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最強部族の花嫁事情  作者: 埴輪小鳥
第二章
17/26

15

とうとうやってきた遠征訓練の日。

遠征訓練では、4、5人に別れた計7グループが、ルート別に森の奥地へと赴く。基本的にグループは、春、秋の騎士選抜試験組、騎士養成学校組、兵団組で別れているため、秋の騎士選抜試験組は同じグループになった。グループの監督として第二騎士団の騎士の教官が2人ずつ付く。

日程としては、最初の二日間弱で森の奥地にあるポイントまで行き、残り二日間で森から脱出することになっている。ただし、二日目、教官たちは全てのグループが目標地点に着くと別行動をとる。夕方の限られた時間で森のさらに奥地に赴くのだ。なぜなら、単に三日目からの騎士見習いたちへのプレッシャーである。三日目に騎士見習いたちが移動し始めた頃合を見計らって、騎士たちも移動を開始する。もし、教官たちよりも騎士見習いの方がゴールするのが遅かった場合、騎士見習いたちのなけなしの給料の一部が、教官たちの酒代に使われるのだった。これは伝統だから仕方ないと教官の一人が堂々と言っていた。


カイルたちのグループは、二日目の夕方まで順調に進んでいた。特に問題を起こすことなく、教官たちと別れる。

カイルたちは、森の中の少し開けた場所に拠点を構えることにした。そして、レイとマティは木の枝を拾ってくる係、カイルとハルは食料を見つけてくる係、サーラは拠点に残る係、と役割分担を決めると、さっそく仕事に取り掛かった。

レイとはあれから気まずいままである。みんなも気を使って、別々の仕事を用意してくれていた。しかし、それでもだいぶ疲れが溜まりつつある。宿舎に入ってから一番仲が良かったレイと仲違いしているのは、カイルにとってかなりのストレスになっていた。

夕食は、近くにあった川の魚である。風魔法を使えば、簡単に魚を陸に上げることができた。塩だけの味付けだけれど、とても美味しかった。あとは携帯食料である。パサついた食感に口の水分を奪っていく感覚に、後一日これを食べなければいけないのかと嫌になる。

夕食を終えると、周りはもうすでに暗くなっていた。見張りの時間を決めて就寝することにする。


最初のレイの見張り時間から少し経ってみんなの寝息が聞こえてきたときに、カイルは静かに身を起こした。レイはぼんやりと火を見ている。

カイルは意を決してレイに話しかけた。


「レイ、ちょっと話があるんだけど」


「そろそろだと思ってたぜ」


火を見たままレイは呟く。それからしばらく聞こえたのは、火のパチパチと弾ける音だけだった。


「何が聞きたい?」


そう話しかけられたカイルは、まず気になっていたことを聞く。


「じゃあ、まず聖女って何?」


レイは虚をつかれたように一瞬振り返った後、すぐに気を取り直したように火に視線を戻した。


「聖女っていうのは、広義で言えば、神の力を持っていた部族の血を、濃く受け継いだ女性のことだな。ああ、まずその部族というのが、限られた上位貴族にしか伝わっていなくて、それはすごい部族だったらしい。全ての魔法が使えたとか。

その中でも凄いのが癒しの力だ。時に命が消えてしまうような傷や病でも、命を失ってしまう前ならたちどころに治してしまうらしい。生命を司るのは神の力だ。俺たちには使えない。だから、俺らはその部族を神の部族という。

その神の部族の女性が王族の花嫁として各国に嫁入りしていたのは市井でも有名な話だ。天使とか、聖女だとか言われてな。どこも一度は天使だとか聖女だとかが王家に嫁入りしたって話があるはずだぜ。

で、話を戻すけど、現在の聖女っていうのは結局、神の部族程じゃないけど、神の部族の容姿の特徴が一部に現れた癒しの力を使える女性、ということになる。

なぜ女性しかその特徴が現れないのかはわからないが、そこはストーリー性じゃないか?王族に迎え入れるなら女の方が都合がいいし」


最後の方はどこか適当に言うレイに、カイルはなるほどと相槌をうつ。神の部族というのは、十中八九マヤブミ族のことだろう。そして、神隠しで連れていかれた子どもの特徴と、昨日聞いてしまった会話を思い出すと、どうしても嫌な想像をしてしまった。

その想像をそのままレイに伝えてしまったら、今までと関係が変わってしまうような気がして、手が震える。それを抑えるように握りしめて、ゆっくりと口を開いた。


「…妹さんは、どうしてあんな状態に?」


レイはそれを聞いて息をゆっくりと吐き出すと、徐に口を開いた。

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