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新たな警護とエレの入学

「えっ、あっ、うん」


動揺しつつ、ミネルの言葉に返事をする。

そういえば、まだ誰も権利を使っていなかったな。


私の体調や魔法、ジュリアの事(継続中だけど)でバタバタしていたから、3人とも気を遣ってくれてたのかも。

それよりも、さっきのミネルの発言……。


「とりあえず、話を戻すぞ」


何事も無かったかのようにしてるけど、若干、まだいつものミネルじゃない気もする。


「ジメス上院議長の件は、僕も考えていた」


──えっ!?


「……ただ、まだいい方法を思いついていない。中途半端な計画だと、失敗に終わって二度とチャンスが訪れない可能性もある(むしろ、こちらが消される可能性もある)。やるなら、綿密に計画を立てる必要がある」


ミネル……『できない、無理だ』って言わないんだ。

それどころか、私と同じ事を考えてたんだ。


「この僕でも悩んでいる事をアリアがあまりにも気軽に言ったから……さっきは驚いた」

「いやいや、私も悩んだ上で相談したんだよ?」


「どうだかな」とミネルが口元を緩める。


どうやら、いつもの調子が戻ってきたらしい。

何かを考えるような仕草を見せながら、ミネルが軽く眉をよせた。


「本当はアリアは関わらせない形で動こうと思ったが、アリアから言い出してしまったからな……仕方がないか」


私を関わらせない……もしかして、気にしてくれてたのかな?


「心配してくれてありがとう。でも、関わらないのは無理! 」

「……だろうな」


諦めたようにミネルがため息をつく。


「1人で勝手に動かれるよりはましか。それに1人で実行に移すのは、難しい内容だとは思っていた」


覚悟を決めたのか、ミネルが真剣な表情を浮かべている。


「セレス達にも話をする。信頼できて、役に立つ人間は多いに越したことはない。ただし、学校ではない場所で話す。僕たちが集まると、どうしても目立ってしまう」


信頼できる人物の中に、当たり前のように幼なじみ達が入っている事が、なぜか嬉しい。


今回はミネルに相談して断られたら、みんなに話すのは止めようと思ってた。

だからこそ、ミネルが早めに承諾してくれた事に驚いてもいる。


「それに……多分、考えている事はみんな同じだ」

「えっ? ……みんな??」

「話す時にきっと分かる」


なんだろう?

言葉通りに受け取ると、みんなもジメス上院議長とジュリアについて、考えていたという事かな??


「こうなったからには早めに動いておいた方が良さそうだ。みんなの都合が合えば、今週末に集まろう。エウロ……男性陣には僕から声を掛けておく。アリアはセレス達、女性陣に声を掛けておいてくれ」


私の頭が追いつかない内にミネルがどんどんと話を進めていく。


「う、うん。分かった」


お昼も無事に食べ終わり、教室に戻ろうと話しをする。

すると、ミネルが席を立ちながら、ふっと笑みをこぼした。


「今週末、2人で出掛けるのは、集まった後──次の日でいいぞ」


この流れの中、出掛ける事もきちんと覚えているのがミネルらしい。

さっきの告白は夢なんじゃないだろうか? と思うくらい、ミネルが普通だ。


いつもと変わらず、冷静なミネルと一緒にレストランの個室を出る。

ドアを開けた先には、私を待つララさん達の姿があった。



……そう! 黙っていて、すいません!

実は警護の仕事を辞めたララさん達を、私のお父様が雇用する事になったのです!!



魔法祭後、お父様との間で、またジメス上院議長が緊急招集等の手段を使う可能性があるという話になった。


そうなった場合、また私の身に危険が及ぶ。

そこで、公的な機関に属さない警護をお父様が独自で雇う事になった。


つまり今まで警護をしてくれたララさん達と離れ、また警護を変える事になる。

ただでさえ責任を感じているララさん達が、より責任を感じてしまわないか不安もあった。


「私から説明するから、アリアは席を外してくれて構わない」


ララさん達と話をする日、お父様は私にそう声を掛けた。

優しいお父様らしいな。


「お気遣いありがとうございます。ただ、お世話になった私から直接、お礼と説明をしたいです」


部屋の外で待っていたララさん達を呼び、誤解を与えないよう丁寧に説明する。

私が話し終えた後、ララさんがゆっくりと口を開いた。


「実は……話す予定はなかったのですが、警護の仕事は引継ぎが終わった段階で辞めるんです。ですので、元々アリア様の警護は別な人間に変わる予定でした」


えっ!?


「なぜですか? まさか……私が原因ですか? もし、責任を取ってという事なら……」


話の途中、私の言葉を遮るようにララさんが首を左右に振った。


「いえ、アリア様は関係ありません……と言ったら少し嘘になります。きっかけはそうかもしれませんが、辞める理由としては関係ありません」


悩ましげな表情を浮かべつつ、ララさんが話しを続ける。


「今回の件については、国家の安全の為だったと上から聞いています。また、我々の立場上、命令されたからには承諾せざるを得ないという事も頭では分かっています」


複雑そうに語りながらも、目はまっすぐに私を見ている。


「分かってはいるのですが……アリア様が監禁されたタイミングを考えると、どうしても国に対する不信感が消えません。国に対する不信感が消えない以上、この仕事を続けるわけにはいきません」


約1年一緒にいたから、ララさん達の事はよく分かる。

責任感が強い分、今までと同じ気持ちで仕事を続けるのは難しいと思ったのかもしれない。


「……アリア様を警護している日々は、今までの仕事の中で1番楽しい日々でした。いつも私たちにお気遣い頂き、本当にありがとうございました」


ララさん達が深々と頭を下げる。

引継ぎの話もしているという事は、すでに辞める事も伝えているんだ。


あの事件がきっかけで、まさかこんな事になるなんて……。

私が沈んでいると、話を聞いていたお父様がそっと口を開いた。


「……実は、ちょうどアリアの警護をしてくれる人を探していてね。お願いするなら、心から信頼できる人達がいいと思っていたんだ。よければ君達、私の家で働かないかい?」


お父様からの急な提案にその場にいた全員が驚いている。


私も驚いたけど……お、お父様! 素敵です!!

最高です!!!


「もちろん、再就職先が見つかっていなければ……の話だけどね」


そっか、そうだよね。


「いずれアリアに警護が必要なくなったとしても、仕事は続けられるよう手配もさせてもらうよ」


ララさん達に向かって、お父様がにっこりと笑った。


「すぐに返事はできないと思うけど……」

「いえ、働かせてください! 今度こそ、アリア様を守らせてください!」



……という訳で、なんとメンバー変わらず、引き続き私の警護についてもらっている。

変わった事といえば、雇い主がお父様になった事くらいだ。


とはいえ、ララさん達の事を考えると、辞めるという形が良かったとは到底思えない。

厳しい訓練に耐え、やっとの思いで入った職場だったろうし。


ジメス上院議長を離職させ、上院自体を変える事ができたら……いや、国への不信感を消す事ができたら、また元の場所で働かせてあげたいな、というのが私の密かな野望だ 。



ミネルと別れ、次の教室へと向かう。

さっきも思ったけど、ミネルって私の事が好きなんだ、よね?


……こんな事ってあるの?

何かもう、私はずっと“夢の世界”にいるのではないかと思えてきた。


……って、あれ?

オーンとカウイ、ミネルは幼なじみでもあり、友人同士だ。


3人とも私が好きって事自体、夢みたいな話だけど……3人はその事を知らないよね?


ど、どうしよう。

これで仲が悪くなったりしたら……?


オーンとカウイが私に好意を持ってくれてる事を知った時に気がつくべきだった。

私はどうして、いつも肝心な事に気がつかないんだろう。


私の行動次第では、幼なじみ達の仲が悪くなる可能性だってあるんだ。


んー、誰かに相談したいけど、誰にも相談できない。

というか、相談の仕方を間違えると『私、モテてモテて困ってるんです~。どうしたらいいですかぁ~?』と嫌味を言っているようにしか聞こえない!


んー、んー、困った。

前にも聞いたことはあったけど、セレス達に好きな人が出来たか聞いてみようかな……?


その返答次第では、相談までいかなくても何かいいアドバイスがもらえるかもしれない。

よし! アドバイスを貰うまで、3人には勘ぐられないように振る舞おう!!



そういえば以前、オーンとカウイの事を考えていた時に思った事がある。

私に好きな人が出来る時は一目惚れじゃなく、ずっと近くにいてくれる人を好きになるんじゃないかって。

そう考えると、幼なじみの誰かを好きになる可能性が高い……かもしれない。


……と、とりあえず、明日はエレの初登校の日だ。

早起きして待ち伏せする予定だから、授業が終わり次第、寮に帰ってすぐに寝よう。




──そして、次の日。

いつもより早起きをして、1時間早く高等部の門をくぐった。


これだけ早ければ、エレもまだ来ていないよね。

……エレは来てないけど、すでに数名の生徒が立っている。

私みたいに入学してくる弟や妹を待っているのかな?


すると、1人の小柄な女性が私に声を掛けてきた。


「あっ! おはようございます。アリアお姉さま」


アリア……お姉さま!?

私の妹? 知り合い??


「おはよう……ございます」


戸惑いながらも挨拶を返す。


「アリアお姉さまも、エレ様をお待ちですか?」

「あっ、はい」


聞かれるがままに返事はしたものの、こちらとしても色々と聞きたい事がある。


まず、私はなぜ“アリアお姉さま”と呼ばれているのか。

さらに『アリアお姉さまも』って事は、この女性もエレを待ってるの??


小柄な女性が私に声を掛けたのを皮切りに、その場にいた生徒たちが次々と私に挨拶し始める。


「あ、あの……エレの友人ですか?」


勢いに押されながらも質問すると、周りの生徒たちが一斉に首をかしげる。

そんな中、一人の女性が答えた。


「友人なんて恐れ多いです。ただエレ様を慕っているだけです」


周りの人たちも目を輝かせて頷いている。


以前、エレが『同学年はほぼ全員制圧している』と話していた事を思い出す。


話を聞いた時、制圧って……と思ってたけど、あながち冗談じゃないのかもしれない。


よくよく考えると、私が初登校の日もたくさん人がいたような気がする。

もしかすると、エレの時と同じように幼なじみを一目見ようと待っていたのかもしれない。


何とも言えない気持ちを抱えながらエレを待っていると、オーンが登校してきた。

目が合うと、にこやかにこちらへ向かって歩いてくる。


「おはよう。誰か待っているの?」


周りの生徒たちもオーンを見て騒いでいる。


ここにいる人たちが同じ学校で、しかもエレと同学年だとしたら、久しぶりに見るオーンだよね。

うん。それは騒ぎたくもなるよね。


「エレが初登校の日だから待ってるの」

「なるほど。では、私も“未来の義弟”を一緒に待とうかな?」


耳元で私に話し掛けた後、オーンが含みのある笑顔を見せる。


この顔は……私が困る事を確信して言っている!

分かってはいるけど、オーンの思惑通り、私はドキッとしてしまうんだよ。



一人頭を悩ませていると、「エレ様だ!」と叫ぶ生徒たちの声が聞こえてきた。

急いで、門の方へと目を向ける。


──エレだ!

やっぱり私の弟は、この中で一番輝いている。最強だ!!


エレが天使のような微笑みで門をくぐってきた。

やりました! 弟の初登校をこの目でしかと見ました!!


いつの間にか、私もエレの出待ちの人達と同じ位置に並んでいる。

エレに気がついてもらう為に何かアピールをしないと!!

……って、本当にファンの1人になった気分。


「アリア!」


行動を起こすよりも早く、私に気がついたエレが真っ直ぐに駆け寄ってくる。


「エレ、おはよう。思っていたより人がいたから……気がついてくれて良かった」

「アリアがいたら、すぐに気がつくよ」


嬉しそうにエレが笑っている。


その笑顔に癒されていると、エレがちらりとオーンを見た。一瞬だけど……表情が曇った?

いや、気のせいか。いつも通りの笑顔だった。


「オーンさん……おはようございます。アリアと一緒に待っていてくれたんですか?」

「おはよう。うん、アリアの“大切な弟”だからね」


大切な弟……ただの弟と言わない所がよく分かってる!

さすが、オーン!!


「……ありがとうございます。オーンさん、早く授業に行った方がいいですよ」

「……まだ大丈夫だよ」


オーンが答えた後、すぐにエレが私の方を向く。


「アリア、途中まで一緒に手を繋いで行こうよ」

「えっ」


“お願い”の眼差しで、エレが私を見つめてくる。


手を繋ぐだなんて……エレのファンは大丈夫なのだろうか?

うかがうように周りを見渡してみると、みんなが温かい目で私とエレを見つめている。


……あれ?

私の様子に気がついたエレが口を開いた。


「中等部の時に僕の大切な姉だから、僕と同等、同等以上に扱うようしつけ……じゃない、言ってあるんだ。だから、アリアが心配に思うような事は1つもないよ」


にっこりと笑い、エレが手を差し出した瞬間──私とエレの間にミネルが入ってきた。


「エレ、入学おめでとう。クラスを調べるぞ」


ミネル!! ……そっか。

《知恵の魔法》を使う人たちは、新入生を案内する為に集まってるんだ。

去年、私もクラスを調べてもらったなぁ。


「……ありがとうございます。タイミングいいですね、ミネルさん」

「ああ、そうだろう。空気は読める人間なんだ」


2人の会話を聞きながら、ふと、昨日のミネルとの出来事(告白)を思い出す。

ミネル、それにオーンもいる。


普段は顔に出てしまうけど……この場は、自分なりのポーカーフェイスで乗り切ってみせる!


ミネルは新入生の案内もあるようで、エレのクラスを調べ終えた後、 そのまま別れる事になった。

私とエレ、オーンもそれぞれの教室へと歩き出す。


その別れ際、できるだけ自然にミネルへと声を掛けた。


「じゃ、じゃあ、ミネル頑張ってね」


……よし! 乗り切った!!

そう思って安心していると、後ろからミネルの声が聞こえてくる。


「アリア、週末楽しみにしてるぞ」


──!!?

予想外のセリフに驚き、慌ててミネルの方を見る。

悪びれた様子もなく、私に向かってニヤッと笑うと、ミネルは新入生の元へ行ってしまった。


まだエレに報告していないのに……なぜ、このタイミングで!

空気は読める人間じゃなかったの!?


一連の流れを見ていたオーンとエレが、両脇から私に問い掛けてくる。

……いや、問い詰めてくる。


「週末って?」

「何? 週末??」


そうなりますよね。


「ええとですね……」


結局、私を1日好きにしていい権利を使って、週末にミネルと出掛ける事がバレてしまった。

権利については、エレに話してなかったんだよなぁ。


「なるほど。この案を考えたのは……もしかして、マイヤさん?」


な、なんで分かったんだろう。

私がゆっくりと頷く。


「マイヤさんとは、今度ゆっくり話すとして。もうすぐ授業だから行くけど、アリア、二度とこんな約束をしたらダメだよ?」


優しくエレに注意を受ける。

私の弟は注意の仕方まで優しい。


「週末は出掛けておいでよ。僕も出掛けようと思ってたから、偶然、会うかもしれないね」


含みのあるセリフを言い残し、エレは自分の教室へと去って行った。

私もオーンと2人、お互いの教室に向かって歩く。


なんか……気まずい。

悪い事はしていないはずなのに、なぜか悪い事をしている気分になる。

そんな気まずい雰囲気の中、オーンが呟いた。


「権利、権利か……」


「はぁっ」とため息をついたオーンが、のぞき込むように私の顔を見る。


「これだけは守ってほしい。2人きりの場所は、危険だから避ける。ミネルと会うのも ひと気の多いところで! できれば横で並ばず、離れて歩くのがいい」


真剣な顔をしたオーンが力強く言い放つ。

ハッ! なぜ横で並ばずに歩くのかまでは分からないけど、私は狙われてるんだ!!


「そっか、そうだよね。心配ありがとう」

「僕も行けそうなら、行くから」


ん? どこに??


エレと同様、謎のセリフを残したオーンが「こっちだから」と軽く手を振りつつ離れていく。


ん? だから、どこに??

お読みいただき、ありがとうございます。

次話、3/25(木)更新になります。

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