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Cafe Shelly

Cafe Shelly 私だからできること

作者: 日向ひなた

「ともみくん、これコピー取っておいてくれないか。人数分ね」

 課長にそう言われて、私は作業にとりかかる。

 一見すると普通の事務の仕事。けれど課長の目がどうしても気になる。課長だけじゃない、周りの目がとても気になる。私がミスをするんじゃないかって監視されているみたいで。

 たったこれだけの仕事なのに、どうしてそんなに気になるのか。私、今までそんなに大きなミスをしたことがないのに。ちょっとした失敗をやらかしたことはあるけれど、そのくらいはみんなやっている。なのにどうして。

 それは私の性格にある。私は今まで、自信を持って仕事をやったことがない。今やっているコピーの仕事だって、ちゃんと人数分そろっているのか、綴じ方はこれでいいのかって不安で仕方ない。課長に手渡してしまっても、その後何か言われるんじゃないかといつもビクビクしている。

 そんな私だから、会社の中で友達もいない。もちろん彼氏も。友達といえば高校生時代からつるんでいる仲間だけ。でも、その仲間も今ではそんなに会うことはない。こちらから声をかければ飲みに行くことはあるけれど、それも年に数回だし。私、考えたら孤独なのかも。

「はぁ」

 出てくるのはため息ばかり。

「今西さん、なんか表情暗いよ」

 営業の岡野さんにそう声をかけられた。

 岡野さんは私より年の離れた男性社員。優しい人で、いつも私たちのことを気遣ってくれる。未だに独身なのが不思議なくらい。

 私も結婚適齢期を過ぎて、いわゆるアラサーと言われるような年齢に差し掛かってきた。恋人はいない、とはいったものの、今まで二人ほど付き合った人はいる。短大時代に合コンで知り合った人は二ヶ月で終わった。この人は最初はいい感じだなと思ったけれど、最後はガツガツ私を求めてくるようになって。それに嫌気がさして自然と離れていった。

 もう一人は二年ほど前に、これも会社の同僚に義理で誘われた合コンで知り合った人。このとき、私の気持が寂しかったんだろうな。その隙間を埋めてくれるような感じで声をかけられ、付き合うようになった。けれど優しかったのは最初だけ。相手が私に慣れてくると、こちらも体を求めるだけのような感じになって。私は普通に恋人としてデートしたかったのに。

 この彼がそうしたくなかったのは、私の見た目にあるのかもしれない。私は自分の容姿に自信がない。ポチャっとした体型で顔だってかわいくない。また、お化粧もほとんどしないし。そんな私だけど、人並みに恋愛はしたいという願望は持っている。どこかにいい人いないかな。

「ほら、ボーッとしてないで。笑顔でいこうよ」

 岡野さん、こうやってよく私達をはげましてくれる。うん、笑顔でいかなきゃ。でも、こんな気持っていつまで続くのかな。そんなことを思いつつ、毎日が過ぎていく。

 そんなある日、一本の電話が鳴り響いた。

「えっ、書類を届けるんですか?」

 電話の相手は岡野さん。どうやら取引先との打ち合わせに必要な書類をうっかり忘れていったらしい。それを大至急届けて欲しいとのこと。たまたまその電話を受けたのが私だった。

「はい、たぶんその通りだったらわかると思います。じゃぁ急いで行きます」

 私の務めているのは小さな会社なので、他の人に頼むほど余裕はない。課長に事情を説明すると、すぐに行ってあげなさいとのこと。私は岡野さんから言われた書類を抱えて会社を小走りに飛び出した。

 届け先は喫茶店。街中にあるお店で、私も時々訪れる路地にある。その路地はパステル色のタイルで敷き詰められ、道の両端にはレンガでできた花壇がある。この季節はとても綺麗なお花が咲いている。

「えっと…あ、ここだ」

 指示されたお店を発見。ビルの二階にある喫茶店で、名前はカフェ・シェリー。こんなところに喫茶店があっただなんて、今まで気づかなかったな。

カラン、コロン、カラン

 ドアを開くと、コーヒーとクッキーの甘い香りがミックスされた、心地良い空気が私を包み込む。

「いらっしゃいませ」

 女性店員の声が心地よく響き渡る。お店の中を覗くと、真ん中の丸テーブルの席に岡野さんが取引先の人と一緒にいた。

「あ、今西さんこっちこっち」

 私に気づいた岡野さん。大きく手を振って私を招き入れる。私はちょっと恥ずかしがりながら岡野さんの元へ。

「あ、紹介します。こちらうちの会社で事務をやってくれている今西さん。可愛い子でしょ」

 岡野さんにそう言われて、私はさらに恥ずかしくなった。

「まぁどうせだからコーヒーでも飲んでいきなさい。マスター、彼女にシェリー・ブレンドお願いします」

「えっ、私すぐに帰らないと」

「大丈夫だよ。課長にはうまく言っておくから。コーヒーくらいいいだろう。それに、この店のシェリー・ブレンドは飲む価値があるからね」

 そこまで言われたら、飲んで帰らないわけにはいかない。取引先の人も快く私を迎え入れてくれるし。そう思って空いている席に座った。

 コーヒーがくるまで、私は黙って岡野さんの商談を見つめる。商談といってもほとんど雑談に近い。持ってきた資料も最後の確認のためだけのようだ。

 それにしても、岡野さんは人をのせるのがうまいな。ポンポンと魔法のように言葉が出てくる。声もいいし、なんかすごく心地いい。

「おまたせしました。シェリー・ブレンドです」

 女性の店員さんがコーヒーを運んでくれた。早くこれを飲んで会社に戻らなきゃ。

「今西さん、このコーヒーを飲んだら感想を聞かせてね」

 岡野さんは笑顔でそう言う。どうしてコーヒーを飲んだらわざわざ感想を言うんだろう? そう思いつつも早速コーヒーを口にしてみた。

 私はコーヒーに詳しくはないけれど、とてもいい香りなのは間違いない。猫舌だから、熱いのは苦手。だからほんの少ししか口に入れられなかった。

 んっ、なんかすごく甘い感じがする。コーヒーが甘いなんてどういうことだろう? そう思いながらも、フーフーしながらもう少し口に入れる。

「今西さんは熱いのは苦手かな?」

 私のやっていることを見て、岡野さんが笑顔でそう言う。私はこくりと首を縦に振る。

「どれ、かしてごらん」

 えっ、と思ったとたん、岡野さんは私のコーヒーを奪い取った。

「フーッ、フーッ」

 岡野さん、なんと私のコーヒーをフーフーして冷ましてくれる。まるで子どもを面倒をみるかのように。

「そろそろいいかな。はい、どうぞ」

「あ、ありがとうございます」

 なんだかすごく恥ずかしい。けれど、こんなふうに私に接してくれる人なんて始めて。実は私の理想は、こんな感じで私のことを甘えさせてくれる人。

「岡野さん、なんか今西さんと仲いいんですね」

「いやいや、そんな仲じゃないよ。でも、今西さんみたいな人が彼女だったらうれしいんだけどね」

 岡野さんの言うこと、どこまでがジョークかわからない。私はさらに照れながらコーヒーを口に運ぶ。

 ちょうどいい温度だ。これならもっと一気に飲むことができる。それにしても、砂糖を入れていないのにどうして甘く感じるんだろう。いや、甘いといっても砂糖の甘さじゃない。例えて言うならば、恋人同士の甘い関係。そんな感じがする。

「どんな味がしたかな?」

「え、えぇ。ここのコーヒーってなんだか甘いんですね」

 岡野さんに聞かれて、私はそう答えた。すると岡野さんはまた笑いながら私の方を見る。

「なるほど、ってことは今西さんは甘さを求めているんだ」

「えっ、ど、どうしてそれが?」

「ちなみにその甘さって、例えるとどんな甘さだった?」

「えっと…」

 ちょっと恥ずかしくて言えない。するとお客さんのほうがこう言ってくれた。

「年頃の女性なんだから、恋人同士の甘い関係ってのが欲しいのかな?」

 その言葉で私は顔を真っ赤にしてしまった。

「今西さん、図星かな? 私もそんな甘い関係が欲しいなぁ」

 岡野さん、そう言って残りのコーヒーを飲み干した。

「岡野さん、それってセクハラ発言ですよ」

 女性店員が岡野さんにそう言ってくれた。

「あちゃ、マイちゃん、こういうのもセクハラになるのか?」

「そうよ。ほら、とても困った顔をしてるじゃない。こういう無神経な発言もセクハラになっちゃうんだから気を付けないと」

「こりゃ困ったな。今西さん、そういうつもりはなかったんだよ。ゴメンな」

 私は黙って下を向いたまま。

「あちゃー、今西さんに嫌われちゃったかな? そうだ、今度お詫びに食事でもどうかな?」

「岡野さん、それもセクハラ、いやパワハラになっちゃいますよ。上の立場の人からそんなふうに誘われたら、断れないでしょ」

 店員のマイさんと呼ばれた女性がそうフォローしてくれる。

「あ、大丈夫です。岡野さん、悪気があったわけじゃないし」

 ふだんの岡野さんの様子を知っているし、私もなんとなく憧れている人だから悪い気はしない。だからついこんな返事をしてしまった。

「今度食事、誘ってくださいね」

「おぉっ、そうか。じゃぁいいところに連れていってあげるからね」

 デートじゃないけれど、男性からそうやって誘われるってなんか嬉しいな。

 ここで私の頭の中に一つ疑問が湧いてきた。

「どうして甘さを求めているってわかったんだろう」

 ついぼそぼそっとそんなことを口にした。すると店員のマイさんがこんな答えを。

「このシェリー・ブレンドはね、魔法がかかってるの」

「魔法!?」

 その言葉で私はパッと顔を上げた。

「今西さん、このシェリー・ブレンドは飲んだ人が今欲しいと思っている味がするんだよ」

 岡野さんが続けて解説。私は残りのコーヒーをしげしげと見つめた。

 今欲しいと思っている味。それが甘さ。私は誰かに甘えたい。甘えさせてくれる恋人が欲しい。そんな希望だけは持っている。

 けれど現実はそう甘くない。そもそも、こんなポチャっとした体型の自分に自信がないネガティブな人間を好きになってくれるような人なんていない。そう思うと我ながら悲しくなってくる。

「甘い恋、私もしてみたいよなぁ」

 そう口にしたのは岡野さん。

「岡野さんが未だに独身ってのが不思議なんですよねー」

 取引先の人が笑いながらそういう。

「だろう。私も自分で不思議なんだよなぁ。こんないい男なのに」

 岡野さん流のジョークで、いつもこんな感じで回りを笑わせてくれる。けれどそこに本音が入っているなって感じることもできる。

「あ、そうそう。どうせだから今西さんにも見てもらおうかな」

 そう言って岡野さんはさっき持ってきた資料から何やら取り出した。

「これ、こちらの会社と進めようとしているプロジェクトでね。女性ターゲットとなる新商品を開発しようとしているんだよ。ちょっと意見を聞かせてくれないかな?」

「えっ、私がですか?」

 会社では企画に対して意見を聞かれるなんてことはない。初めてのことにちょっとドキドキ。

 手渡された企画書を読み始める。へぇ、ターゲットは私みたいな年代の独身女性か。リサーチはちゃんとしているんだな。アンケートとかも掲載されているし。けれど、読んでいてちょっと疲れる。まず用語がわかりにくい。そして文章が硬い。また、一文も長々と書かれているので読みづらい。せっかくの内容なのに、いいところが伝わりにくい。そんな印象を持った。

「あの…失礼を承知でお伝えしてもいいですか?」

「もちろん。何か気づいたかな?」

 私は読んで思ったことを一つ一つ指摘をしてみた。そのときの岡野さんの表情が、さっきまでのおちゃらけて笑っていたものとは異なり真剣なのが受け取られた。

「なるほどねぇ。私達はついこれが当たり前だと思っていたな。今西さんからはそう思えたのか…ふぅむ…こりゃ早速書きなおさないとなぁ」

 ここで私はふとこんなことをひらめいた。

「あの…ご迷惑でなければ私がそれをやりましょうか? 言い出したのは私ですから」

「えっ、今西さんがやってくれるのかい?」

 今思えば、どうしてそんなセリフが言えたのかが不思議だった。きっと岡野さんの雰囲気がそう言わせたんだろう。結果的に、私がその修正作業を請け負うことに。もちろん岡野さんもフォローしてくれるということで、取引先の人も納得してくれたようだ。

「じゃぁ早速作業にとりかかろう。一緒に社に戻るとするか。マイちゃん、マスター、ごちそうさま。また来るね」

 岡野さんはそわそわして、すぐに帰ろうとした。私は残りのコーヒーを慌てて口にした。このとき、さっきとは違う味がした。というより頭の中である映像が思い浮かんだ。

 私、パソコンに向かって何かを作成するのに取り組んでいる。そしてそれを使って我社の上層部に堂々とプレゼンテーションしている。さながらビジネスウーマンって感じ。こんなのいいな。なんかかっこいい。

 でも私は一介の事務員。しかもミスを恐れてばかりのダメ社員。こんな私が…そう思ったが、シェリー・ブレンドは私が欲しがっているものの味がするって言ってたな。これも私が欲しがっているものなんだろうか。そんなことを思いつつ、岡野さんの後を追って社に戻った。

 社に戻ると、課長から遅かったなと文句を言われそうになった。が、ここは岡野さんがうまく私をフォローしてくれた。それどころか、今回の企画書に関して私の力が欲しいのでやらせて欲しいと積極的に口説いてくれる。じゃぁ仕方ない、ということで私は早速先ほどの企画書の手直しの作業にとりかかった。

 やり始めて気づいたこと。こういう仕事、私嫌いじゃないな。嫌いじゃないどころか、結構向いているかも。最初から企画を立てるのはさすがに難しいけれど、人の作ったものを添削して装飾をつけるっておもしろい。

 おかげでわずかな時間で企画書の再構成ができあがった。そして岡野さんへ社内メールで送信。すると、十分もしないうちに岡野さん私のところに飛んできた。

「今西さん、これすごいよ。とても読みやすくなったし、わかりやすくなった。これならみんな納得してくれるだろうなぁ」

 そう言われてすごくうれしい。こんな私でもお役に立てたんだ。ちょっと照れるけど、こうやって人に言われるのっていい気分。

「こりゃ商談が成立したら、フランス料理のフルコースだな」

 岡野さん、笑いながらも本気でそう言ってくれる。

「あら、岡野さん、ともみちゃんを口説いてるの?」

 私の横に座っている先輩の久美子さんがそんなことを言う。先輩といってもかなり年上で、仕事の上では信頼出来るんだけど口が軽いのが気になる人。

「そうなんだよ。今度一緒に食事する約束したからなぁ」

 えっ、そんなこと久美子さんに言ったら、私と岡野さんの関係が変なふうに広がっちゃうじゃない。

「えーっ、岡野さん本気で口説いてるんだ。ともみちゃんは手強いぞ」

 久美子さん、半分冗談のように言っているけれど目は真剣。

「ち、違いますって」

 私は慌てて否定をするけれど、久美子さんは間違いなく私と岡野さんのことを間違った情報で広げちゃうだろうなぁ。けれど岡野さん、こちらも真面目な顔でこんな言葉を。

「いや、本気で今西さんを口説くことにしたよ」

 いきなりの交際宣言? しかも会社の中で。私の胸はドキドキ。顔も真っ赤。はずかしいやらうれしいやら。

 けれど岡野さんの次に続く言葉はこうであった。

「今西さん、企画書の校正とかすごくうまいからなぁ。事務の仕事だけじゃもったいない。これからもこういった仕事を手伝ってもらえるよう、課長にかけあってこよう」

 あらっ、そっちなの。でも当然だよね。まさか、会社の中で堂々と女性を口説く宣言なんかするはずがない。とはいっても、私の仕事が認められたってうれしさはある。

 で、岡野さんは本気で私に仕事を手伝ってもらえるよう課長にかけあっている。私の仕事といっても、特にこれって決まっているわけじゃないし。雑務ばっかりだったから、課長もそんなに時間をかけないのならという条件であっさりOKがとれた。

「よっし、じゃぁ明日早速別の企画会議があるから。今西さん、その段階から入ってくれるかな?」

「はい、わかりました」

 なんだかうれしい。よし、明日から頑張るぞ。

 このとき、カフェ・シェリーで思い描いた映像がまた頭の中に浮かんできた。パソコンに向かって何かを作成し、そしてプレゼンしている私。今までこんな仕事をしたいと思ったことはなかった。単なる事務の仕事をして、そのうち誰かと結婚して、平凡な家庭を作って。そんなことしか考えていなかった私。それが、岡野さんにほめられて気がついたら企画会議に出るようになるなんて。

 でも、私そんな世界でやっていけるかしら。突然不安が襲ってきた。その夜、私はなかなか眠れなかった。不安と興奮、両方が入り混じった感覚。おかげでどんよりとした目で出社することに。

「今西さん、おはよう。今日は宜しく頼むよ。十時から会議だからね」

「は、はい」

 朝イチで待ち構えていたのは、私とは対照的にやたらと張り切っている岡野さん。なんかいつもより元気だなぁ。

 そして会議の時間。緊張してその席に着く。目の前には岡野さんと営業部長、取引先の課長と担当、さらには我社の専務。そんな中に私がぽつんと座っている。明らかに場違い。

「どうしてともみくんがいるの?」

 専務が不思議そうな顔をしている。そりゃそうだ。今まで単なる事務しかやっていない女性がここにいるんだから。それについては岡野さんが説明してくれた。

「なるほどね。まぁ女性の視点ってのも必要か。何か気づいたら、遠慮なく発言してくれたまえ」

 遠慮無く、なんて言われても発言ができるわけない。結局一言もしゃべらずに会議は終了。最後にこんな言葉が岡野さんから出てきた。

「じゃぁ、この企画に関しては今西さんに企画書を作成してもらいますから」

 えっ、私が!? まぁそのために呼ばれたのは確かなんだから。ちょっと不安な私に、岡野さんは小声でこんなふうに言ってくれた。

「大丈夫、このまえと同じように原案は私がつくるから。それを今西さんが装飾してくれればいいよ」

 よかった、イチから企画書を作るのはさすがに無理だもんなぁ。

「お昼でも一緒に食べながらどうかな?」

 岡野さんの誘い、断る意味は無い。

「はい、お願いします」

 ちょっとウキウキ。お昼が来るのが楽しみ。私はお昼ごはんはいつもお弁当を作ってくるのだが。今日に限っては朝ぼんやりしていたので外で食べようと思っていたところだった。

 そしてお昼。

「今西さん、外に出ようか」

「はい」

 そうして連れて行ってもらったのは、回転寿司のお店。お昼からこんなところでって初めてだ。

「じゃぁ早速だけど」

 岡野さんはイカとマグロをサッととって、書類を広げた。私は好物のエンガワをとったけれど、それには手を付けず書類に目を通すことに。

「…っとまぁこんな感じでまとめてもらいたいんだけど。

 あとの装飾は今西さんにまかせるよ」

「はい、わかりました」

 説明時間は多分五分くらいだったんだろうけど、好物を目の前にするとこの時間がとても長く感じた。とりあえず書類のイメージは湧いてきた。あとはこれを実際に作成するだけ。

「さ、食べようか。今日は私がおごるから、遠慮なく食べていいよ」

「ありがとうございます」

 岡野さんも仕事の顔からにこやかな笑顔に変わった。

「今西さんはお寿司は何が好きかな?」

「はい、エンガワとサーモンが好きです」

「そうか、じゃぁ私もそれを食べようかな」

 なんか私の好物にあわせてくれるなんてうれしいな。

「私はね、ハマチとタイが好きなんだよね。よかったら一つずつ交換しないか? どうせなら沢山の種類を食べられたほうがいいだろう」

 そう言って岡野さん、私の皿に自分のものを一貫置き、私の皿のものを一貫取っていった。こういうの、したかったんだよね。

 岡野さん、年齢は離れているけれど私のことをどう思っているんだろう? このとき、あらためて岡野さんのことを意識してしまった。なんだか胸が熱くなる。そして心臓がドキドキしている。これ、もしかしたら…。

 午後からは企画書の作成にとりかかる。でも、時折思い出すのは岡野さんの顔。思い出してはため息。そしてまた企画書の作成。

 いけないなぁ、こんなことじゃ。とにかく目の前のことに集中しなきゃ。岡野さんの喜ぶ顔を見たい。その一心で企画書に取り組む。夕方にはなんとかできて、岡野さんに提出。

「おっ、待ってました! どれどれ…うん、思った以上の出来だ。こんな仕事は今西さんにしかできないなぁ」

 そう言われた時、岡野さんは私の頭をヨシヨシしてくれた。このとき、またドキッとした。もうこれは間違いない。私、岡野さんのことを…。

 この日の夜もまた眠れなかった。すぐに頭によぎるのは岡野さんのこと。あー、ダメっ。でも、こんな私じゃ釣り合わないし。もっとダイエットしておけばよかった。お化粧だってほとんどしないし。そんな悶々とした一夜を過ごした。

 翌日は土曜日で会社はお休み。さて、何をして過ごそうかな。このとき頭に思い浮かんだのは岡野さんの顔。なんだか無性に会いたくなったな。でも、岡野さんのところに行くわけにはいかないし。プライベートのことはほとんど知らないんだよね。会社以外でのことで唯一知っているのは…あの喫茶店だ。

 何もない土日は私は朝寝坊で遅くまで寝ている。けれど今日は岡野さんのことを思ったら体が自然と起きてしまった。

 早くあの喫茶店に行きたい。その一心で早く身支度。でも、そんなに朝早く行って開いているのかしら? といっても、時計はもう九時を回っている。

 あの通りに行くと、道には喫茶店カフェ・シェリーの看板がすでに立っている。ということは、もうオープンしているんだ。足取りは自然と軽やかに。そして軽快にその扉を開く。

カラン、コロン、カラン

「いらっしゃいませ」

 あのマイさんという店員さんの声が私を出迎えてくれた。少し遅れて低くて渋い声で「いらっしゃいませ」が。これはカウンターにいるこのお店のマスターの声だ。

「こちらにどうぞ」

 店員さんは窓際の席に案内してくれる。なんかこの席、安らぐ気がするなぁ。

「あれ、この前岡野さんといっしょにいらした方ですよね?」

 マイさんの方からそう声をかけてくれた。

「はい、同じ会社のものです」

「岡野さん、お調子者だからあまり考えずにいろいろと言っちゃうでしょ」

 岡野さん、やはりこのお店の常連さんなんだ。

「いえ、結構いい人ですよ。おかげで私、岡野さんのお仕事を手伝うことになりました」

「わぁ、そうなんだ。どんなお仕事?」

「はい、企画書の作成の仕事なんです。私が作成すると見やすくなるって言われて」

「すごーい、才能が認められたんですね」

 あらためてそう言われて、ちょっと照れくさかった。けれど、私のことを認めてくれたという事実がすごくうれしい。

 マイさん、とても話しやすい人だな。ここで勇気を持ってこんな質問をしてみた。

「岡野さんって、このお店ではどういう人なんですか?」

 なんか変な質問だな。言いながらそう思ったが、マイさんはちょっと考えてこんな答えをしてくれた。

「そうですね、なんか周りを明るくしてくれる人かな。ちょっとおちゃらけたところもあるけれど、考え方とか物の見方とかがしっかりしているから、私達も勉強になりますよ」

 私が思っている印象通りだ。

「そういえばこの前食事に誘われてたけど。もう行ったんですか?」

「はい、昨日企画書の打ち合わせを兼ねてお寿司を食べに。お寿司といっても回転寿司ですけど」

「岡野さんらしいなぁ。もうちょっと気の利いたところに連れて行ってあげればいいのに。あ、まだお水も持ってきてなかったですね」

 マイさんはあわててお水を取りに行った。その間、私はメニューを眺めた。まっさきに目に入ったのはこの文字。

「今よりも幸せになりたいあなたへ」

 これはこの前私が飲んだシェリー・ブレンドの説明にそう書いてある。

「はい、どうぞ」

 マイさんがお水を持ってきたときに、この言葉の意味を聞いてみた。

「シェリー・ブレンドって飲んだ人の望んだものの味がするって言ったでしょ。そのおかげで、自分が今何を欲しがっているかがわかるから、求めていることを明確にできちゃうの。そこに気づけば、あらためて自分がなにをすればいいかがわかるのよ」

 なるほど、だから幸せに向かって行くことができるんだ。

 私って、岡野さんの何を求めているんだろう。ふとそれが知りたくなった。

「じゃぁ、これをお願いします」

「はい、かしこまりました」

 シェリー・ブレンドを飲むことで、岡野さんへの気持がはっきりするかもしれない。と同時に不安もある。ひょっとしたら私の気持は、私が期待しているようなものじゃないかもしれない。そうだったらどうしよう。

 前回飲んだ時は甘く感じた。これは甘い恋がしたいという私の願望の現れだった。もっとかわいがってもらいたい。あーんとかされて、優しくキスしてもらいたい。会っているときはイチャイチャしていたい。そんな気持ちを抱きながらシェリー・ブレンドが届くのを心待ちにした。

「お待たせしました。飲んだらぜひ感想を聞かせてね」

 私は恐る恐るカップに手を伸ばし、その飲み物を口にふくもうとした。が、私って猫舌なのよね。

「どれ、かしてごらん」

 このとき、この前の岡野さんの言葉を突然思い出した。岡野さん、私がシェリー・ブレンドを飲むのを躊躇していたら、突然カップを持ってフーフーしてくれたんだった。

 恋人にこんなふうにしてもらいたかった。こんなふうにして甘えたかった。私のことを可愛がってくれる人が欲しかった。岡野さん、私のことをどう思っているんだろう?

「どうしたの?」

 カップを持ったまま動きが止まっている私を見て、マイさんが心配そうに聞いてくる。

「あ、ごめんなさい。私、猫舌で熱いのが飲めなくて」

「そうなんだ。慌てなくていいからね。でも、何か思いつめてたような気がして」

 私は一旦カップを置いて、思い切って今の胸の内をマイさんに話してみた。岡野さんのこと、とても気になってしょうがない。ステキな人だなとは思っていたけれど、年も離れているし、そんな感情を抱くなんて今まで思いもしなかったってことを。

 マイさん、少し考えてる。

「マスター、ちょっといいかな?」

 マイさん、マスターを呼んで何やら話し始めた。マスターは大きくうなずいて私のところへやってきた。

「今西さん、でしたよね。一つ質問してもいいかな?」

 マスターってなんだか雰囲気が岡野さんに似ているな。とても話しやすそうな人。

「はい、なんでしょう?」

「今、自信を持っているものってあるかな?」

 マスターの質問に、私はちょっと困惑してしまった。今自信を持っているもの。私ってもともと自信なんてない。ちょっと太ってるし、お化粧もしないし、女としての魅力はない。仕事も才能があるわけじゃないし。あ、でも今任されている企画書の作成。これなら少しは自信があるかな。そのことをマスターに話してみた。

「その自信、どこからきたかな?」

「どこから…やはり岡野さんに認めてもらえたから、かな」

「じゃぁ、これからどんな仕事をしてみたい?」

 このとき、前回ここに来たときに見たあの映像を思い出した。パソコンに向かって何かを作成するのに取り組んでいる。そしてそれを使って我社の上層部に堂々とプレゼンテーションしている。こんな仕事、憧れる。この前までは憧れだったけれど、気がついたらそれが現実になりつつある。そのことをマスターに伝えてみた。

「なるほど、なかなかかっこいい姿ですね。ところで、それは誰のためにやってあげたいって思いましたか?」

 誰のため。真っ先に浮かんだのは岡野さん。私、岡野さんのために仕事がしたい。だから岡野さんからお願いされたことは一生懸命やりたい。これは誰にも渡したくない。私だけの仕事。そう、私にしかできない仕事。

 これを話そうか一瞬迷った。けれどマイさんやマスターなら信じされそう。それを思い切って打ち明けた。

「岡野さんのため、ですね。岡野さんのために、今西さんしかできないこと、今西さんだからできることをやってあげよう。そう思っているんだね」

「はい」

 自信を持って首を縦に振った。

「今西さん、岡野さんのこと好きなんだね」

「はい」

 ちょっと恥ずかしかったけれど、これも素直に返事ができた。

「ところで、どうして岡野さんは今西さんにそんな仕事をお願いしてきたんだろうね?」

 あらためて聞かれると考えてしまう。どうして私だったんだろう。たまたま私が企画書の提案をしたから。そして、それをやりますって言ったから。

 そうは思いたくない。岡野さんも私のことを…そう思いたい。けれどそう思うほど自信がない。

私が下を向いて答えを躊躇していると、マスターはにこりと笑ってこんなことを言ってくれた。

「岡野さん、以前こんなことを言っていましたよ。マスター、今すごく気になる子がいるんだけど。控えめで、シャイで、とてもかわいらしくて。もっと仲良くなりたいんだけどどうしたらいいかって」

 えっ!? 私は思わず顔をあげた。マスターの言葉は更に続く。

「そのとき、岡野さんがシェリー・ブレンドを飲んで出した答えがあるんです。それが、彼女に自信を付けさせてあげる事。何か任せられる仕事を見つけてあげる事。自分にしかできないことを見つけてあげれば、そこからもっと輝けるんじゃないかって。彼女が自信を持っていけるようになれば、その姿を見ることが出来れば他には何もいらないって」

 私はその言葉を聞いて涙が出てきた。岡野さん、私のことをそんな風に思っていてくれていたんだ。

 私、岡野さんのためにもっと一生懸命になりたい。そしてもっと岡野さんの役に立ちたい。私…私、岡野さんのことが好き、大好き。

 潤んだ目をぬぐって、私は顔を上げた。

「さて、今西さん。これからどうしますか?」

 どうする…ここで目に入ったのはシェリー・ブレンド。私はそれを手に取る。もう飲み頃の温度になっている。私は少し多めにシェリー・ブレンドを口に含んだ。そしてゆっくり目を閉じる。シェリー・ブレンドは私に何を味あわせてくれるのだろう。その期待を持ちながら、下の上でその味を感じてみる。

 まず思ったのが、前回とは違ってキリッとした、しゃきっとした感覚。目が覚めるような思い。バリバリと仕事をこなしている私。以前感じた、キャリアウーマンのような感覚。思わず背筋が伸びた。

 まずは岡野さんのためにも、今からの仕事を私なりにこなしていかないと。私ができることをとにかくしっかりとやっていくこと。うん、やるぞ。

 だが、その奥にもう一つ何か別の感覚もある。これは何? 私は無意識に、もう一回シェリー・ブレンドを口に運んでいた。その感覚が知りたくて。

 次に私に襲ってきたのは、最初にシェリー・ブレンドを飲んだ時に感じたあの甘さ。だがあのときとは大きな違いがある。その甘さの正体がわかった。それは岡野さん。岡野さんが私に甘さを与えてくれる。私を優しく包み込んで、可愛がってくれているその姿。これがあの甘さの正体なんだ。岡野さん、仕事をしたご褒美に私を甘えさせてくれる。そんな姿が頭の中でイメージできた。

「何か感じましたか?」

 マスターの声で、夢の世界から現実に戻された感じがした。だがそれはいい目覚めの朝のような感覚。

「はい、二つのことがわかりました。一つは、今岡野さんから与えられた仕事。これをこなしていくこと。それが岡野さんの気持に応えることだって。そしてもうひとつは…」

 私はここでちょっとはにかんでしまった。だって、自分の裏側にある気持ちをさらけ出すことになっちゃうから。けれどマスターになら話せる感じがする。いや、話してみたい。マスターは笑顔で私の言葉を待っていてくれる。うん、大丈夫。

「もうひとつは、成果を出したら岡野さんにおもいっきり甘えてみたい。ご褒美に甘えさせて欲しい。そんな感覚でした」

「そうか、今西さんは岡野さんに甘えてみたいんですね。それ、いいと思いますよ。そのためには、それだけの成果を出さないといけないということなのかな?」

 そうだ、単に甘えるだけじゃダメ。甘えさせてくれるほどの成果を出さないと。

「はい。私にできること、私だからできることを精一杯やってみたいと思います」

 マスターはにこやかに首を縦に振る。

「じゃぁ、そんな決意をした今西さんに一ついい事を教えてあげましょう」

 なんだろう、いいことって? 私は黙ってマスターの言葉を待った。マスター、にっこり笑って私にこんなことを教えてくれた。

「欲しければ、まずは与えよ。岡野さんに甘えたければ、単にそれを要求するのではなくこちらからそれに見合うようなものを与えること。今回であれば、今西さんができることをしっかりと与えること、ですね」

「はい、わかりました」

 欲しければまずは与えよ、か。今まで私は欲しい、欲しいとしか思っていなかった。けれど誰も私にそれを与えてくれなかった。それはそうだ。こちらから与えることなんか考えてもいなかったから。

 けれど今は違う。私ができること、私だからできることをまずは精一杯やってみる。そうしたら岡野さん、私の要望を叶えてくれそうな気がする。

 カフェ・シェリーに来てよかった。なんだか自信がついたな。そして岡野さんの気持もわかったし。

カラン・コロン・カラン

 来客を告げるカウベルの音が鳴り響いた。

「いらっしゃいませ」

 マイさんの声が店内に響く。

「マイちゃん、こんにちは」

 えっ、その声は。扉の方を振り向くと、私は思わず驚いてしまった。そこに立っているのは岡野さん。

「あれっ、今西さんじゃない。来てたんだ」

「こ、こんにちは」

 思わず緊張。けれど心の中は喜びで満ち溢れている。岡野さん、迷わず私の隣に座った。

「今西さんもこのお店、気に入ってくれたのかな?」

「は、はい」

 岡野さん、にこりと笑顔で私に話しかけてくる。とてもうれしい。けれど、なんだか照れるなぁ。

「どうしたの、なんかいつもと違う感じだよ。でも、今西さんって私服姿もかわいいよね」

「岡野さん、ちゃんと相手を見て言わないとセクハラ発言ですよ」

 マイさんがお水を持ってきてそう言う。

「だれそれ構わず言ってないよ。今西さんだから言うんだよ」

 マイさん、岡野さんの言葉にちょっと呆れ顔。けれど私はうれしい。岡野さん、私のことを思ってくれているからこそ、そう言ってくれているんだ。

「岡野さん、ちょっと」

 マスターがそう呼んでいる。岡野さんはマスターの方へと足を向けた。そして何やらごちょごちょ話をしている。そのときの岡野さんの表情、驚いたり照れたり、そして最後は何かを決意したような、そんな感じだった。そして私のところへやってきて…

「今西さん、ちょうどいい機会だから。少し話を聞いてもらってもいいかな?」

「は、はい」

 岡野さん、私の方を向いて真剣な目をしている。

「ここのマスター、いろいろな話をしてくれるんだよ。前にね、こんな言葉をもらった。欲しければまずは与えよって」

 私と同じだ。

「だからね、私はいろいろと与えようと思ったんだ。好きになった人がもっと輝くために、どうしたらいいかと思って。そのチャンスを与えたら、見事に開花した。これからもっともっと、その能力は花開くだろう」

 それって、私? 岡野さん、ちょっと間をおいてさらに話を続けた。

「けれどそれだけじゃダメなんだ。やはり肝心なこともこちらから与えないと。だから、勇気を出して与えることにするよ」

 私の胸はドキドキ。岡野さんから目がはずせない。

「今西さん、好きです」

 時間が止まった。そんな感覚。私は岡野さんと見つめ合う。そして私は一言返事。

「はい」

 そう言って首を縦に振った。その言葉を聞いて、岡野さんは私の両手をとって一言。

「ありがとう」

 また時間が止まった。二人の間にこれ以上言葉はいらない。私、岡野さんの恋人になれたんだ。そう思ったら嬉しさで涙があふれてきた。

「岡野さん、これ以上女性を泣かせちゃダメですよ。今西さん、おめでとう」

 マイさんが笑顔で祝福してくれる。私は涙目ながらも同じように笑顔になれた。

 岡野さんと私、歳の差カップルではある。でも、年齢差はまったく感じない。それどころか、これを望んでいたといってもいいくらい。岡野さんは私を甘えさせてくれる。だからといってそれだけではない。仕事の時にはビシッと指導をしてくれるし。私は私ができることの能力を伸ばすこともできている。

 そして今日、私はひとつの舞台に立っている。社長を始め役員、そして部課長の人たちを前に営業プレゼンを行うことになった。本来は岡野さんの役目なのだが、ぜひここまでやってほしいということだった。

 緊張はしている。けれど、シェリー・ブレンドを岡野さんがポットに入れて飲ませてくれたおかげで、私の望む未来がまた一つ見えた。

「じゃぁ、いきます」

「うん、期待しているよ。終わったらお寿司食べに行こうな」

「はい」

 私だからできること、私にしかできないこと。それは今の仕事と、そして岡野さんの役に立つこと。その希望を胸に、私は一つ上のステージに登っている。

 欲しければまずは与えよ。今、私はちゃんと与えられているだろうか。いや、与えられているに違いない。だからこそ、私は岡野さんから与えてもらっているんだ。仕事と、そしてとびっきりの愛情を。


<私だからできること 完>

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