員が、復活の石のありかを知っているのだ!)
「じゃあ、案内するね。」
3.マジシャン山の頂上に
ようやく私たちは、頂上についた。でも、みんなヘトヘト(ハルキを除く)。
「つ、疲れた。ミユキ、ほうきとか、無かったの?」
「私は、風の魔法使いじゃ、ないの。」
「風、以外は、ほうきとかで、飛べないんですか?」
「うん。そういう、こと。」
「へぇ〜、以外。魔法使いって、みんなほうきで空を飛べると思ってたよ。」
「みんながみんな、飛べるわけじゃ、ないのよ。っていうか、ハルキは、疲れてないの?」
「うん。体力には自信があるんだ。」
「す、すごい…。あぁ、もう限界。ちょっと魔法やっていい?」
「いいよ。」
「じゃあ、お言葉に甘えて。…『アイスレイン』!」
その途端、空から氷が降ってきた。
「急に涼しくなったよ。魔法の効果なの?」
「うん。今の『アイスレイン』っていう魔法は、空から氷を降らせる魔法で、暑い時とかにやると、とっても涼しくなるの。」
「おかげで疲れが消えたよ。」
「ミユキ、すごいです!」
「いや、それほどでもないよ…。」
そう言ったミユキだが、少し笑みをこぼした。
すると、その時!
「ドーン」
突然の爆発音に、私は身震いした。しかも、かなり近くで。
「今のって…。」
ミユキは、青ざめた顔で言った。
「陛下…国王陛下のお城が…。」
ミユキの見る方に目をやると、がれきが散らばっていた。
「あそこにお城があったの?」
「うん…。どうしよう…。」
「とりあえず、お城の方に行ってみよう!」
私はそう言い、がれきの山に向かって走った。私に続き、ハルキ、蛇子、ミユキも(ハルキには一瞬で抜かされた)。
しばらくがれきをどけたりしていると、ミユキが言った。
「ハルキ、これ!」
ミユキの手に、1つの石があった。虹色に輝いている。
「それってもしかして!」
「そう、復活の石よ!」
ミユキは、復活の石をハルキに渡そうとした。すると!
「グルル…。」
「何?」
謎のうめき声が聞こえた。私は辺りを見回してみた。
「がれき、揺れてない?」
(もしかして、マジシャン山の王様が!?)
私は、がれきをどけようとした。
「チアキ、危ない!離れてください!」
「えっ?」
(この下に王様がいる。せめてがれきをどけてから…。)
「ウォーッ!」
突然、狼の遠吠えのような鳴き声が聞こえた。そして…。
がれきの下から、一匹の狼が出てきた!
「キャーッ!」
「チアキ!」
4.魔獣ムーンウルフ
狼は私に噛みついた…と思ったら。
「えっ、ちょっと!こっち来ないで!」
なぜかミユキの方に行った。
(あぁ、よかった…って、安心してる場合じゃないっ!)
私は、持っていた剣を鞘から抜いて、狼を倒そうとした。でも間に合わない!
(もう、ダメ。)
私は、恐ろしくて目をつむることしか出来なかった。
その途端、噛みついた音が聞こえた。
(守れなかった…。私が早く倒していたら!)
私は、罪悪感に押しつぶされそうになった。しかし。
「ハルキ!」
ミユキが叫んだ。おかしい。
私は、目を開いた。そこで、驚きの光景を目の当たりにした。
噛みつかれたのはミユキではなく、ハルキだったのだ。ミユキが、泣きそうな顔で言った。
「ごめん、ごめんなさい。私のせいでハルキが…。」
「いいよ、別に。」
ハルキは、全く痛そうな素振りを見せない。というか、血も出ていない。ハルキは続けた。
「僕は体が頑丈なんだ。このくらい大丈夫。そもそも、翼を突かれても死なない天使は僕だけなんだ。」
(こんな状況でも冷静だなんて…。)
ハルキが無事なことに安心し、大事なことを忘れていることに気づかなかった。
「あっ、復活の石は?」
「大丈夫、私が持ってる。」
「うぅ…。」
ハルキの声だ。
(まさか、ハルキになにか?)
しかし、その心配は杞憂に終わった。
「うおーっ!」
今のは、ハルキの気合いだったのだ。
(あぁ、よかった、ハルキが無事で。でもなんで叫ぶほどの気合いを?)
そして、ハルキの方を見ると…。
(ん?ハルキ?)
ハルキは1人、立っていた。左腕に噛みついていた狼がいない。
「ハルキ、あの狼はどこに?」
「投げた。」
「…は?」
私は、理解が出来なかった。
(あの狼を?2mはあったよ、あの狼。)
「狼はあそこに。」
ハルキが指差す方を見ると、狼が倒れていた。
「本当に、投げたのですか?」
「うん。ちょっと重かったけど。」
「あれがちょっとですむなんて、すごい…!」
ミユキが言った。
(また、ミユキの顔が赤く見える…。)
そう思ったが、気のせいだと自分に言い聞かせ、狼にとどめをさすことにした。
すると、狼が起き上がって、こちらを向いた。驚いて一歩あとずさる私。そして、さらなる驚きが現れた。
「さすが、神力の持ち主。覚醒してないからって、油断しちゃいけねえな。」
なんと、狼が喋った!
(えっ、どういうこと?なんで喋ってるの?ていうか、なんで神力のことを知ってるの?)
「ハルキ、あの狼って?」
「確か…。」
「俺の名はムーンウルフ。エンマ様のペットだ。」
「えんま?」
私はポカンとした声を発した。しかしハルキはその逆で、驚きの声を上げた。
「やっぱり、エンマのペットだ!」
「ハルキ、えんまって誰?」
「エンマは魔族の住む「デビル洞窟」の支配者。いわば、魔族のリーダーかな。」
「その通りだ。お前はいろいろと知っているんだな。」
「ムーンウルフ、一体なぜこんなことを…。」
「そりゃあ当然、復活の石を手に入れるためさ。」
「だからって…だからって城を壊す必要はないはずよ!」
ミユキが言った。
「私、あなたを許さない。『アイスビーム』!」
ミユキの杖から、水色のビームが放たれた。
(説明しよう!『アイスビーム』とはその名の通り、当たると凍りつくビームを出す魔法だ!)
「ミユキ、すごっ!」
そのビームはムーンウルフに命中し、凍らせた。
「すごいよ、ミユキ!」
「魔法族の本気は恐ろしいですね…。」
「いや、全然本気じゃないよ…。」
「じゃあ、本気だったらもっと強いんだ。すごいね!」
「……。」
〜7年前〜
今日もこの公園で待ち合わせ。私は、1人の友達が来るのを楽しみに待っていた。
「あっ、来た!」
友達の姿が見えた途端、私は走り出していた。私たちはいつも一緒だった。嬉しい時も、悲しい時も。
あんなことになるまでは。
「ミユキ、あいつにはもう近づくな。」
突然のことだった。私は言った。
「どうして?」
「あいつは…。」
「お父さん、教えてよ。なんで一緒にいたらいけないの?」
「うーむ…。」
お父さんは続けた。
「あいつは悪魔だ。」
「…えっ?」
言っていることの意味が分からなかった。悪魔なんて、いるはずがないのに。
「お父さん、悪魔なんていないよ。なんでカメちゃんが悪魔なの?」
私はその友達を、「カメちゃん」と呼んでいた。優しい人だから、悪魔のはずがない。
でも、お父さんは言った。
「あいつの瞳は紅に染まっている。それに、服装も髪の毛も、漆黒に満ちているではないか。ミユキが1番知っているはずだ。」
「でも、とっても優しいよ!」
「見せかけの優しさに騙されるでない。悪魔は騙すのが得意だからな。」
「そんな…。」
ショックだった。ただそれだけだった。
日がたつにつれ、お父さんだけでなく、マジシャン山に住む人全員が、カメちゃんに近づかなくなっていった。それでも私は、お父さんに内緒で、時々カメちゃんと遊んでいた。
ある日カメちゃんと遊んでいた時、私はこけてしまい、ひざをすりむいてしまった。
「痛い…。」
「任せて。…『ヒーリングライト』!」
カメちゃんが杖を振ると、痛みが治まり、傷が無くなった。
「カメちゃん、ありがとう!」
カメちゃんは、回復魔法が得意だった。私がケガをしたら、すぐに治してくれた。
(カメちゃんが悪魔のわけがない。だって、こんなに優しいもん!)
でもある日、カメちゃんと一緒にいるところを、お父さんに見られてしまった。お父さんはすぐさま私の方に来て、私の前に立ちふさがった。
「おい、悪魔。うちのミユキに近づくな。」
「あなたは?」
「私は、ミユキの父だ。」
「ミユちゃんのお父さんでしたか。仲良くさせてもらってます。」
「だから、それがだめなんだ!」
お父さんは、強い口調で言った。
「お前が近づくと不幸になる。」
「お父さん!そんなこと言わないで!」
「悪魔はマジシャン山から出ていけ!魔法族失格だ!」
かなりの大声だったので、人が集まってきた。
「あ、あいつは悪魔の!」
「あれが噂の?」
「出てけ出てけ!」
「カメちゃんにひどいこと言わないでよ!」
「ミユちゃん…。」
でも、この思いは届かなかった。人々は言った。
「お前、悪魔の味方をするのか!?」
「ありえない!」
「こいつも悪魔なんじゃあ…。」
「そんなことはない!」
お父さんが言った。
「ミユキは私の立派な娘だ。悪魔ではない。きっと、悪魔に操られているのだ。」
「お父さん、違うよ!カメちゃんはそんな人じゃない!」
「なら、杖を見せろ。」
どんな魔法が得意なのかは、杖の色で分かる。氷属性の魔法が得意な私の場合、杖の色は薄い水色。
カメちゃんは、杖を見せた。
「ふむ、緑色か…。つまり、回復属性の魔法が得意なのか。」
「そうです。」
「うむ…。」
お父さんは、口をつぐんだ。
(お父さんが、カメちゃんのことを分かってくれますように!)
そして、お父さんは言った。
「ミユキ、覚えているか?あの時、お前になんと言ったか。」
「?」
「私はあの時こう言った。『悪魔は騙すのが得意だからな。』と。杖の色を変えることくらい、悪魔なら簡単だろう。」
「そういえば…。」
「悪魔!悪魔!」
みんなが悪魔コールを始めた。
「ねえやめて!やめてよ!」
でも、誰も聞いてくれなかった。すると、お父さんが杖をかかげ…
「『アイスクラッシュ』。」
と唱えた。
アイスクラッシュ。相手の近くの地面からつららを生やし、それを爆破させ、その爆風で吹き飛ばす魔法。
…氷属性の魔法の中で、最も強力な魔法。
「お父さん!」
私が声を上げたと同時に、爆発した音が響いた。
そして、カメちゃんがどこかに飛んでいくのが見えた。
「カメちゃーん!」
「ミユちゃん!今は待ってて!いつか必ず帰ってくるから!絶対、絶対だから!」
その声を最後に、カメちゃんの声は聞こえなくなった。
「あぁ、カメちゃん…。」
その翌日、両親が謎の死をとげた。あまりにも突然で、私には理解できなかった。周りの人は、
「きっと悪魔の呪いだ。」
「悪魔の仕返しに違いない。」
と言っていた。最後までカメちゃんの味方をしていた私に近づく人は、誰1人としていなくなった。
その日から今の今まで、私は1人で生きてきた。カメちゃんが帰ってきた日は、1日も無かった。
それでも私は、カメちゃんを信じている。
(カメちゃん、約束だよ。)
「ミユキ、大丈夫?」
「えっ?」
「いや、なんかぼーっとしてたから、どこか悪いのかな〜と思って。」
「大丈夫、心配しないで。」
ミユキはそう言って、ムーンウルフに杖を向けた。
「とどめ、さしていい?」
「いいよ。」
「じゃあ。『アイス…」
ミユキが魔法を唱えかけた時、ムーンウルフが氷を割り、言った。
「よくもやってくれたな!」
「待て!」
ハルキが言った。
「ムーンウルフ、お前はなぜ、復活の石を狙ってるんだ?」
「それは当然、エンマ様のご命令さ。」
「なぜエンマは、復活の石の求めているんだ?お前は知っているのか?」
「そこまでは知らないさ。エンマ様はバカじゃないからな。機密情報は他の誰にも言わない。賢いのさ。」
「そうか。…あともう1つ。」
「なんだ?」
「ツバキはどこにいる?」
「それは…。」
ムーンウルフは、言葉をつまらせた。
「もしかして、何か知っているのですか?」
「いや…。」
ムーンウルフはなかなか教えてくれない。そうこうしているうちに、朝日が上り始めた。
「おっと、もう朝か。悪いが俺は、夕方と夜しか戦えないんだ。じゃあ、さらば。」
そう言って、ムーンウルフは消えさった。
「くっ、逃がしたか…。」
ハルキが、悔しそうに言った。
「でも、復活の石を守りきった上、みなさん無事です。充分な成果ですよ。」
「そっか…。」
5.エンマ様と謎の男
エンマ様の玉座の前に、俺は立っている。エンマ様に、近況報告をするためだ。
5分ほどたって、エンマ様がやって来て、玉座に座った。
「じゃあ、近況報告を。」
「はい。神力を持つ少年、ハルキを発見いたしましたが、邪魔者によって守られ、捕らえられませんでした。」
「なんだと。」
エンマ様が怒りかけたが、俺は続けた。
「しかし、情報をつかみました。」
「なんだ。教えろ。」
「ハルキと共にいるのは、チアキ、ミユキ、黒池蛇子です。前者2人は13歳で、後者は20歳のようです。チアキは騎士族で、ナイト平野に住み、ミユキは魔法族、黒池蛇子は人間族。ミユキは分かりませんが、チアキ、黒池蛇子、ハルキは同居をしており、とても仲良しです。そんな4人が、復活の石を手に入れました。」
「ムーンウルフは?」
「朝になったので、逃げざるを得なかったようです。」
「ったく。あの役立たず。」
「おそらくこれからは4人で、神々の救出に向かうでしょう。報告は以上です。」
「よくやった。…そうだ。」
「エンマ様?」
「おそらく奴らは、ファイナのところに向かうだろう。お前は先回りをして、ハルキをさらう準備をしておけ。」
「かしこまりました。エンマ様にご指示をいただけて光栄です。」
「なら、お前には期待していいな、カメリア。」
俺はうなずいた。
「もちろんです。」
今回の物語はどうでしたか?
無事に復活の石を手に入れたチアキたち。氷の魔法使い、ミユキも加わり、これからの冒険がよりにぎやかになりそうですね。
そして、ハルキに迫る魔の手の正体は?
次回は火の女神、ファイナ様を探す冒険へ!