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大会2日目~ エウロが得たもの~ (前編)

エウロ視点の話です。



---------------------------------------


とりあえず「おやすみ」とは言ってみたけど……俺、アリアとキスしたよな!?

つまり、その、あれが俺のファーストキスって事になる……のか!?


いやいやいや、マジか……。事故とはいえ、まさかこんな事になるなんて……。


というか、アリアの方はどうなんだ?

驚いてはいたみたいだけど、リアクションは薄かったような気がする。

もしもあれがファーストキスだったとしたら、普通はもっと焦るはずだよな?


うーん……実際のところはどうなんだろう?

俺がアタフタし過ぎていたせいで、ちゃんとアリアを見ていなかったという可能性もあり得る。


そういえば、以前から気になっていたが……。

カウイが留学した日、アリアとカウイは抱き合ってけど、2人は“仮婚約者”ではなく、本当に付き合ってるんだろうか。

付き合ってるんだとしたら、アリアにとってはファーストキスじゃないかもしれない。



……ん? なんかもやもやする。なんでだ?


アリアは話しやすいし、女子だけど無理に気を遣わなくて済むような存在だったんだけど、最近はなぜか一緒にいるとドキドキする事がある。

俺、なんかの病気なんだろうか……。


まあ、それはともかく……カウイとアリアが付き合ってるなら、事故とはいえ、カウイに悪いことしたなぁ。


ふぅ~、と深く息を吐き出す。

なんともいえない複雑な思いを抱えつつ、明日に備えて無理やり眠った。



大会2日目の朝。

ルール上、昨日終了した地点からのスタートとなる為、俺とアリアは再び、第4ステージへと向かった。


どうにもキスの事が頭から離れず、チラッとアリアの様子をうかがうも……いつも通りに見える。

ほとんど事故みたいなものだったから、やはりアリアは気にしてないのかもしれない。


俺が意識しすぎているだけなのか!? ……って、ちゃんと気持ちを切り替えないといけないよな。



──突如、実況のキナさんの声が周囲に響き渡った。


「みなさーん、おはようございまーす! 準備はできましたかー? 最終日もケガがないよう楽しんでくださーい!」


相変わらずテンションが高い。

元気な声に苦笑していると、続くようにメロウさんの声も聞こえてきた。


「おはようございます! これよりテスタコーポ大会2日目を開始します! 準備はいいですか!? それでは……」


メロウさんの大きく息を吸う音が聞こえる。


「スタート!!!」


開始の合図とともに、ついに大会2日目がスタートした!

早速、近くにいた上級生の女性が第5ステージについて話し始める。


「それでは最終ステージについて説明します。まず、こちらをお渡ししますね」


渡されたのは、じゃばらに折られた羊皮紙風の地図だった。


「高等部の敷地内の地図になります。私が持っている箱から1枚、紙を引いてください」


女性が俺の前にスッと箱を差し出してきた。

言われるがまま、4つ折りになった紙を1枚引いてみる。


「引いてもらった紙は“指令書”になります。地図を見ながら“指令書”に記載されている場所へ、二人三脚で移動してください。ラッキーなペアであれば、ここから近い場所かもしれません。アンラッキーなペアであれば、ここからものすごく遠い場所や、二人三脚で行くには困難な場所かもしれません」


なるほどな。

ここで“運”が試されてくるのか。


「“指令書”の場所へ着いたら、魔法に関するクイズが出題されます。5問連続で正解できれば次の“指令書”が渡されます。“指令書”は全部で3つあります。全てクリアできたら、第5ステージクリアとなります。何か質問はありますか?」


女性が話し終えたタイミングで、アリアがパッと俺を見た。


「いえ、大丈夫です。エウロは?」

「あっ、えっと、俺も大丈夫です」


ビックリして咄嗟にアリアから目を逸らしてしまった……。

今のは感じ悪かった……よなぁ。


「では、これより第5ステージ開始となりますので、二人三脚の準備をさせていただきますね」


そう告げると、女性は《緑の魔法》を使い、緑のつるで俺とアリアの足首を結び合わせた。

ただでさえもアリアと気まずいのに、その上、密着って……タイミングが悪いな……。


「では、スタートしてOKです。頑張ってください」


一礼すると、女性は俺たちの元から去って行った。


「エウロ、“指令書”を見てみようか」

「あ、ああ」


アリアに言われ、“指令書”を広げてみる。そこには“第3剣術場”と記載されていた。

先ほどもらった地図から、2人で“第3剣術場”の場所を探す。


ふいに、アリアが「あった!」と地図の一点を指さした。


「そこまで遠くはないみたいだな」

「そうだね。じゃあ、行こうか!」

「ああ」


歩き出そうとした瞬間、アリアが俺の腰に手を回してきた。


「うわっ」

「あっ、ごめん。手を回さないと歩きづらいかなと思って……」

「そ、そうだよな」


ダメだ。緊張しっぱなしだ。アリアは気にしていなんだし……。

一度、深呼吸をして……よし!


アリアの肩にゆっくりと手を乗せ、息を合わせながら小走りに目的地へと進み始める。

しばらくすると、アリアがチラッと俺の方を見て、申し訳なさそうな表情で話しかけてきた。


「昨日はごめんね。私のせいで気まずいよね」


どうやら俺のアリアに対する態度がおかしい事に気がついているようだ。

そりゃ、そうだよな。


「いや、むしろちゃんと支えられなかった俺も悪いし……カウイにも悪かったよな」

「ん? なんで、カウイが出てくるの??」

「いや、あの……アリアとカウイって付き合ってるんだろ?」


俺のセリフにアリアが目を丸くして驚いた。


「えー!! えっ!? つ、付き合っていないよ。エウロはそう思ってたの? まさかみんなもそう思ってるの??」

「みんなは分からないけど……少なくとも俺はカウイを見送る時に抱き合ってたから、てっきり付き合ってるのかと思ってた」

「だ、抱き合う? そっか、周りから見ればそう見えてたのか……。あの時、マイヤとパンナさん(マイヤの父)も抱き合ってたじゃない? 何ていうか、別れの挨拶みたいなものだよ」


そ、そうなのか!?

少なくともカウイはそう思ってるようには見えなかったけど……。


でも、そっか。アリアとカウイは付き合ってるわけじゃないのか。


ああ、なんだ。安心した。

……ん? 安心した!? な、なんでだ?


うーん……あっ! カウイに悪いと思ったからだな、きっと。


「そっか。誤解もあったから、余計に気にしてたんだね」

「まあ、それもあるし……アリアは女性だから、初めてだったら悪いなって……」


アリアが何かを考えるように黙り込む。

その反応は……まさか、初めてじゃないのか!?


「初めて……そうだね、こちらでは初めてになるのか」

「こちらでは!?」

「あっ、いや。うん、初めてだった! だけど、まあ、事故だからね。お互いに事故って事で気にしないように……って、さすがに無理かな?」


俺の顔を覗き込みながら、首をかしげるアリアが可愛く見える。


おかしい、俺のタイプはマイヤみたいな可愛らしいタイプだったはず。昨日のキスで動揺しているせいだろうか……。


「ああ、そうだよな。あれは事故だよな。お互い気にしない事にしよう」


アリアが「そうだね」と同意する。

多少の気まずさは残るものの、いつもと同じように笑い合う事はできた。


アリアから「初めて」だって聞いて嬉しい気持ちと、「事故」と言われて複雑な気持ち……。

自分でも事故だって思ってたはずなのに、なぜそんな気持ちになってしまうのか……どうにも分からない。


俺はやっぱり、どこか変なのかもしれない。大会が終わったら検査でもするかな?


「もうすぐ目的地だね!」


アリアに声を掛けられ、ハッと我に返った。

とりあえず、今は大会に集中しないと。


「そうだな」


目的地である“第3剣術場”に着くと、見るからに頭のよさそうな女性が椅子に座って待っていた。


俺とアリアを見るなり、立ち上がって「こちらにお掛けください」と向かい側に用意されている空席へと招く。


指示通りに椅子へと腰掛けると、自分も席に着き「それでは始めます」とだけ口にしてから魔法に関するクイズを出題し始めた。


「《光の魔法》の特徴を1つ答えよ」

「人の眠っている才能を引き出せる!」

「正解」


「《土の魔法》で国の許可がないと使えない魔法は?」

「ゴーレムを作り出す!」

「正解」


アリアが早押しかというくらい、速攻で答えていく。俺の答える隙が全くない。


そして、あっという間に5問連続で正解した。

さすが、自分で得意というだけあるな……。


「おめでとうございます」


上級生がにっこりと笑うと、“指令書”が入っている箱を差し出してきた。


「“指令書”を引いてください。次は二人三脚ではなく、あえて言うなら……二人三腕になるんでしょうか。お互いの腕をつるで結ばせてもらいます。2人の腕を固定しながら移動し、目的地へ着いたらこの国に関わるクイズが出題されます。5問連続で正解できれば、最後の“指令書”を引く事ができます」

「分かりました。次はアリアが“指令書”を引いてくれ」


アリアがこくりとうなずき、箱から“指令書”を引く。

引いた事を確認すると、上級生は《緑の魔法》を使って足に巻きついていたつるを取り、次に俺とアリアの腕を緑のつるで結び合わせた。


「それでは、行ってらっしゃい!」


上級生に見送られながら、次の“指令書”の場所へと向かい始めた。


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