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事前準備は怠らず

なんだろう?

不謹慎かもしれないけど、ドキドキしてきた。


楽しみとも違うドキドキ。

緊張感からくるドキドキなのかな?


いつもはみんなの意見を聞いてから話し始めるカウイが、珍しく自分から会話を切り出した。


「まずはジュリアさんの居場所を見つけたいね」


カウイの言葉にミネルが頷く。


「そうだな。知能が足りてなさそうな人間だからな。こちらが頼まなくても自慢げに父親の悪事を話してくれそうだ」

「知能が足りていないって……」


ミネルの言葉にエウロが苦笑している。

すると、リーセさんが私に向かって確認するように尋ねてきた。


「アリアどうしたい? アリアの頼みなら、私がジュリア嬢の居場所を調べるよ?」


えっ……と。

お願いしたいけど、リーセさんのお仕事的に大丈夫かな?

職権乱用にならないかな??


返事に詰まっていると、私の代わりにセレスが口を開いた。


「ええ、お願いしますわ。リーセさん」

「セレスのお願いじゃ、絶対に動かないし」

「なんでよ!!」


ルナの言葉を聞き、セレスが納得できないとばかりに怒り出す。

いつものように2人が言い争う中、リーセさんが私の答えを促すように、軽く首をかしげて見せた。


「あの、できればお願いしたいです……けど、仕事に影響がない範囲で……」


戸惑いつつも素直な気持ちを伝えると、リーセさんが優しく口元を緩めた。


「アリアは一言、私に『お願い』と言うだけでいいんだよ?」


なんだろう、この安心感。

全てを包み込んでくれるような温かさを感じる。


「えっと……お願いします」

「了解」


嬉しそうにリーセさんが微笑む。


「──次」


ん? 次??


横から割って入ってきたオーンの方へ視線を動かす。


「どうしようか?」


オーンがいつも以上に、にっこり笑っている気がする。


……ああ、次だよね。


「セレスの『裏切るかもしれない』という言い分も分かるけど、ジュリアさんの幼なじみ達から話を聞く事はできないかな? なぜ保守派にいるのか……」


オーンの言葉の意味を察したミネルが口を開く。


「なるほど。自分の地位を守る為だけに保守派に属している人間ばかりではないという事か」


その通りと言わんばかりにオーンが頷く。


「何も考えず保守派のままでいる人や、ジメス上院議長が怖いから従っている人……様々な理由があると思うんだ。ジュリアさんの幼なじみの親達がどうして保守派にいるのか……理由次第では、味方にできるかもしれない」


まずは味方にできるか探るという事ね。

自分の親についてどこまで知っているのかにもよるだろうけど、やってみる価値はきっとある!


「いきなり接触するのは怪しいから……どうするかだな。どこにジメス上院議長の配下がいるか分からない」


ミネルの言葉に「うふっ」とマイヤがほくそ笑んだ。


「ライリーくんとは近々会う予定があるよ」


ジュリア曰く、“重度のマザコン”ライリーさん!!

私がマイヤに直球の質問を投げる。


「ど、どうして?」

「デートに誘われたの」


まんざらでもない表情でマイヤが答える。

その報告に、なぜかセレスが怒ったように声を上げた。


「なぜ私じゃないのよ!」


えっ! セレス、そこ??


「(唯一アリアちゃんに失礼なことを言ってなかった)ライリーくんからのお誘いはもう了承してあるから、自然に接触できるよ」


な、なんと! もうデートの約束まで!?

今までそんな素振りは微塵もなかったけど、マイヤはライリーさんが気になってたのかな?


私が驚いてる中、みんなはマイヤからの話を聞いても冷静みたい。

私と違って落ち着いてるよなぁ。


「……ライリーさんはマイヤに任せるか」

「うん、頑張るね」


ミネルの言葉にマイヤが可愛らしく返事をした。

あとは……一番味方になってくれそうなのは、グループから外れたソフィーの親だよね。


うん。よし!


「ソフィーとは歴史の授業が一緒だから、私からさり気なく聞いてみるよ」


ミネルと歴史の授業を受けてた時、離れた場所にソフィーが見えた。


同じ授業を受けてるから声も掛けやすい!


私が意気込んでいると、真っ先にセレスが否定してきた。


「アリアにさり気なくは無理よ」


オーンとミネルもセレスの言葉に同意する。


「残念だけど……難しい」

「無理だ。ある意味、ジメス上院議長を失脚させるより厳しい」


ひどい言われよう……というか、エレまで黙ってるし。

私が怪しまれずに何かを聞きだすという事は無理なようだ。


私の様子を見たエウロが、すかさずフォローを入れる。


「さり気なくは……無理……難しいかもしれないけど、変に意識とかせず、いつも通りに話すだけで大丈夫じゃないか?」


同意するかのようにカウイも微笑む。


「そうだね。俺の勘だけど、ソフィーさんはアリアには協力的だと思うよ?」


エウロとカウイ、2人のフォローにより、私はソフィー担当になった。

アドバイス通り直球で聞こう。


すると、思い出したようにセレスが話し始めた。


「思ったのだけれど、テスタコーポ大会が近いわ」


あっ! 中等部の時に参加した大会。

そうか! 2年生になったから、大会に関わるんだ!!


「確かに大会準備のグループ次第では、自然に接触できるかもしれないな」


エウロが考えながら話を続ける。


「実は2年生代表として、テスタコーポの主催を頼まれてるんだ」


「すごい! さすがエウロだね」


思わず、声に出してしまった。

コミュニケーション能力高いし、友人も多いエウロなら適任だ!


私が感激していると、横にいるエレがぼそりと呟いた。


「僕だって2年生になったら、きっと頼まれるよ」


ちょっと拗ねてる? ……なんて可愛いらしい!


大丈夫!

エレは頼られてるし、みんなから好かれてるのは知ってるよ。


「うん、2年生になったらエレも頼まれると思うよ」


自信満々にエレに告げる。

エレと笑い合ってると、ルナが私を呼んだ。


「アリア」

「どうしたの? ルナ」

「兄様は、テスタコーポ大会の主催でもあり、リーダーだったから。兄様の方がすごい」


そうだった!

リーセさんは、私が参加した時にリーダーだった!


「確かに……」

「みんな!」


私の言葉に被せるようにマイヤが話した。


「(アリアちゃんにアピールしてたら話が進まないのよ!)エウロくんは2年生代表を引き受けて、うまく元別館メンバーと私達を同じグループにしてもらうという事でいいかな!?」


いつになく、マイヤが声を張っている。


「……ああ、そうするよ」


マイヤに戸惑いつつもエウロが承諾している。


テスタコーポはエウロに任せれば何とかなりそうだ。


あとは……そうだ!


「みんなは魔法の授業、座学や実技でも会うんじゃない?」


私は《水の魔法》だから、ジュリア以外被らないと思うけど。


テスタコーポで接すれば、授業の時に会って話しても違和感はないよね?


「まぁ、そうね。じ……」


何かを話し掛けたセレスが急に言葉を止めた。


「な、なんでもないわ(私が《水の魔法》の座学を選択している事は、授業があるまで内緒にしておきましょう)」


どうしたのかな? セレスがにやにやしている。


「(ふふ、きっとアリアは泣いて喜ぶに違いないわ)《雷の魔法》を使うユーテルさんはどうします?」


オーンが「ああ、それなら……」と話し始めた。


「魔法祭での特訓をきっかけに、ユーテルさんの弟君とは交流があるんだ」


へぇー、そうなんだ。


「ユーテルさん達には私から探りを入れてみよう」

「これで違和感なく……いや」


ミネルがルナを見た後、カウイを見た。


「ルナとカウイが誰かと話すのは違和感しかない」

「……大丈夫」


すぐにカウイが返事をする。

なんだろう? 意識してカウイとオーンを見るようになったからかな?


私にとっては、カウイが自分から話す事は違和感はないし普通の事だ。

そう思うと、カウイは分かりやすいくらい私の事は“特別”だと示してくれていた事に気がつく。


実は私が気づかなかっただけで、オーンとミネルもそうなのかなぁ。


「俺が対戦したヌワさんに『弟子にしてほしい』と言われてるんだ……。会う度に話し掛けられて……」


表情を見る限り、困ってるのかな?

そりゃ、毎回会うたびに『弟子にしてほしい』は困るよね。


ヌワさんは熱血タイプだったから、カウイが承諾するまで頼みそう。

二重人格じゃなくても、なかなか面倒な性格のようだ。


「こちらとしては好都合だ。弟子にしてやれ。そして、思う存分使わせていただこう」


……容赦ないミネルの言葉。


「あとは……ルナか。同じ魔法となると、双子の片割れであるリイだな」

「話し掛けられた事があるから大丈夫」


即答したルナがコクリと頷く。


自信に満ちあふれたルナの姿に成長を感じる! 感動!!


リーセさんに目を向けると、リーセさんも満足そうな表情をしている。


「そういえば、何で話し掛けられたの?」


私が聞くと、ルナが私を見た。


「魔法祭の試合中に少し会話をしたから……その事で(アリアに興味を持ってた)」


ルナの世界が広がっているようで私も嬉しいな。


「とりあえず、これで各メンバーとは普通に接触できそうだな。僕は“ノレイ”という執事を調べてみる」


ミネルが言ったノレイ……ジュリアの試合の時にいた執事だ。

確かにジュリアの執事なら、何か知ってるかもしれない。


「後は魔法更生院の脱走の件や、誘拐事件に関わっていないかも調べたいと思ってる」


──ああ! ミネルは関わってると思ってるんだ。


「私も関わってると思って試合中にジュリアさんに聞いたけど、何も知らなさそうだったよ」


あの時のジュリアが演技だとは思えない。


「その話が本当だとすると、関わってるのは親だけかもしれないな」

「さすがに俺達の親も調べてるんじゃないか?」


ミネルの発言にエウロが質問をする。

そうだよね。きっと私のお父様も調べてるはず。


「そうだろうな」


普通に返答している所を見ると、ミネルにはもう他に案があるようだ。


「僕たちは親よりも強いコネクションがある。そこから聞き込みをする」


親よりも強い? あったかな??

オーンもミネルの言葉に頷いている。


「一般の方たちだね?」

「そうだ」


そっか! 学校建設をきっかけに交流する機会が増えたし、知り合いも多い。


「親だって調べるといっても自分たちで動いていない。そんな暇はないだろうからな。親が見つけられなかった事も僕たちなら見つけられるかもしれない」


うん、うん。

やっぱりミネルは頼りになる! 相談して良かった。


セレスが「ふふ」と笑いだした。


「子供はいずれ親を超えるものよ。私たちの場合、それが他の子たちよりも少し早かっただけ……という事ね」


セレスの熱意……というより、やる気がひしひしと伝わってくる。


「それと……エレ」


ミネルがエレに目を向ける。


「エレの同学年にも上院の子供がいる。別館メンバーの親よりは地位は低いようだが、接触して親がどういう考えか、状況なのか……分かる範囲で構わない。聞きだしてもらえないか?」


エレが頬を緩める。


「分かりました。その程度なら、余裕です」


……本当に優秀で頼もしい弟だ。


それぞれが情報集めに動く一方、学校では“ジメス上院議長”の名前は出さないという事に決め、今日は解散する事になった。


「そういえば、《水の魔法》は? もう普通に使っているのでしょう?」


帰り際、セレスが私に聞いてくる。


「うん。特に訓練しなくても制御はできたし、通常の魔法も使える」


使い始めた当初は『訓練なく使えるなんて、私って天才かしら?』って思っちゃった。


「上級魔法は?」

「試したけど……まだ使えなかった」


それで『あっ、天才ではなかった』とすぐに思い直したし。

でも、いきなり全部の魔法が使えたら楽しくないだろうし、これで良かったのかも。


今は絶賛、上級魔法も使えるよう特訓中!!


続々とみんなが帰っていく中、マイヤが私に近づいてくる。


「何か用ですか?」


マイヤが何か言うよりも早く、私の前に立ったエレが問いかける。


「(アリアを1日自由にしていい権利を提案したの許しませんからね)マイヤさん?」

「(エレくんが何か思ってるようだけど気にしな~い)うふ。アリアちゃんに用事があるの。アリアちゃん、少しだけ2人で話せないかな?」


なんだろう?

含みのあるマイヤの笑顔が気になるけど……。


「エレ、少しだけ待っててね」


少し拗ねているエレを待たせ、マイヤと一緒に離れた場所へと移動する。

2人きりになると、マイヤがジッと見つめてくる。


「実はアリアちゃんを1日自由にできる権利を使いたいの」


えっ! ミネルに引き続き……って、明日ミネルと出掛けるんだった!

告白された手前、2人きりは緊張するなぁ。


……と、その前に。

まずはマイヤの話を聞こう。


「さっきね、ライリーくんと出掛ける話をしたけど、2人だけだと緊張しちゃうと思うの」


うん、まぁ、そうだよね。

初めて2人で出掛けるなら、緊張はしちゃうよね。


「だからね。アリアちゃんにもついてきてほしいの」


えぇ!? デートに私がついていくの??

ライリーさんにとって、私は邪魔なんじゃない!?


「でもね、3人だけだとアリアちゃんも気を遣ってしまうと思うから、アリアちゃんもエレくん以外の男性を1人誘って連れてきてね」


そう一方的に告げると、にこやかにマイヤが帰って行った。

急な展開に、思わず呆然としてしまう。


エレ以外……弟以外という事だよね。

それは……ダブルデートというのでは!?


「……アリア」


パッと後ろを振り向くと、いつの間にかルナが立っていた。


「アリアを見送ろうと思っていたら、マイヤとの会話が聞こえてきた」


「ああ、うん」


珍しくするどい眼をしたルナが私に言う。


「兄様に頼んだら?」


えっ!? リーセさん???


「うーん……でも、学校に異動してきたリーセさんと出掛けるのは、立場上よくないんじゃない?」


「そんな事はないよ」


リーセさんが私とルナの側へとやって来る。


「私は教育者という訳ではないから、なんの問題もないよ。 例え、アリアと腕を組んで歩いたとしても何も言われないよ」


冗談っぽくリーセさんが私に笑い掛けてくる。


エレに頼めないし、幼なじみ達にも頼みづらい。

今の私が頼れるとしたら、正直エウロぐらいしかいない。


そう考えると、リーセさんに頼んだ方がいいのかもしれない。

悩む私にリーセさんが優しく声を掛けてくる。


「『お願い』だけでいいんだよ?」


そのセリフに心を決めると、リーセさんに向かって頭を下げた。


「お……願いします」

「了解!」


頷いているルナの横で、リーセさんが先ほどと同じくらい嬉しそうに微笑んだ。

お読みいただき、ありがとうございます。

次話、4/2(金)更新になります。

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