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カリーナ元王妃捕獲大作戦!!(後編)

もしかして、ここにいる人たちも行方不明者!?

さらに操られているのかもしれない??


カリーナ元王妃にバレないよう、表情には出さず……顔に出てしまう私には無理か。

少しだけ顔を下に向けながら、必死で頭を悩ませる。


彼らが操られていると仮定した場合、“魔法の色”が見えるのは悪い事をしているからだけど、恐らくは自分たちの意思ではないはず。


要するに本来の人格ではなく、操られている方の人格に“魔法の色”が見えているわけだよね。

《聖の魔法》についてはまだまだ謎が多いけど、魔法の性質や、悪意によって見え方が変わるように、操られている場合も違う見え方をするのかもしれない。



──ああ、なるほど!

きっと黒いモヤは、操られている人に見えるんだ!!


……ん? んん?

そうなると、カリーナ元王妃も操られているという事になる??


……とにかく、操られている考えが正しいとすると、オーンを連れてきて《光の魔法》で浄化できないかな?


でも、もし操られていなかったら?

んー……その時は悪い魔法の使い方をしている人たちだから、私が魔法を封じ込めればいいのか!!



「──話は終わりかしら?」


考え込んでいる間にカリーナ元王妃とミネルの会話は終わっていたらしい。

カリーナ元王妃が、私たちに問い掛けてくる。



ふむ。考えてみよう!


ここで『はい』と答えて、家を出るとしましょう。

それからオーンを連れて、再び家に押し掛ける!


普通に考えて、帰ったばかりの人間が間髪入れずにやって来たら怪しむよね。

そもそも今日初めて会ったわけだし、警戒してドアを開けてくれないかもしれない。


……かといって、外で魔法を使ったら?

他の住民に迷惑が掛かるし、他の仲間が押し寄せて来たら危険だ。


「……あ、あの」


おずおずとカリーナ元王妃に話し掛ける。


「“アリア”という女性も来ている事は聞いていらっしゃいますか?」

「ええ、聞いたわ。”コモ”が『すぐにお店を出てしまって、どこへ行ったか分からない』と話していたわ」


やっぱり、カリーナ元王妃も“アリア”の存在を気にしてるんだ!

……こうなったらダメ元で聞いてみよう。


「私、“アリア”の居場所を知っているんです。まだ街にいるみたいなので、こちらへ連れてきますか?」

「連れてこれるの?」


よし! 興味を示してくれた!


「はい。疑われている様子はなかったので、『ジメス上院議長のお嬢様の居場所を知っている』と言えば来ると思います」

「なるほどね……。それなら連れてきて」


うん、予想通り!

私の話に乗ってくれた!!


ジュリアの魔法を戻したいなら、アリア(私だけど)を捕まえたいはずだもんね。


「1時間以内で、連れてこれると思います」

「分かったわ。ただし、そこの男……そういえば名前を聞いてなかったわね」


カリーナ元王妃がミネルを見ている。


「“ロイン”です」

「そう。ロインは残りなさい」


えっ!?


……どうしよう。

私たちがいない間にミネルが捕まったり、ケガをさせられたりしたら……。


「分かりました」


慌てる様子もなく、ミネルが答える。

そんな中、エウロがそっと手を挙げた。


「あの、俺が残ってもいいですか? ロインがいないと、うまく連れてこれるか不安なんで……」

「構わないわよ」


え? ミネルの代わりにエウロが残るの!?

確かに作戦を立てる為にはミネルの力が必要だけど……心配だな……。


少し緊迫した空気が漂う中、最終的には私とミネルが“アリア”を連れてくる事になった。


エウロを残し、ミネルと2人でカリーナ元王妃の家を出る。


それからすぐにオーン達が待っている場所──カリーナ元王妃からは見えない場所へと足早に向かった。


私とミネルに気づいたオーンが、怪訝けげんな顔で声を掛ける。


「お帰り……エウロは?」

「注意したつもりだったが、やはり怪しまれてしまったらしい。人質に取られた」


ミネルが淡々とみんなに状況を伝える。


「会話の内容ではなく、僕たちの所作や話し方で怪しまれたのかもしれない。上流階級の立ち居振る舞いというものを徹底的に教え込まれているからな。そう簡単には隠せないだろう」


時間を惜しむように、ミネルが早口で会話を進めている。


街に馴染める服装にはしたけど、やっぱり小さい頃から身につけていたものって隠し通せないんだなぁ。

もっと意識すれば良かったと反省していると、ふいにミネルが私の方へと顔を向けた。


「ああ、アリアは完璧に馴染んでたから安心しろ」


……それはそれで複雑なんですけど。


「とはいえ、この街に住んでる人間の名前を名乗ったからな。怪しまれてはいるが、気づかれてはいない」


そうそう!

ずっと聞きたかったんだよね。


「なんで、カリーナ元王妃の事を知っている人物を、ミネルが知ってたの?」

「聞き込みをした時、1人疑わしい人物がいたという話をしただろう? 」


私がこくりと頷く。


「元々、《知恵の魔法》──“ナレッジ”で、この街の情報については可能な限り記録してあったからな。怪しいと思った時点で、事前にその人物と家族の名前は調べておいたんだ。一種の賭けではあったが、上手くいって良かった。……で?」


今度はミネルが私に尋ねてくる。


「どうして『“アリア”を連れてくる』と話したんだ?」


その問いに答えるべく、まずは家の中で見たものと、家から出る事になった経緯についてオーンとカウイに説明する。


「カリーナ元王妃も含めて、家の中に5人いたでしょ? 多分だけど、みんな《闇の魔法》で操られている。だから、オーンが《光の魔法》で浄化できれば、詳しい話を聞けると思ったんだ」


私の話に驚いてはいるようだけど、みんな冷静に話を聞いてくれている。

唯一、オーンだけがやや悩ましげな表情を浮かべている。


「……5人か。アリアが言った通り、《光の魔法》で浄化する事は出来ると思う。ただ抵抗されるだろうから、取り押さえる人間が必要だ」


そうか……。

5人まとめて浄化する事は出来ないから、誰かを浄化している間は他のメンバーを取り押さえていないといけない。


んー、難題だ。


「それなら、カウイとアリア、オーンの警護が合わせて6人いる。手伝ってもらおう」

「でも、それって警護の仕事ではないんじゃ……」

「相手に暴れられでもしたら、警護対象にも被害が及ぶ。安全を守るという意味では業務範囲内だろう」


……こじつけのような気もするけど、確かに今は警護の人たちの力が必要だ。


早速、ミネルが少し離れた場所に立つ警護の人たちを呼び寄せ、一通りの状況を説明している。


「本来の業務ではないのに申し訳ございません。協力して頂けると助かります」


頭を下げ、協力を仰ぐ。

危険だと止められる可能性もあったけど、行方不明者が《闇の魔法》で操られているかもしれないと必死に伝え、何とか受け入れてもらえた。


無事に説明を終え、次に作戦方法についてみんなと議論を交わす。


「エウロには? どうやって説明するの?」

「僕が指示を出す。エウロなら、すぐに動けるだろう」


私の質問に、ミネルがすぐさま返事をする。

確かに。エウロはうまく順応してくれそう。


「もし……《闇の魔法》に操られていない場合、家に押し掛けて取り押されるなんて問題になるよね」


私の予想が外れた場合の不安をみんなに伝える。


「問題ない」


ミネルがきっぱりと答える。


「どちらにせよ、“魔法の色”が見えている人たちだから。アリアが心配する事は何もないよ」


カウイが穏やかに微笑む。


「そうだね。理由なんて、後でいくらでも後付けできるよね? ミネル?」


オーンが口元に笑みを浮かべながら、ミネルに顔を向ける。


「そういう事だ」


ミネルが不敵に笑った。


「作戦も決まったし……行こうか」


オーンの言葉に頷き、まずは私とミネルがドアの前まで歩いて行く。

先ほどと同じように一定のリズムでドアをノックすると、ゆっくりとドアが開いた。



──その瞬間、警護の人たちが一斉に家の中へと突入した。

私たちも後に続いて中へと乗り込む。


警護の人たちの奇襲により、突入作戦はひとまず成功!


さすがは戦闘のプロ!

簡単な打ち合わせしかしていないのに、各自が迅速に行動してくれている。


……さて、私も自分の仕事をしなきゃ。

急いで周りを見渡すと、ミネルの予想通り、エウロが捕らえられていた。


すぐにでも魔法を出せるよう、男性の1人がエウロの首元に手を当てている。

駆け出すようにエウロの近くまで移動し、願いながら手のひらへと力を込めた。



《エウロを捕えている人の魔法よ! 全て消えて!!》



願った後、頭がボーっとし、身体中が熱くなるのを感じる。

ジュリアと試合をした時と同じ感覚だ。


「動けばこの男はただじゃ──」


エウロを捕えている男性が、突然、言い掛けた言葉を止めた。

ジッと自分の手を見つめ、焦ったような表情を浮かべている。



よし! きっと魔法を封じ込める事が出来たんだ!!


その様子を見たミネルが、エウロに向かって即座に叫んだ。


「エウロ! 後ろの奴を蹴ろ!!」


ミネルの指示に、躊躇ためらう事なくエウロが動く。

素早く後ろを振り返ると、迷いなく男性の側頭部を蹴り飛ばした。

吹っ飛ばされた男性は壁にぶつかり、よろけながら床に膝をついている。



その瞬間、警護の人たちも一斉に動き出した。


エウロが無事に解放されるまでは、あえてカリーナ元王妃や男性たちと距離を置いてもらっていたが、もう遠慮する必要はない。


それにエウロが捕らえられていた事で、正当な理由もできた。


目的を果たすべく、みんなで攻撃を仕掛ける。



──ここからの作戦はこうだ。


警護の人たちに守ってもらいつつ、私が少し離れた所から魔法を封じ込める。

次にエウロやミネル、警護の人たちが協力して、封じ込めた人を拘束する。


拘束した後は、オーンの元へ連れて行き、《光の魔法》で浄化する。

この作業を、最後の1人が終わるまで徹底的に繰り返す!


魔法の封じ込めは予想よりも早く進められそうだけど、浄化作業には多少時間が掛かる。

その間、他の人たちがおとなしく捕まってくれるとは思えないので、邪魔されないよう押さえなくてはならない。


操られている以上、なるべく怪我はさせないようにしたいけど……結構、難しいかも……。


どうやら、元々剣術や体術に優れている人たちらしく、魔法が使えなくなったとはいえ捕まえるのもひと苦労だ。

とはいえ、こちらは戦闘のプロが揃っているし、しかも人数も勝ってる!


みんなで力を合わせ、1人1人、確実に捕えていく。



男性たちの浄化作業は滞りなく全て終わり、残るは──カリーナ元王妃のみ。


暴れるカリーナ元王妃を警護の人たちが押さえている間に、オーンが《光の魔法》を唱えながら両手をかざす。

手のひらがパァッと輝き出し、その光がカリーナ元王妃の体を包み込んだ。


「ううっっ!!」


カリーナ元王妃の苦しそうな声が辺りに響き渡る。

数分後、光が完全に消え、カリーナ元王妃がその場に倒れ込んだ。



「……終わった、ね」


少し疲れた表情でオーンが呟く。


どうなる事かと思ったけど、誰も怪我をする事なく終わって良かった。


「目覚めると同時にまた暴れる可能性もある。今の内に5人とも縛っておこう」


冷静にミネルが指示を出し、手分けして5人全員を縛り上げる。


うーん。《光の魔法》で浄化はされたけど、さすがに封じ込めた魔法はまだ戻しちゃだよね。

浄化されたからか、もしくは魔法が使えなくなったからか、5人から出ていた黒いモヤも“魔法の色”も、今は見えなくなっている。


それにしても……昔《闇の魔法》で操られたモハズさんの時と違い、5人とも目覚めるのが遅い。


「《光の魔法》で浄化するのも時間が掛かったんだ。目覚めが遅いのは、操られていた時間が長かったからかもしれない」


かなり疲労しているらしく、オーンがその場に座りながら話している。


そうだよね。

5人全員を浄化したんだから、肉体的にも精神的にも大変だったよね。




──それから30分後。


カリーナ元王妃以外の4人がやっと目を覚まし始めた。

状況が分かっていないようで、心底不思議そうな顔をしている。


4人にはエウロが丁寧に状況を説明している。

動揺する姿を見るに、自分たちの身に何が起こったのか、本当に分かっていないんだろうな。


エウロが優しくなだめ、落ち着いたら違う街の憲兵の所まで連れて行く事になった。


もちろん、この街にも憲兵はいるけど、裏でジメス上院議長と繋がっている可能性もある。

リスクはなるべく回避しないといけない。


そして、カリーナ元王妃はというと……一向に目を覚まさない。


待っている間に、30分どころか4時間も経過し、気づけば夕方になってしまった。

他の4人からの話も聞き終えてしまい、これ以上はさすがに引き延ばせない。


「どうしようか?」


私が誰に言うともなく尋ねると、ミネルが答えた。


「ふぅ、連れて帰るしかないだろう」


ため息をつきながら、ミネルが諦めたように立ち上がる。



他のみんなも、後を追うようにして立ったその時──カリーナ元王妃がようやく目を覚ました。


目覚めて間もないから?

状況が飲み込めていないから??


放心状態……呆然と一点を見つめている。

オーンがカリーナ元王妃の前で膝をつき、探るように声を掛けた。


「恐らく長い期間《闇の魔法》で操られていたと思いますが……自分のお名前は、分かりますか?」

「……名前?」


まだ少し呆けているのか、視点が定まっていない。



「わ、たし……私の名前はカリーナです」


お読み頂き、ありがとうございます。

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