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アリアのいない女子会+エレ

皆さん、ご機嫌いかがですか?

マイヤです。


私は今、サウロさんを好きになるきっかけとなった思い出の地“エルスターレ”に来ています。

ただ、残念なことに一緒に来ているのはサウロさんではありません。


一緒にいるのはセレスちゃんとルナちゃん、そしてエレくんです。


なぜ、この微妙なメンバーかって?



話は──1週間前に遡ります。


パーティーから数日が経ったある日、各々報告の場を設けました。


集まったメンバーは、幼なじみ全員とエレくん。

リーセさんは仕事で欠席です。


まずはジメス上院議長のオーラを見たエレくんが話しています。


「日常的に感情を出さないようにしているのか、人よりオーラが分かりづらい所はありました。ですが、きちんと見る事ができました」


エレくんは、アリアちゃん至上主義の男性です。

アリアちゃんがいつも『天使の弟』と言っている意味が全く分かりません。


「ジュリアさんの失踪の話をしている時は嘘をついていました。ただ、ジュリアさんが詠唱せずに魔法が使える事をアリアに話していた点については、本当に知らなかったみたいです」


思った通りといえば、思った通りの結果かな?


「あと、アリアが魔法を封じ込めれる事についても本当に知らなかったようです」


ジメス上院議長が《聖の魔法》の事までは知らないようで安心しました。

決して、アリアちゃん本人には言いませんが……。


「1つ問題があるとすれば、ジメス上院議長の隣にいた執事──ノレイさんのオーラは見えませんでした」


どうしてかな?


「今まで、僕以外の《闇の魔法》を使う人に会った事がなかったので忘れていましたが……」


もったいぶらずに早く話してほしいです。


「以前読んだ書物に“《闇の魔法》を使う者同士は、お互いのオーラを見る事ができない”と、書かれていたのを思い出しました。それで見えなかったのだと思います」


そういえば、私も《闇の魔法》に関する書物を読んだ際に、そんな内容を見たような気がします。


エレくんが話し終えると、次はアリアちゃんが口を開きました。


「“魔法の色”が見えた人は沢山いたけど、明らかに濃くて大きい“魔法の色”が見えた人は、ジメス上院議長とノレイさんだけだったよ」


アリアちゃんは良く通る声なので、聞いてて心地いいです。

絶対本人には言いませんが……。


「協力してもらうソフィー達──元別館メンバーの親の中にも“魔法の色”が見える人はいたけど、意外にも全員ではなかったんだよね」


以前『封じ込めるに値する人だけ“魔法の色”は見えるらしい』と、アリアちゃんが話していました。

そうではない人達もいるようです。


アリアちゃんの話を聞き、ミネルくんが納得したような表情をしています。


ちなみにミネルくんは、アリアちゃんの事が好きな男性1人目です。


今回のパーティーで、アリアちゃんにドレスを贈っていた事が発覚したという抜かりのない人物です。


用意周到で一見器用そうに見えますが、アリアちゃんに対しては少し不器用な可愛さもあるのかな? と思っています。


「実は……僕の読みに反して、元別館メンバーの親が全員協力してくれる事になった」

「僕もオーラを見て確認しましたが、嘘はついていませんでした」


ミネルくんに付き添っていたエレくんも頷いています。


「彼らは全員、ジメス上院議長の側近のはずだ。にもかかわらず、協力してくれる事に多少の違和感はあるが……。ただ、アリアの話を聞いて分かった事がある」

「な、なんだ!?」


近くに座っていたエウロくんが、ミネルくんに尋ねます。


エウロくんは、アリアちゃんの事が好きな男性2人目です。


そして、私の好きなサウロさんの弟です。

サウロさんの弟という事もあり、私はエウロくんに協力的です。


エウロくんは、明るく話しやすい男性です。

その上、打算のない優しさを持っています。


……が! 恋愛に関して壊滅的な部分もあり、かなり不安です。


将来サウロさんと私が結婚して、アリアちゃんとエウロくんが結婚すれば、義姉妹になるんだけど、な……。

という野望も少しだけあります。



話がそれましたね。戻ります。


「ジメス上院議長は、同じ保守派の人間であっても信用していないという事だ。だからこそ、ソフィーの親もすぐに切った。信用している人物がいれば、執事の“ノレイ”くらい大きい“魔法の色”が見えてもおかしくないはずだ」


ミネルくんの予想が当たっているとすると、ジメス上院議長は相当用心深い人物ですね。


「ソフィーの親達と話をしている時に感じたんだが、揃いも揃って権力志向の強い野心家ばかりだった。とはいえ、ジメス上院議長がいる限り、自分達はトップになれないと分かっている。現状を変える為ならば、多少のリスクは犯すだろうさ。まぁ、協力とは言いつつも、安全に利用できるものなら利用する、というのが正直なところだろうけどな」


ミネルくんの言葉にオーンくんが補足します。


「それと、ソフィーさんの親が側近から外された事も関係しているだろうね。自分達もあっさりと切られる可能性がある訳だから。ソフィーさんには申し訳ないけど、そういった事情もあってスムーズに話が進んだのかもしれないね」


オーンくんは、アリアちゃんの事が好きな男性3人目です。


パーティーではアリアちゃんとしか踊らないなど、周りも気がつくほどの猛アピールをしています。

恐らく、計画的犯行でしょう。


常に落ち着いていますが、アリアちゃんには年相応な表情を見せる時が多いような気がします。



最後に……カウイくん。

アリアちゃんの事が好きな男性4人目です。


彼は無口な為、このままだと一言も発しない可能性があるので、先に紹介しちゃいます。


付き合いは長いですが、会話をした回数は少なく、何を考えているのか、もしかすると何も考えていない可能性のある人物です。


ただ、アリアちゃんとはよく話すし、よく笑うという非常に分かりやすい所もあります。



ようやく、各々の報告が終わりました。


既にジメス上院議長のスケジュール、行動については、事細かに連絡をもらっています。


元別館メンバーの親たちが子供に手紙を渡し、その手紙を私たちが受け取るという方法で連絡を取り合ってます。

渡すタイミングも授業が重なった時だけに限定する事で、他の生徒達から変に注目されないよう気をつけています。


これなら、誰に見られても怪しまれる事はありません。



順調に話は進み、今はリーセさんから聞いた情報について議論しています。


どうやらジメス上院議長がお忍びで出掛けている場所が2つに絞られたようです。

その場所が、“シギレート”と“エルスターレ”。


リーセさんは、ルナちゃんのお兄さんです。

同じ兄妹とは思えないくらい、愛想もよく、表情豊かな男性です。


度々、アリアちゃんを気に入ってるだけなの? 好きなの? どっちなの!? と、思わせる発言をしています。

それに気がついていないのは、当人であるアリアちゃんと鈍すぎるエウロくんだけです。


正直に気持ちを言葉にする部分は、ルナちゃんと似ている気がします。

ルナちゃんの場合は、失礼極まりない言動が多いけど。



話し合った結果、ジメス上院議長が訪問しない日を狙って私たちが直接街へと出向き、情報を集める事になりました。


ミネルくんが「二手に分かれよう」と話しています。

こういう時、頼りになるのがミネルくんです。


「エレには悪いが、“魔法の色”が見えるアリアとオーラが見えるエレは分けたい」


渋々エレくんが了承しています。


街の大きさから、アリアちゃんが行く“シギレート”へは5名、エレくんが行く“エルスターレ”は4名で行く事も決まりました。



誰がどの街へ行くか……私たちの揉めるポイントが発生しました!


悩んだ末、結局は“平等”に紙を選び、そこに書かれた街へ行く事になりました。

要は、運でどちらの街に行くのかが決まります!



どうかアリアちゃんと私、エウロくんが一緒になって!!




──という、私の願いもむなしく、今に至ります。



「なぜ、このメンバーなの!?」


セレスちゃんが不満そうに怒りながら歩いている。

私だって、セレスちゃんの10倍はそう思ってるわ!


「そんなの僕だって思ってるよ。よりによって、男性陣がみんなアリアと同じなんて……最悪だね」


エレくんが大きな溜息をついている。


「早く終わらせたいので、休みなく行動しますから」


……アリアちゃんがいないから、いつもより態度が大きいわね。

ひとまず、どこから情報を集めるか相談していると、セレスちゃんがみんなに声を掛けてきた。


「お父様と取引のある方が数名いるわ。まずは信頼できる方から聞き込みを開始しましょう。情報が得られなかった場合は、どなたか紹介してもらうのでどうかしら? その方が安全に調べられるわ」


「へぇ、セレスにしてはちゃんと考えてるね」


セレスちゃんの提案にエレくんが感心している。


「エレは一言、余計なのよ!」


そういえば、2人だけのやり取りを見たのは初めてかも。


エレくんは、セレスちゃんを呼び捨てにしてるのね。

それに敬語も使ってない。


小さい頃、セレスちゃんとアリアちゃん、エレくんで遊ぶ事が多かったって聞いた事がある。

……だからかな?



セレスちゃんの案内で街中を歩いている間も、2人は会話を続けている。


「エレはなぜ“エルスターレ”を選んだの?」

「アリアは“シギレート”へ行った事ないからね。きっと行ってみたいんじゃないかと思って」


エレくんって、“アリアちゃんには”気を遣えるのね。


「なんで、エレくんはセレスちゃんだけ呼び捨てなの?」


私の問いになぜかルナちゃんが答える。


「セレスだから」

「まぁ、そうですね。セレスだから」


エレくんも同意している。


「なんですって! 本来『セレス様』と呼ばれるほどの人物なのよ!! 敬いなさい!!」


ダメだ……このメンバーだと、まともな会話ができないわ。


「……小さい頃からアリアが『セレス、セレス』と話していたので、うつったのかもしれません」


諦めていたら、意外にもきちんと答えてくれた。


セレスちゃんが嬉しそうな表情をしている。

その話を聞いたルナちゃんが、詰め寄るようにエレくんに尋ねている。


「私の事は?」


ルナちゃんって、無表情で感情もないかと思いきや、負けず嫌いよね。


「ああ、よく話してましたよ」


ルナちゃんが……微かに笑ってる?


私でもルナちゃんが笑っている事に気がついたくらいだもの。

本当に嬉しいんだ。


「もう1つ、質問していいかな?」


前から気になっていた事をエレくんに聞いてみたい。


「ダメですと言ってもきっと話しますよね? それなら、聞かないでくれますか?」


イラっとする返しがきたわ。


正直腹が立ったけれど、どうにかして落ち着かないと。

私はエレくんより大人、エレくんより大人……。


「うふっ。エレくんは、アリアちゃん以外の大切な人を作ろうと思った事はないの?」

「ないです」


予想通りだけど、あまりにも早い返答。


「どうして?」

「1つ、質問に答えましたよ」


また、イラっとする返しがきたわ。

エレくんが分かりやすいくらいに大きなため息をつきつつ、前を歩いている。


「マイヤさんは、他に母親が欲しいと思った事はありますか? 父親でもいいですが……」

「ないけど?」

「なぜですか?」


なぜ?


「考える必要がなかったというか、考えた事もなかったな」

「僕も同じです。考える必要もないし、考えた事もないです」


えっと……同じ事なの?


「マイヤさんは、今の親で満足しているから考えた事がないのか、そもそも他に親はいないと思っているから考えた事がないのか、そのどちらかであると仮定します」

「うん?」


な、何の話??

困惑する私を無視して、エレくんが淡々と説明を続ける。


「どちらの考えも僕に当てはまるという事です。前者の場合、アリアで満足しているから考えた事がない。後者の場合、他にアリアはいないので考えた事がないという事です」


言いたい事は何となく分かるけど……騙された気分になってくるのは、気のせいかな?


「エレは性格がねじ曲がりすぎてるから、考えるだけ無駄よ」


呆れた表情で、セレスちゃんが話している。


「そんなの僕自身が一番よく分かってるよ。だけど、僕がそう思っている以上にアリアが僕を褒めてくれるから、自分は大丈夫だと思えるんだ」


クールな表情でエレくんが笑った。


──ああ、今のは分かる気がする。

認めたくないけど、エレくんと私はほんの少しだけ似ているのかもしれない。


って、ううん。今のはなし! 訂正!!

私はエレくんほど、性格が歪んでないもの!!



んー、エレくんがアリアちゃんを異常なくらい大切に想っているのは知っているけど……それは恋愛感情なのかな?

セレスちゃんは何か知っている気がするけど、2人に聞いても答えてくれない気がする。


一人で悩んでいると、近くにいたセレスちゃんがポツリと呟いた。


「エレは……バカなのよ」


……なんだろう?

いつものやり取りとは違う言い方だったような?



「そういえば貴方、サウロさんとはどうなの?」


突如、話題を変えたセレスちゃんが私に尋ねてくる。


「助けてもらったお礼に食事には行ったけど、女性として意識はしてもらっていない気がする」


小さい頃からの知り合いだから、妹のような扱いなのよね。


「10歳も離れていると、恋愛対象外なのかな?」

「エウロほどじゃないにせよ、サウロさんは恋愛に疎い方だと思うわよ? 変なプライドは捨てて、自分から気持ちを伝えたら?」


セレスちゃん!

そこはプライドというより、可愛い乙女心なのよー!


「はぁ、セレスちゃんとルナちゃんに好きな人がいたら気持ちを分かってもらえたし、相談もできたのに」


私の言葉に、2人がきっぱりと答える。


「私はいるし。兄様とアリア」

「私の場合、好きな人が出来たらすぐ両思いになるから、相談は必要ないわよ」


そういう事じゃないわよ!

本っ当に会話にならないわね!!



いいわ。相談できる人はいないけど、まだまだ諦めないんだから!

それにサウロさんと、次に会う約束もしたもの!!



サウロさんと食事をした日──


「そうだ! アリアから『マイヤが父親に贈るプレゼントを迷っているようだけど、自分は女性だから分からない。マイヤと一緒に買い物に行ってくれないですか?』と言われてたんだ」


アリアちゃん! いつの間に!!

恋愛になると、抜けていてボーっとしていると思っていたのに!


「俺が力になれるか分からないけど、一緒に選ぶか?」

「お願いします!」


うふっ。

迷惑にならないペースで手紙も定期的に送っている。

手紙のやり取りや、2人で会うのが当たり前になったら意識してくれるかもしれない。


ううん。意識してほしい!!


「──何を笑ってるの? 気持悪いわね」


ついつい思い出し笑いをしていると、怪訝な表情でセレスちゃんが私を見てきた。


「恋する女性に対して、ひどい事を言うわね。……そういえば、ユーテルさんとはどうなったの?」


元別館メンバーのユーテルさん。

ルナちゃんが好きという変わり者。


私の問いに、ルナちゃんが無表情のまま答える。


「ああ、断ったよ。『将来、兄様とアリアの3人で住むので、気持ちには答えられない』って」


どんな断り方よ、それは。


「それじゃあ、納得しないわよね?」

「『好きではない』とも伝えた」

「それを先に言ってよ!」


大した反応もなく、ルナちゃんがスタスタと歩いていく。

ここまでくると、私が変なのかな? という錯覚すら覚える。



今日、ここにはいないアリアちゃんは4人の内の誰を選ぶのかな?

それとも4人以外の誰か??


自分の恋も大切だけど、アリアちゃんの方もわりと面白い……大切なのよね。



それにしても、朝から夕方まで歩きっぱなし。

私はみんなほど体力がないから、疲れちゃったな。



色々と調べてはみたものの、結局、有力な情報は得られなかった。

ジメス上院議長は頻繁に“エルスターレ”へ来てはいたようだけど、商売関係の取引で利用しているだけだったみたい。



……という事は、アリアちゃん達が行っている“シギレート”に何かあるのかな??


お読みいただき、ありがとうございます。

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