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飛べない天使と仲間たち  作者: なかつわこ
1/12

①空からは天使、ドアからは女性

初めての連載小説です!この物語は、協力し、天使達「天族」の住む世界を元通りにするため、日々努力を続ける3人を描いたお話です。

今回は、3人の出会いの物語です!楽しくお読みくだされば光栄です!


「速く、速く!こっちだ!」

 僕は全力で走っていた。後ろからは弟がついてきている。

「兄さん待って!速くてついていけない!」

「今は仕方ないんだ!」

どうしようもなかった。出来る事なら、弟にスピードをあわせてあげたい。でも、少しでもスピードをおとしたら、()()()()に追いつかれる。きっと弟はついてこられる。そう信じていた。

 ところが、その時。

「兄さん!た…」

「ごめん!振り向いたら追いつかれる!」

「……。」

弟は返事をしなかった。

(どうしたんだろう…。)

不安だった。でも振り向けない。あいつらは動きが速い。

「あっ…!」

 気がつくと、僕は崖っぷちに立っていた。これ以上進むと落ちてしまう。

「どうしよう…。」

「どうやら追い詰められたようだな。」

あいつらの声だ。まずい、捕まる。

「おい、お前まだ気づいてないのか?」

「…?なんのことだ?」

「ほら、よく見ろ。分からないのか?」

僕は周りを見渡した。そして、やっと気づいた。

「弟は?僕の弟をどこにやった!?」

「ようやく気づいたか。あいつはもう俺らの物だ。」

僕の心にはもう、怒りしかなかった。

「ぼ、僕の弟を、返せ〜!!」

僕はあいつらに向かって突進した。したところで、勝てるわけがないのに。

「おう、やる気か?ならこっちからいくぜ!」

やつは槍を使って、僕の…()を一突きした。

「うっ…。」

僕はよろけ、崖から落ちてしまった。

「ちっ、落ちやがった。まあいい。1人捕まえたしな。」

あいつらがどこかへ去っていくのが見えた。僕は、力の限り叫んだ。

「絶対、絶対助けるから!待っててくれ!」

その声を最後に、僕は気を失った。そして、そのまま…()()に落ちていった。


1.出会いは空から突然に

「ふぅ〜、思ってたより学校って疲れるなぁ〜。」

 私は、自分の部屋で、1人伸びていた。

 私の名前はチアキ。騎士族(ナイト)唯一の女で、13歳。私の住む世界は、普通の人間の暮らしている世界とは違う、『レインボーランド』という世界。なんでレインボーなのかというと、7種類の種族が存在するから。

「騎士族」、「魔法族(マジシャン)」、「人間族(ヒューマン)」、「超能族(エスパー)」「猛獣族(アニマル)」。あと2つは知らない。

 騎士族は、基本的には男の人ばかりの種族。私は騎士族で初めての女だから、「1000年に一度の奇跡の子」とか、「神からの贈り物」とか言われて、他の人よりも大切にされていた。今はもう13歳だから、1人で暮らしてるけどね。

(説明しよう!レインボーランドでは、13歳になると立派な大人なのだ!)

 で、今は、騎士学校が終わって、ちょっと休憩しているの。

(説明しよう!騎士族の人々は、13歳になると騎士学校に行かなくてはならないのだ!)

今日は始業式だけだったから、今はまだ11時。

(説明しよう!チアキは今、疲れているのだ!)

「ちょっとナレーション、うるさいよ!」

(説明しよう!かっこの内側の、「説明しよう!」から始まる文は、この私、ナレーションの声なのだ!)

「もう説明いいから。そんなことより、今日誰とも話せなかったなぁ〜。」

このままじゃあ、ずっと一人ぼっちなんじゃあ…。

「あぁ〜不安でたまらないっ!私、これからどうすればいいの〜?」

思わず叫んでしまった。叫んだところで、なんにも変わらないのに。

「まあいいや。もうすぐお昼だし、ごはんの準備しよ〜っと。」

私は、階段を降りて、キッチンに向かった。

 すると、その時!

 「ドーン」

ものすごい音が聞こえ、私は思わず体が震えた。

「えっ、何?なんの音?まるで何かが落ちたかのような…。」

怖くなった私は、庭の様子を見に行った。でも、庭にあるのは、たくさんの草花と、小さなベンチだけ。

「気のせい、かな…。」

家の中に戻ろうとした私は、あることを思い出した。

「あっ、裏庭…。」

裏庭なのだろうか。怖い。でも気になる。私はおそるおそる裏庭を見た。そして、見てしまった。

「キャーッ!!」

思わず叫んでしまった。無理もない。だってそこに、人が倒れていたから。

「どどどどどどうしよう!どうしようどうしよう!」

パニック状態の私は、しばらくバタバタと慌てていた。

「と、とりあえず家!家の中に入れよう!もうすぐ雨降るし!」

そう自分に言い聞かせ、倒れていた男の子を私の部屋に連れて行った。

 ベッドに寝かせてからもうすぐ30分たつ。いっこうに目が覚めない男の子を見て、私は不安になった。

「なかなか起きない…。私が、もっといろんな治療とか、看病とか出来たら…。」

(説明しよう!治療など、回復が得意なのは魔法族なのだ!)

「このタイミングでナレーションいらないよ!」

こんなことをしている内に、この子が死んじゃうんじゃないかという考えが頭をよぎり、私はよけいに不安になる。

 するとその時。

 まばゆいばかりの光が、男の子を包み込んだ。

「!なっ、何?」

男の子の左手が光り輝いている。その手には、☆印が。そして。

「うっ、うーん…。」

「あっ!」

私の脳裏に、希望が浮かんだ。私は言った。

「君、大丈夫?痛いところない?」

「こ、ここは…?」

男の子は混乱しているみたい。私は教えてあげた。

「ここはレインボーランドの中の、騎士族の住む地域、ナイト平野だよ。」

「騎士族?ナイト平野?ここは地上なの?」

「えっ、何言ってるの?地上もなにも、みんな住む場所は地上でしょ?」

すると男の子は、なにかを思い出したように鏡を見た。

「あぁ…やっぱり。どうしよう…。」

「どうかしたの?」

男の子は、何かを考えている様子だった。そして、私を見て言った。

「君が、僕を助けてくれたの?」

「そう、なのかな?」

「じゃあ、君のこと信じていい?今から話すこと、秘密にしてくれる?」

「もちろん!絶対秘密にするよ!約束する!」

「ありがとう。じゃあ、全部話すね。一体何があったのか。」

そして、男の子は語り始めた。

「僕は…天使なんだ。」


2.ハルキの事情

 私は、今言った言葉が信じられなかった。

「ん?今なんて言ったの?」

「僕は天使だって言ったけど。」

「でも、天使族なんて、聞いたことないわ。」

「そりゃそうだよ。バレたらだめなんだから。それに、僕は天使族じゃなくて、『天族(スカイ)』だよ。天使族なんて存在しないし。」

「あっ、そうなんだ。…って、ん!?」

「何?」

「バレちゃあだめなんでしょ?だったら、私に言うのはマズいんじゃない?」

「いいんだ。僕は君を信じてるから。」

「ところで、君の名前は?」

「僕はハルキ。君は?」

「私はチアキ。よろしくね。じゃあ、話の続きをどうぞ。」

「うん。僕は他の人には無い、特別な力を持っているんだ。ほら、左手を見て。」

ハルキの左手の甲には、☆印が。

「この印がある人は神の子って呼ばれて、僕はその内の1人。」

「へぇ〜、すごいね!」

でもハルキは、うつむいた様子で言った。

「すごくなんかないよ。僕は天族なのに飛べないし、☆印があるのに神力(しんりょく)使えないし…。そのせいで、『堕天使』って呼ばれてて…。」

「そんな…ひどい!」

「でも、この力を狙うやつが、『スカイアイランド』に攻めてきたんだ。」


 今日もいつも通りの1日だと思ってた。まさかこんなことになろうとは、思ってもみなかった。

「兄さん待って〜!」

「ここまでおいで!」

僕は、いつも通り、弟と鬼ごっこをしていた。というより、弟は走るのが遅いから、少しでも速く走れるようになるための特訓という方が正しいだろう。

 少し時間が経ち、休憩することにした。僕はまだまだ走れるけど、弟は疲れたようで、地面に倒れこんだ。

「やっぱり兄さんは速いなぁ。追いつけっこないよ。」

「そうかなあ。ツバキは飛べるじゃないか。それだけで十分だと思うけど。」

 ツバキ。弟の名前だ。ツバキは飛ぶのが速くて、誰もツバキに追いついたことはなかった。

(うらやましいなぁ〜。なんで僕は飛べないんだろう?)

 ふいに僕は思った。僕の背中には、白くて立派な翼があるのに。

「堕天使のお前でも、翼はすんごくきれいなんだよなぁ。」

「飛べないから必要ないのに、誰よりも立派な翼だよなぁ。堕天使のくせに。」

こうよく言われる。でも、悪口混じりでも嬉しかった。いつも悪口ばかりの天使達も、僕の翼を時々褒めてくれた。

「兄さん!ねえ、兄さん!」

うっかりぼうっとしていた。僕は慌てて声を返した。

「あ〜ごめん、ちょっとぼうっとしてた。」

「そうじゃなくて、後ろ!」

「後ろ?」

僕は後ろを見た。なんとそこには…

「わぁーっ!」

「わぁーっ!」

魔族(デビル)の奴らだ。でも、なんでここに?

「お前ら…何しに来たんだ。」

「おお、噂には聞いていたが、ツバキ、やはりお前は悪魔だ。そんな口の悪い天使がいるか。」

「うるせえ。そんな話は求めてねえんだよ。お前らがなんでここにいるのかって聞いてるんだ。」

「そうだな。教えてやるか。」

奴らは話し始めた。

「俺達はな、強大な力を求めてるんだ。強いといえば超能族だが、俺達魔族は地上の奴らにバレちゃだめだからな。だったら誰を狙うか?それなら、最強レベルの神力を持つ、お前らしかいないだろ?」

「それってつまり…」

「俺達を捕まえに来たのか!」

「そのとおり!理解が早くて助かるぜ。」

「あ〜、なるほどね!さすが、ツバキは賢いね。」

「俺の事を褒めてる場合じゃないよ!」

「ん?お前、兄に対してはそんな口調なんだな。無理しなくてもいいんだぞ。」

「無理なんかしてねえよ。ちょっと黙ってくれ。」

「おいお前、いい加減にしろよ。」

魔族の奴らがキレ始めた。このままじゃ、大変なことになる。

「ツバキ、そろそろ逃げた方がいいよ。」

「そうさ。逃げるなら今のうちだぞ。」

「いや、俺は逃げねえ。来るならかかってこい。」

「そうかそうか。ではまず手始めに。」

魔族の中の1人が、右手の指を鳴らした。その途端。

「ドッカーン」

ものすごい爆発音。僕とツバキは、音の方を見た。煙が上がっている。しかも…

「あっちは…町の方じゃないか…。」

「なんてことするんだ!」

思わず僕は言った。すると、ツバキがハッとして言った。

「に、兄さん。この時間って確か、女神会議してたんじゃ!?」

「あっ!」

大変なことになった。今の爆発で、神々がやられたんじゃないか。そんな気がした僕は、ますますカッとなって、奴らに1言怒ろうと思った。

「お前達!狙いは僕達なら、他の人を巻き込む必要はないだろ!」

「おっと。人の心配より、自分の心配したらどうだ?」

そして、一瞬の間の後、奴らは槍で突いてきた。

「わっ!」

なんとかかわせた。でも、次はどうなるか分からない。

「ツバキ、このままじゃ危ない!太陽の神殿に行けば、奴らはこられなくなる!」

「そうなの?じゃあ一旦そこに行こう。」

僕達は走り出した。ツバキは飛べば速いけど、疲れていて飛べないみたい。

「速く、速く!こっちだ!」

「待って兄さん!速くてついていけない!」

「今は仕方ないんだ!」

弟との距離が離れ、少しの不安が頭をよぎる。でも弟ならきっとついてこられる。そう信じることにした。

本当はスピードを落として、ツバキの横で走りたい。でもそうしたら、僕もツバキも捕まってしまう。

 でも。

「兄さん!た…」

「ごめん!振り向いたら追いつかれる!」

「……。」

返事が無い。聞こえなかったのだろうか。

(どうしたんだろう…。)

後ろで何があったのか、見たかった。でも振り向けない。奴らは動きが速い。

「あっ…。」

気がつくと、僕は崖っぷちに立っていた。

(どうしよう、焦りすぎて道を間違えた。)

目もくらむほどの高さに、僕は身震いした。

(もし僕が空を飛べたら…。)

「どうしよう…。」

「どうやら追い詰められたようだな。」

あいつらの声だ。まずい、捕まる。

「おい、お前まだ気づいてないのか?」

「?なんのことだ?」

「ほらよく見ろ。分からないのか?」

「……!」

僕は気がついた。なんで気づかなかったのかと、自分に怒りたくなった。

「ツバキは?僕の弟をどこにやった!?」

「ようやく気づいたか。あいつはもう俺達のものだ。」

(なんでもっと早く気づけなかった?なんで気づかなかった?)

僕の心はもう、後悔と怒りであふれかえった。

「ぼ、僕の弟を、返せ〜!」

ダメもとで突進してみた。したところで、勝てるわけないのに。

「おっ、やる気か?ならこっちからいくぜ!」

魔族の内の1人が、槍で突いてきた。そして、僕の翼を貫いた。

「うっ…。」

僕はよろけ、崖から落ちてしまった。

「ちっ、落ちやがった。まあいい。1人捕まえたしな。」

奴らが去っていくのが見えた。僕は、最後の力を振り絞って叫んだ。

「ツバキ!絶対、絶対助けるから!待っててくれ!」

その声を最後に、僕は気を失った。その直前、金色の光が見えた気がした…。


3.騎士と天使と超能力者

「というわけなんだ。」

「ひどすぎる…。許せない!」

 私は、怒りでいっぱいになった。そして、言った。

「ハルキ!スカイアイランドをめちゃくちゃにされて、弟もさらわれて、女神様が安否不明になって、悔しいでしょ!?」

「そりゃそうだよ。でも、僕に出来ることなんて…。」

「いや、あるよ!」

「じゃあ、何?」

「私も協力するよ!それで、ハルキが神力を使えるようになるまで、私が援護するの!」

「それは…なんていい考えなんだ!」

ハルキは立ち上がって、言った。

「ありがとう!チアキと一緒なら、より早くツバキを助けられるかもしれない!」

「本当!?じゃあ、ますます頑張るよ!」

(説明しよう!チアキは困っている人を放っておけない性格なのだ!)

「この声は?」

「ナレーション。気にしなくていいよ。」

 すると、

「ピンポーン」

誰かが家に来たみたい。

「誰だろう?見てくるから、ちょっと待ってて。」

私は、ドアを開いた。そこには、見慣れない女の人が立っていた。黒髪のロングヘアーがとてもきれい。着ている服は、白いワンピースに黒いカーディガン。いわゆる美女だった。

「あっあの、うちになんのご用ですか?」

「先程、ここを通りかかった時、あなたともう1人、男の人との会話を聞いていました。窓が開いていたので。」

「えっ、えーっ!聞いてたんですか?」

「はい。ちょっとあがってもいいですか?」

「ええ…。」

「いいんですね。では。」

「あっ、ダメダメ!だめだって!」

今のええ…は「え〜」って意味で、いい方の「えぇ」じゃないっ!

「おじゃまします。」

「あ〜!だめ〜!」

…遅かった。ハルキが見られてしまった。でも私は思った。

(あれ?でもハルキの翼は今無いし、格好はどう見ても普通の人の格好だし、天使ってバレないかも!)

ハルキが最初に言った、「僕は…天使なんだ。」ってところさえ聞かれてなければ、なんとかなるかもしれない。わずかな期待を胸に、私はハルキのところに戻った。

「ハルキ〜、突然知らない人入れちゃってごめんね〜。」

 しかし…。

「あなたがハルキさんですね。天族の天使で、神力の使い手。いわば、最強の天使なんでしょう?」

「そんなことないです。僕はまだ、神力を使えませんし。」

「いつか覚醒する日が来ます。必ず!」

美女は、紫色の瞳をキラキラと輝かせて言った。

「私は黒池蛇子(くろいけへびこ)と申します。人間族なので、たいしたことは出来ません。しかし、私はハルキさんの神力覚醒のため、協力したいです。そこのところいかがですか?」

「ちょっと待って!ストップ!」

私は、黒池さんとハルキの会話を止めた。そして言った。

「黒池さんでしたっけ?人の家に勝手に上がり込んで、私達の邪魔をするなんて、最低です。出ていってください。あと、ハルキ!正体バレたよ!どうするの?」

「うーん…どうしよう…。」

ハルキはしばらく考えた末、言った。

「蛇子さん、お願いがあります。」

「なんですか?」

「僕が天族ということと、天使が存在しているということを、秘密にしてほしいのです。お願いします!」

「私からも、お願いします!」

黒池さんはすぐに答えた。

「えぇ、もちろんです。必ず秘密にします。」

「ありがとうございます!では蛇子さん!」

「まだ続きが?」

「僕と協力して、スカイアイランドを元の姿に戻しましょう!」

「ハルキ!?」

「分かりました。これからは友達です。改めて、私の名前は黒池蛇子です。20歳の人間族です。よろしくお願いします。」

「僕はハルキです。13歳の天族ですが、空も飛べない未熟者です。」

「仕方ないなぁ。分かった。私はチアキです。ハルキと同じく13歳で、騎士族です。」

「…あの、1つ聞いてもいいですか?」

「?」

「どうして2人とも、敬語で話すんですか?」

突然の質問に、私達は同時に答えた。

「だって、蛇子さんの方が年上ですから。」

「少し違和感があるので、普通に話してもらってもいいですか?あと、『蛇子さん』ではなく、『蛇子』と呼んでほしいです。」

「蛇子がそう言うなら。」

私達は、あっさり仲良くなった。

 するとその時!

「チアキ。なんか飛んできたよ。あれなに?」

「ん?」

窓の外を見ると、矢のような物が、こちらめがけて飛んできているのが見えた。それも、かなりの勢いで。

「あれは矢だよ。でも、なんでこっちに飛んできてるんだろう?」

「さあ?」

すると、矢のスピードが突然上がった。

「キャーッ!」

(もうダメ…。)

と思った。しかし。

(あれ?何かに当たった音がしない?)

おそるおそる目を開くと、驚きの光景が。

「!!!!!蛇子!?」

蛇子は目を閉じて、右手を上げていた。その手には、紫のオーラが。

 矢は、空中で停止していた。蛇子の右手と同じ、紫のオーラをまとって。

「蛇子、まさか本当は超能族?」

「いいえ。人間族です。ハッ!」

蛇子が右手を握ると、矢はバキッと折れて、その場に落ちた。

「すごいね蛇子!僕もそういうのがほしい!」

ハルキは、水色の瞳を輝かせて蛇子を見ていた。

「それにしても、この矢はなんだろう?」

「なんでしょう?」

「あっ、なんか紙がついてるよ!」

ハルキがそれを取って、広げてみた。紙には文章が書かれていた。ハルキは、文を読み上げた。

「なになに?『ハルキへ  助けられなくてごめんなさい。信じられないと思いますが、私はあなた達を助けようとしていたのです。でも、間に合わなかった…。ツバキが魔族の手に渡り、あなたは絶望したでしょう。その上、美しい翼を失い、地上へ落下してしまった。私は、どうしてもあなたを助けたかった。そして、最後の力を振り絞り、あなたに魔法をかけました。少しの間、丈夫な体になる魔法です。この魔法が上手くかかったとすれば、あなたは今、生きているはずです。しかし、失った翼を元に戻すことは、力の減った私には不可能でしょう。元に戻したいならば、スカイアイランドの、太陽の神殿に来てください。あなたが無事であることを祈っています。  ヒカリより』だと!?」

「ヒカリって誰?」

「ヒカリ様は、スカイアイランドのリーダー的存在、3大神(だいしん)のうちの1人だよ。太陽の女神様。すっごく強いんだ。」

「そんなすごい方が、ハルキに手紙を送ったのですね。どうしてでしょう?」

「ヒカリ様は、しょっちゅう僕の面倒を見てくださってたんだ。僕、両親がいないから。」

「えっ!?」

「物心つく前に、病気で死んじゃったみたいで。」

「そうだったんだ…。」

なんだか悲しくなった。そんな気持ちを変えるかのように、蛇子が言った。

「そんなことより、『太陽の神殿』とは、なんでしょう?」

「えーっと、太陽の神殿はその名の通り、太陽の女神様、ヒカリ様の住まわれる所だよ。」

「そんな場所があるんだ。って!」

私は言った。

「そこに行けば、ハルキの翼を元に戻せるってこと!?」

「そうみたい。って、えーっ!?」

ハルキは、ものすごい笑顔で言った。

「行こう!今すぐに!」


4.太陽の神殿までの道

「…とは言ったものの、どうすればいいんだろう?僕飛べないし…。」

「確かに。どうしよう?」

 とりあえず外には出てみたものの、ハルキは飛べないから、雲の上まで行けない。というか、私も蛇子も飛べない。仮にハルキが飛べたとしても、私達はついていけないだろう。

「私は飛べますけど?」

「えっ?」

蛇子はそう言って、ふわ〜っと浮き上がった。

「うわーっ!蛇子、飛んでる〜!」

「超能力者ですから。よっ。」

蛇子が両手をゆっくり上げると、私は浮き上がった。ハルキも一緒に。

「キャーッ!でもちょっと楽しい!これって…」

「うおーっ!僕飛んでる!飛んでるよ!どうやったの!?」

「ちょっとした超能力です。私、浮遊系が得意なんですよ。」

「これで、スカイアイランドに行けるかも!」

「余裕ですね。では行きましょう。しかし、道が分からないので、案内をお願いしますね。」

「よっしゃー!行こう!」

ハルキがあまりにも嬉しそうだからか、なんだか私まで嬉しくなった。

 飛んでいる途中、私はハルキに聞いた。

「ねえハルキ。なんでハルキは飛べないの?」

「僕にもよく分からないんだ。ヒカリ様は、『神力が覚醒すれば、飛べるようになりますよ。』とは言われてるけど、このまま永遠に飛べないんじゃないかって…。」

ハルキは表情を曇らせ、ため息をついた。私はふいに、ハルキを元気づけたいと思った。

「大丈夫だよ!どうやったら神力を覚醒できるのかはまだ分からないけど、きっといつか飛べるようになるよ!」

「そう、だよね。その時を待ったらいいってことだよね。」

「うん!私も、一人暮らしできるようになるまで大変だったもん!」

私は、まだ剣の腕が未熟だったころをふいに思い出した。

(懐かしいなぁ。あのころの思い出。)

「ハルキ、スカイアイランドはここですか?」

「うん。あっ、もうついたの?」

「楽しい時間はあっという間だね、ハルキ!」

「そうだね!蛇子、もしよかったら、またいつか、僕を飛ばせてくれる?」

「私も私も!」

「ええ、もちろんですよ。では、着地しますよ。気をつけてください。」

「へっ?気をつけるって?」

その直後、結構な勢いで地面についた。私もハルキもびっくり。

「わわっ!」

「キャーッ!」

「ごめんなさい。着地はお2人に少し協力してもらわなくてはならないのです。バランスは、自分達でとってもらうしかないんです。」

「それもっと早く言ってよ〜っ!」

私とハルキが同時に同じことを言ったからか、ハルキはクスリと笑った。私も思わずクスリと笑った。

「それにしても、予想外の早さでついたね。」

「着地の勢いも予想外の早さだったよ。」

「雲ほどの高さにあるので、もっと時間がかかると思っていました。」

「ハルキ、太陽の神殿に行くには、どっちに行けばいいの?」

「あっちに向かって歩いていけば、町に出るんだ。そして、町にある噴水から南に進めば、もう到着!近いでしょ!」

ハルキはそう言ったけど、近い気がしない。町があるなら高い建物とかが見えるはずなのに、あたり一面木や草花ばかり。

「ねえ、本当に近いの?」

「近い気がしませんけど…。」

「近いよ。ざっと10分くらいだよ。」

「なら近いか…。」

 私達は、ハルキを先頭に歩き始めた。

 その途中、ふと気になったから、ハルキに聞いてみた。

「そういえばハルキ。天使って、1枚の布をまいて、それを着ているイメージがあったんだけど、本当は私達と同じような格好なんだね。」

「あれは人間の勝手な想像だよ。なんであんな格好にしたんだろう?」

「ハルキは、髪の色がオレンジ色なのも特徴的ですよね。」

「そうそう!僕オレンジ好きだから、気にいってるんだ。あと、1か所だけとびはねてるでしょ?これ、どうやっても直らないんだよね〜。」

ハルキはそう言って、おでこの右の方でとびはねている髪の毛を押さえた。(意味は無かった。)

 10分くらいが経った時、ハルキは足を止めた。急に止まったから、後ろを歩いていた私はぶつかってしまった。

「ちょっとハルキ!急に止まらないでよ。」

「……。」

「ハルキ?」

ハルキは、呆然とたたずんでいた。そして、前に見える景色を指差した。

「あ、あれ…。」

「ただの廃墟だよ。」

「違う。ここが町のはず…。」

周りをよく見ると、何かが落ちていた。蛇子がそれを拾い、ハルキに渡した。ハルキは、震える声で読み上げた。

「『エンジェルシティ』って書いてある…。これは立て札だ…。」

「えっ?ということは…。」

ハルキは、ゴクリとつばを飲み込んで言った。

「ここは廃墟じゃない。町だったんだ…。」

「そんな…。」

私達は息を飲んだ。無惨にも破壊された噴水から、最後のしずくがポタリと落ちた…。 

読んでくださった皆さん、今回の物語はどうでしたか?初めての連載小説で、かなりはりきって書きました。

 チアキとハルキの出会いは偶然で、蛇子との出会いは侵入。こんな出会い方で、3人は団結できるのでしょうか?そして、ハルキの翼は元に戻るのでしょうか?

 次回は、スカイアイランドが滅びた原因が発覚!そして、ヒカリ様の力はどれほどのものなのか明らかに!お楽しみに!

 ここまで読んでくださり、ありがとうございました!



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