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姉弟の絆は深まるばかり

私は今、エレと2人で中等部の“特別図書館”にいる。


実はこの度、優秀な弟──エレは、なんと! なんとっ!!

夏季休暇前に行われたテスタコーポ大会で優勝したのです!!

皆さん、ありがとうございます!!!



有言実行なんて、エレは 本当に すごい!

私はまだ高等部1年生という事もあり、テスタコーポ大会の手伝いとかはなく、ただただ応援に徹した。

いつもは可愛いエレだけど、大会ではかっこよかったなぁ。


優勝したエレは、当初の目的である“特別図書館”使用の権利を手に入れた。

エレの優しさに感謝しつつ、私の代わりに色々と調べてもらおうと思っていたら──



「アリアも“特別図書館”に入れるよ」


突然、エレから耳を疑うような事を言われた。


「ど、どうして?」

「優勝チームは、3つある権利の内2つ権利を選べるから、“特別図書館”の権利を2つにしたんだ」


そんな事ができるの? できたっけ??


「それで先生達に僕とアリアで“特別図書館”の権利を使わせてくださいと交渉したんだ」


なんとなく、それだけでは認めてもらえないような気がするんだけど……。


どちらにせよ、前代未聞の交渉だろうなぁ。


「アリアの事情を (目を潤ませながら)説明したら、理解してもらえたよ」


うーん……状況も状況だから? 特例だったのかな?



とにかく! エレの優れた活躍&交渉技術により、夏季休暇を利用して“特別図書館”に入れたのです!

本当にありがとう、エレ!!


それにしても、“特別図書館”って想像していたよりずっと広いかも。


一般公開していない本がこんなにあるのかぁ。

普通の図書館と違う所は、司書さんがいない代わりに監視員がいるってことかな。

許可がないと入れない場所だから、見張り的な人がいるのね。



さて、と! さっそく魔法が使えない人がどうやって魔法から身を守るのか調べてみよう。


「僕も一緒に調べるよ」

「ありがとう」


防衛に関する書物を探しながら、エレと共にひたすら本を読み漁る。

集中する事、およそ2時間。それらしい内容は全くといっていいほど、見つからなーーい!


……頭も使ったから、お腹もすいたな。

リフレッシュがてらお昼を食べに行く事に決め、エレと2人、中等部にあるレストランへと向かう。


「エレと2人で出掛けるの久しぶりだね。まあ、出掛けるといっても中等部だけど」

「そうだね。家では(誰かさんがいるから)中々2人になれないからね」


そう言われればそうだなぁ。家ではマイヤと3人でいることが多いもんね。


「僕、アリアがマイヤさんと仲良くなるとは思ってなかったよ」

「えっ! どうして?」


基本、“表の顔”でいるマイヤは、誰とでも仲良くなれそうな気がするけど。


「あの人──裏表激しいでしょ?」


な、なぜ、それを!?

エレと話す時のマイヤは“表の顔”なはず。


「どうして?」

「(不本意だけど……同類だから)見てたら分かるよ」


何でも出来る上に千里眼の持ち主とは。

さすがエレ。私は全然気がついてなかったよ。


そうだ。忘れない内に言っておかなきゃ。


「2人だけの時間をつくる約束だけど、今度一緒に出掛けようね」

「えっ? 今も2人の時間だけど……」


今? ああ、今ね。


「今日は調べものしてるから、あまり会話してないじゃない? こういうのを抜きにして、私がエレとゆっくり話をする時間がほしいな」


エレが頬を緩める。

喜んでくれてる。エレが嬉しそうだと私も嬉しいな。


「この前、ルナたちと行った“エルスターレ”が楽しかったから、エレと一緒に行きたいなぁと思ってるんだ」

「……ルナさん、たち?」


ん? “エルスターレ”ではなく、ルナさん“たち”の部分に反応?


「うん。ルナとリーセさん」

「この前って、ルナさんだけじゃなかったんだ」


あれ? エレに伝えてなかったっけ?

うーん……確かに『ルナと出掛けてくるねー』としか言わなかったかも。


「3人で出掛けたの?」

「うん。それがね~、ルナったら家庭教師がある事を忘れてたみたいで、最初はリーセさんと2人で出掛けたの。その後にルナが合流したよ」


エレの表情がほんの一瞬、硬直する。


「……相手がルナさんだと思って油断してたな。“僕のノート”にメモしておくよ」

「ん?」


今、“僕のノート”って言った? あまりツッコまない方がいいかな??


「今度リーセさんとルナさん……リーセさんと会う時は僕も一緒に行きたいな」


今……リーセさん、1回多くなかった? まぁ、いっか。

エレがにっこりと天使の笑顔で微笑んでいる。


「そうだね。兄弟同士でお出掛けも楽しそうだね」

「……約束だからね?」

「は、はい」



お昼を食べ終わり、再び“特別図書館”へと足を運ぶ。


そういえば、以前『オリュンは力をつける当てがあるんじゃないか』って、カウイと話した事があったな。

どうやって魔力をアップさせるのかな?


んー、悪い癖が出てきた。気になりだしちゃったよー。


「アリア、どうしたの?」

「あっ、ごめんね。考え事してた」


エレも気づくくらい考え込んでたみたい。


「今回の件に関わること?」

「いちおう、そうかな?」


オリュンの件だしね。


「話してみたら?」

「えっ?」

「話したら一緒に解決できるかもよ? それに1人で考えるより、話す事で頭が整理されて解決できるかもしれないし」


なんて優しい弟なんだろう。

お言葉に甘えさせていただきますっ!!


「カウイの従兄弟──オリュンの事を考えてて。もしオリュンに魔力を上げる当てがあるとしたら、どんな方法を使うのかな? と思って」


エレが頷きながら、私の話を聞いている。


「前にね、魔力を急激に上げる方法を調べた事があるんだ。そこで出てきたのが《光の魔法》」


エレも私の言わんとしている事に気がついてるみたい。


「《光の魔法》って、人の眠っている才能を引き出せるから、それで魔力がアップするんじゃないかって考えたんだけど……そもそも 《光の魔法》が使える人って操られる事がないでしょ?」


なんせ《闇の魔法》を浄化できるからね!


「なので、その線は薄いなと思って」


自分で言ってて、行き詰まってしまった。

私の話を少しだけうつむきながら聞いていたエレが、考えるようにあごの下へと手をあてる。



「うーん。確かにそうだね……そうだなぁ。もう一度、魔法について調べてみるのは?」


もう一度……か。──確かに!


「この図書館なら、今まで知らなかった魔法について書かれた書物とかありそう」


エレが「そうだね」と頷いた。


さっそく魔法関連の書物が置いてある場所へと移動し、本を探す。

魔法関連の書物って多いんだなぁ。ということは、まだまだ知らない魔法も沢山あるって事だよね。

あー、時間さえあれば、全部読みたい!!


何気なく本棚を見ていると、1冊の本が目に止まった。


「……《禁断の魔法》」


本を手に取り、立ったまま本をめくる。

あれ? 《禁断の魔法》って《闇の魔法》しかないと思ってたけど、ざっと読む限り……全ての魔法にある!?


近くにいたエレを呼び寄せ、本の概要を伝える。


「僕も知らなかった」


今までエレの使う《闇の魔法》だけ悪い事が多いように言われていた。

だからこそ、私とエレには衝撃的な内容だ。

2人で横並びに椅子へ座り、一緒に本を読み進める。


「やっぱり……《闇の魔法》以外の魔法にも《禁断の魔法》があるみたいだね」

「…………」


エレが黙ってる。きっと同じことを考えてるんだろうな。



──《闇の魔法》以外はどうして一般公開していないのか。


「ねぇ、エレ。この文……」

「僕も気になってた」



---------------------------------------


同じ魔法を使う者同士なら、魔力を譲渡できる

ただし魔力を譲渡した場合、譲渡した方は生命の危険あり


---------------------------------------



「こ、これだ!」



多分だけど──全てが繋がった気がする。



魔法を使える人ばかり狙っていた行方不明事件。

ミネルには『なんで仲間を集めてるんだろうね?』って言ったけど……。

仲間を集めているわけではなく、魔力を上げる為に集めていたとしたら?


……思い付きとはいえ、恐ろしい事を考えてしまった。なんだか、ぞっとしてきたな……。

いや、でも、これはあくまで私の想像だから、行方不明者の人達はきっと大丈夫。うん、大丈夫。

今は自分に言い聞かす事しかできない。


あれ? そういえば、オリュンのお父さんって亡くなったんだよね?

お父様とテウスさん(カウイの父)は『殺された』としか言ってなかったけど……。

こうなってくると、ただ殺されただけなのか怪しくなってきたな。

もしかして、魔力を利用された……とか?

一般公開していない魔法なら、お父様達も気軽に話せないだろうし。


はっ! 自分の考えに没頭し過ぎてた。我に返り、慌ててエレの様子をうかがう。

いつも笑っているエレが厳しい表情をしている。なんとなくだけど、同じ考えに辿り着いてる気がする。

私の視線に気がついたのか、こちらを見た。そして、ゆっくりと口を開く。


「きっとお父様達は、この魔法を知ってるよね?」


エレの問いに「多分……」と答える。


「僕は《闇の魔法》が使えるから、この本に載ってる《禁断の魔法》がなぜ公開されていないか分かった気がするよ」

「ほ、本当?」


エレがこくんと頷いた。


「僕は魔力が操れるようになるまで、見たくなくても人のオーラを見る事ができた。これって、学んで出来るようになったわけではないんだ。ごく自然に当たり前のように使えるようになってた。きっと人を操る魔法も使おうと思えば、使えると思う。でも──」


エレが少しだけ首をかしげた。


「他人に魔力を譲渡する魔法は、なんていうのかな? 使い方がピンと来ないというか、分からない。きっとやり方を知らなければ、この魔法は使えないんだと思う」


やり方を知らなければ……なるほど!!


この本に載ってる《禁断の魔法》をみんなが知っていたら、悪用する人も出てくる。

それに好奇心旺盛な人は、試してみたくなってしまうかもしれない。

やり方を知らなければ使えないのなら、最初から知らない方がいい。

だから──公開していないんだ。


逆に《闇の魔法》は、エレが話していたように方法を知らなくても使えるから隠す必要がないんだ。

注意喚起の意味もあるのかな? 公開する事で、魔法で操られていた人を見た時に『《闇の魔法》で操られてる』って気がつけるかもしれない。


それにしても知らない魔法ばかりだな。当たり前だけど。

気になった《禁断の魔法》は、メモをとってしまうと誰かに見られる危険もあるから頭で覚えておこう。

頑張れ! 私の脳みそー!!



---------------------------------------


《水の魔法》

上級者は霧、津波を起こせる

自らも危険が及ぶ可能性あり


《癒しの魔法》

命と引き換えに死者の蘇生ができる

魔力により、蘇生できる確率は変わる

蘇生できたと同時に亡くなる場合がある


《火の魔法》

人体発火


《風の魔法》

上級者は竜巻、台風を起こせる

自らも危険が及ぶ可能性あり


---------------------------------------


他にも色々あったけど、一番大きい魔法はこれかな?

それにしても使った人自身にも危険が及ぶ魔法ばかりだったな。まぁ、それだけ危ないって事だよね。

その中でも《火の魔法》だけは副作用的なのが書いていなかったような??



一通り《禁断の魔法》の本を読んだけど、さすがに魔法の使い方までは書いてなかったな。


「エレの言っていた魔法の使い方は書いてなかったね」

「そうだね。きっと別な本を探しても書いていないと思う。“特別図書館”には置いていないのかもしれない」


そうだよね。

こういう魔法の使い方がある事までは知られていいけど、実際の方法については知られたらまずいよね。


「あれ? だとしたら、オリュンはどうやって知ったのかな?」


あっ、まずい。さっき心の中で考えていた事を口に出してしまった。

特に気にする様子もなく、エレが答える。


「大丈夫だよ。僕もアリアと同じ事を考えてたから」


あぁ~、はい。いつも通り、顔に出ていたようで。


「行方不明事件の首謀者は、この本に載ってる《禁断の魔法》を知っている上に使い方も分かっていると仮定すると──地位が高い人、または高かった人なのかもね」


ふむ。確かにそう考えると筋が通る。

きっと、ある一定の地位がないと読めない本だもんね。

この予想が当たっているとすると、魔法が使えない私はどんどん勝ち目がないのでは?


私の不安を感じ取ったのか、エレが優しく目を細めた。


「まぁ、アリアは安心していいよ。僕がどんな事をしても守るから」


それって……。


「いや、ダメダメ! 絶対ダメダメ!!」

「えっ?」


否定されると思ってなかったのかな? エレが驚いた顔をしている。


「“どんな事をしても”はダメダメ! それで守ってもらっても嬉しくない!」

「ああ、ごめん。変な意味じゃないよ?」


『大丈夫だよ』とでも言うようにエレがにこやかな笑みを浮かべる。

変な意味じゃなかったとしても、きちんと伝えておかなきゃ。


「私の望まない守り方をしたら、私も後を追うから」

「えっ?」


エレがさっきより驚いた顔をしている。


「そのくらいエレは私の中で大切な弟だって覚えておいて、ね?」


『後を追う』というセリフが正しいのかは分からない。エレは肝心な部分は明言してないわけだし。

でもエレには、私がこう言った方が効果がある気がする。


「……アリアは僕にかっこつけさせないよね」


んん?

エレはかっこいい上に可愛さも兼ね揃えているという最強人物ですが? 何か??


「でも、今言われた言葉が何よりも嬉しい。アリアがそういう事を言うのは、きっと僕だけだよね?」


僕だけ? エレだけ?? 他の人に同じ事を言われたら……?

怒るかもしれない。そういう意味だとエレ以外には言わないか。


「うん。きっと、そうだと思う」


エレが少し泣きそうな、でも嬉しそうな表情で笑った。



その日は、久しぶりにエレと手を繋いで帰った。

……って、自分の身を守る方法を調べるのをすっかり忘れてた!!




──結局、“魔法が使えない人が魔法から身を守る方法”については見つからなかった。


1週間掛けてエレと一緒に“特別図書館”に通い詰めたけど、ダメだったな。

エレが心底残念そうにため息をついている。


「見つからなかったね」

「そうだね。残念だったけど、見つからないなら自分で方法を考えるよ!」


そう言うと、「アリアらしいね」とエレがくすっと笑った。


「エレも警護の人たちもいてくれるし、きっと大丈夫!!」


エレが「んー」と難しい顔をしている。


「ものすごく不本意だけど、オーンさんに相談したら? もしかすると《光の魔法》でアリアが魔法を使えるようになるかもよ?」


はっ! それは盲点だった!!!


「ありがとう、エレ! すぐに相談してみるよ」

「うん。ものすごーく不本意だけど、アリアが怪我をする可能性を少しでも減らしたいから」


不本意って2回言った! 2回も!!



正直なところ、身を守る方法が見つかるのか、私が魔法を使えるようになるのかすらも分からない。


とはいえ、『為せば成る』という言葉があるくらいですから!

何とかなる! ……はず。頑張るしかないよね!!


お読みいただき、ありがとうございました。

次話、12/14(月)更新です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ストーリーが面白くてひきこまれるように読んでしまいました!!どのキャラもとっても素敵で可愛いですっっ!!アリアがただのいい子じゃなくて現実的に物事を考えて実行してみんなに好かれていくという…
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