表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/153

カリーナ元王妃捕獲大作戦!!(前編)

カリーナ王妃のそっくりさんに会うべく、5人で例の一軒家へと向かう。



「カリーナ元王妃は、“本当”に病で亡くなっているんだよな?」

「そう聞いてるよ、としか私も言えない。ただ、死因は感染症だったから、一部の人しか看取れなかったと聞いている」


歩きながら、ミネルがオーンに確認している。


「……まぁ、仮に生きてたとしても80代か。オーンが見たのは若い時の王妃。どちらにせよ、考えにくいな」


何となくだけど、ミネルが想像している事が分かる。


「《癒しの魔法》には、死者の蘇生ができる禁断の魔法があるみたいなんだ。禁断の魔法を使って蘇ったとか……はあり得ないかな?」


以前、エレと行った特別図書館で読んだ本。

みんなも知ってるかもしれないけど、その時に得た知識をそのまま伝える。


「もしくは……」


私に続き、カウイが口を開く。


「留学中に読んだ本の中には、他者から生命エネルギーを奪い取る事で自身の細胞を活性化させる──つまり、若返る魔法というのがあったよ。これもまた禁止されている魔法だけどね」

「よく他国の禁断の魔法を知る事ができたな」


ミネルが素朴な疑問をカウイに投げかける。

この国では特別図書館に入れる人しか知りえない情報だもんね。


「留学先では禁断の魔法に関する書籍も自由に読めたよ」

「国によって全然ルールが異なるんだな」


エウロが感心したように頷いている。


「そういえば、私とオーンの報告しかしていないけど、ミネルとエウロ、カウイの方はどうだったの?」

「ああ、そうか。突然の事で話していなかったな。結論から言うと、似顔絵を見せても『見た事がある』と答えた人間はいなかった」


歩みを止める事なく、ミネルが話し続ける。


「だが、その中で疑わしい人物が1人だけいた」

「俺はミネルに言われるまで、全然気がつかなかったけど……」

「お前は人を信じすぎだ。疑う事を覚えた方がいい」


ミネルの助言? に、エウロが苦笑しながら、あごをポリポリとかいている。


「疑わしい人物にだけジュリアという名前を伝えたが、何の反応も示さなかった。この点については嘘をついているように見えなかったから、もしかすると名前を名乗っていないか、偽名を使っているのかもしれない」


名前はともかく、ジュリアを知っている可能性は高いという事かな?

自分の報告を終えたミネルが、今度はカウイの方へと目を向けた。


「カウイはどうだった?」


ミネルからの問い掛けに、カウイがゆっくりと首を横に振っている。


「残念ながら、知ってそうな人はいなかったよ」

「話している所申し訳ないけど──着いたよ」


オーンが立ち止まり、少し離れた場所に建つ一軒家を指差す。

考えるように一瞬だけ間を置いた後、ミネルが口を開いた。


「ひとまず僕とアリア、エウロの3人で行く。警護の人たちには、バレない距離でついてきてもらおう」


あれ? オーンとカウイは?


「2人は何かあった時の為に、ここで待機してくれ」


ミネルの指示に、オーンとカウイが静かに頷く。

みんなの動きを改めて確認すると、ミネルが私を見た。


「“魔法の色”が見えたと言ってたな? 本当はすぐにでも魔法を封じ込めてほしいが、こちらが怪しい行動をする事で何も話してくれない可能性もある。まずは様子を見る。だが、少しでも怪しい行動をしたら、すぐに魔法を封じ込めろ」

「分かった!」


勢いよく返事はしたけど……ジュリア以外の人の魔法を封じ込めた事がなかった。

やり方もよく分かっていないままなのに、上手く出来るんだろうか。


私の判断が遅れれば、ミネルとエウロにも被害が及ぶ。

失敗したら、どうしよう。


「余計な事は考えるな。アリアはその方が上手くいく」


私の不安を察してくれたのか、ミネルが横から声を掛けてくれる。

黙って頷くと、カウイが真剣な表情でミネルを見た。


「何分、待てばいい?」

「30分だ。もし家に招かれて、30分で出てこなかったら来てくれ」

「……分かった」


そう約束し、私とミネル、エウロが家に向かって歩き出す。

途中、エウロがミネルに尋ねた。


「どうして、このメンバーなんだ?」


そう言われれば、そうかも。

私が選ばれたのは魔法を封じ込める為だよね、きっと。


「オーンの場合は変装しているとはいえ、先ほどの話から顔を知られている可能性が高い。だから、避ける事にした」


なるほど。


「カウイは《火の魔法》だ。《水の魔法》とは相性が悪い」


家の近くまで来たところで、揃って足を止めた。

ミネルがさっきよりも小さい声でエウロに話し掛ける。


「エウロ。何かあれば、アリアを連れて逃げろ。一切、迷うな。それがお前を選んだ理由だ。いいな?」


淡々と話していたミネルの表情が、真剣なものへと変わっている。

戸惑いつつも、ミネルの気持ちに応えるようにエウロが返事をした。


「……分かった」

「い……」


『嫌だ』と、言い掛けた言葉をグッと飲み込む。


ただ『嫌だ』と言うだけなら簡単だ。

嫌だと否定するなら、それに見合う意見がないとダメだ。


みんなの無事を願うなら、私が魔法を封じ込めればいいだけの話だ。

もしくは逃げ出して、オーンとカウイに助けを求めた方が確実だ。


そう決意する私の隣で、エウロが柔らかい表情でミネルを見つめている。


「ミネルは、かっこいいな」

「よせ。そんな趣味はない」


不本意だと言わんばかりに、ミネルが険しい表情を浮かべる。

意味が伝わったのか、エウロが途端に慌て出した。


「い、いや、そういう意味じゃないぞ?」

「当たり前だ」


緊張した空気の中、2人のやり取りに思わず笑いそうになる。

でも、お陰で少しリラックスできたかも。


そこで一旦会話を止め、家の前まで移動する。

ドアの前に立ち、気持ちを整えたところでミネルが私とエウロを見た。


「名前を聞かれたら偽名を使えよ。さて、と。ドアをノックするぞ?」


ミネルの言葉に、2人揃って無言で頷く。



……ん? ノック??


そういえば、さっきの女性は何度かノックを繰り返していた。

ある一定のリズムだった気がする。


ドアをノックしようとしたミネルの手を急いで掴む。

ミネルが少し驚いたように目を見開く。


「私がドアをノックしてもいい? ノックの仕方に特徴があった気がする。もしかしたら、ノックの仕方でドアを開ける、開けないを判断しているのかも」

「なるほどな」


ミネルがノックしようとしていた手を下ろす。

自分自身を落ち着かせる為、ふうっと大きく息を吐く。


さっきのリズムを思い出しながら、ドアをノックする。

しばらく待っていると、ドアがゆっくりと開いた。



そこにいたのは──さっきオーンと見た女性だ。


カリーナ王妃のそっくりさん。

……いや、もうカリーナ元王妃だと思う事にしよう。


「今日は訪問者が多いわね。どうしたの?」


凛とした口調で、カリーナ元王妃が尋ねてきた。

いぶかしげに私たち3人の顔を凝視している。


あ、明らかに怪しんでる!?

確かに見知らぬ人間が急に訪ねてきたら不審に思うよね。



うーん。

ここからどう切り出すべきなのか……。


「突然お邪魔してすいません。僕は、“カリスラ”の息子です」


言葉に詰まる事もなく、平然とした顔でミネルがカリーナ元王妃に挨拶をしている。


えっ? ……うん?

カリスラって、誰??


「ああ、カリスラの……似てないわね」


ええ! まさかの知ってる名前!?

適当な名前じゃないの!?


「はは、よく言われます。今日は父の代理で来ました」

「そう。それで、どうしたの?」


良かった。

今のところ疑っている様子はなさそう。



……あれ?

さっきは気がつかなかったけど、“魔法の色”の中に黒いモヤがかかっているような?


「実は先ほど、オーン王子が来ました」

「……やっぱり。さっきも“コモ”が報告に来たわ」


“コモ”?

さっき、私とオーンが後をつけた店員さんの事かな?


「僕の隣にいる2人の所にも来たようで、それで一緒に連れてきました」


カリーナ元王妃が私とエウロに、チラッと目を向ける。


「男性の方は見た事のない顔ね。女性の方は……会った事があるような気がするわ」


いえいえ、会った事はないです。

でも、会った事あるような顔をしていて良かった、と転生して初めて思いました。


「それで?」

「……少し気になる事を話していました」


ミネルがきょろきょろと周りを見渡す。


「ここでは……少し話しづらい内容です」


カリーナ元王妃が黙って、ミネルを見つめている。

こ、今度こそ、怪しんでる!?


「貴方、カリスラより頭がよさそうね。まぁ、いいわ。──入りなさい」


やった! 家に入れる!!

これで何か情報が手に入るかも!!


カリーナ元王妃に誘導されつつ、家の中へと入る。

そこには、カリーナ元王妃の他に4人の男性が立っていた。


うっ。なるほどね。

ちゃんと警護っぽい人たちがいるから、簡単に入れてくれたのね。


「座りなさい」


言われるがまま、3人で椅子へと腰を掛ける。

想像通り、他の4人の男性たちも“魔法の色”が見える。


それだけじゃない。

カリーナ元王妃と同様に、黒いモヤもかかってる。


なんだろう? この黒いモヤ……。


「それで、何があったの?」


早速、カリーナ元王妃がミネルに尋ねる。

ミネル、何を話すつもりなんだろう。


「実は……ジメス上院議長のお嬢様がこの街に身を潜めていると、オーン王子にバレているようです」

「まさか。“コモ”の話だと、気づかれていないようだったわよ?」


気づかれていない……?

それはつまり……ここにジュリアがいる事が確定したも同然だ!!


カリーナ元王妃の言葉に動じることなく、ミネルが驚いたような声を上げる。


「本当ですか? 僕はオーン王子から、お嬢様がどこにいるか聞かれましたよ?」

「どういう事……? もしかして、その後に証拠を掴んだという事?」


不審そうな表情で、カリーナ元王妃がミネルを見ている。


「そこまでは分かりません」


カリーナ元王妃の質問に、ミネルが首を横に振りながら答える。

2人のやり取りを傍らで見つめながら、ふと、壁に掛かっているフードに目が留まった。



……黒いフードだ。


ん? 黒いフード?


……黒いフード……っ!? 黒いフードだ!!!

マイヤを拉致しようとした人が、黒いフードを被っていた!!


確かサウロさんが、黒いフードを被った女性と一緒にいた人たちは行方不明者だったって言ってた。

そして、操られていたとも。



もしかして、ここにいる人たちも行方不明者!?


お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ