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最強部族の花嫁事情  作者: 埴輪小鳥
第二章
14/26

12

「第二騎士団も、遠征するんですか?」


騎士見習いの誰かが驚いたようにハーギルスに尋ねた。ハーギルスはニヤリと笑って、黒板にこの国の地図を貼りだした。


「ああ。第二騎士団の主な仕事は王族の警護および城内の警備だが、第二騎士団も2ヶ月に1回遠征に行く。遠征といっても、この王都の近くにあるトゥルギスの森までだ。森には魔物が発生しやすい。この森も例に漏れずそうだ。ただ、2ヶ月に1回演習ついでに魔物の掃討もしているから、比較的弱い魔物しかいない。騎士見習いの演習にはもってこいの場所なんだ」


そう言うとさっきまでの笑みを消して、真剣な表情で騎士見習いたちの顔を見回した。


「ただ、それでも偶に、強い魔物が出たり注意散漫になって崖から落ちたりして、命を落としてしまう騎士見習いもいる。これは遊びではなく、訓練だ。それを肝に銘じるように」


騎士見習いたちはそれを聞いて深く頷いた。それを確認したハーギルスは、今度はカレンダーを取り出して黒板に貼り付けた。


「遠征訓練はこれから二週間後に始まる。詳しいことは一週間後に説明する」


そう言うと、いつものニヤリとした笑みに変わった。


「…さて、君たちはこの三ヶ月、よく頑張った。というわけで、明日から遠征の一週間前までの一週間を休みとする。自分の家に帰るなり、宿舎に残って訓練するなり、好きに過ごしていい」


その言葉の一泊後には、騎士見習いたちの雄叫びが響き渡った。


ちなみに、秋の騎士選抜試験で騎士見習いになった5人以外の騎士見習いは、春の騎士選抜試験組の4人、騎士養成学校組の18人、兵団からスカウトされた組の5人がいる。

秋の騎士選抜試験組は、冬までの半年間と1年空けた春から夏までの半年間、第二騎士団預かりとなる。空いた一年間は、王都を警備している騎士団預かりとなる。春の騎士選抜試験組と兵団組は、一年間を第二騎士団、次の一年間を王都を警備している騎士団の預かりとなる。そして、騎士養成学校組は、在学中の残り半年を第二騎士団預かりとなる。その後はどこも騎士昇格試験を受け、本物の騎士になるのである。


秋の騎士選抜試験組は、講義が終わった後食堂に集まって昼食を食べていた。カイルは明日から一週間のみんなの予定を聞いてみる。


「俺は家に帰ろうと思ってるぜ。結局手紙出したのに返ってこなかったし」


そう言ったのはハルことハルミスだった。結局三ヶ月経った今でも親と和解していないらしい。それでもハルはケロリとしている。


「僕も一旦村に帰ろうと思うよ」


ニコニコと笑いながら言うのはサーランドだった。みんなからサーラと呼ばれているサーランドは、話してみると可愛い弟系の男の子だった。誕生日的にはお兄さんなのだけれどそこは気にしない。


「俺は…たぶんずっと宿舎にいると…思う」


いつも口数が少ないのはマティことマティアスだ。彼は残留組らしい。

自分はどうしようと、みんなの話を聞きながら考えていると、そんなカイルの様子を見てレイが口を開いた。


「なんなら、カーラは俺の家来るか?魔物退治連れてってやるって前約束してただろ。聞いた感じじゃ、遠征中に魔物に遭遇するのは稀らしいし。もし遭遇しても大丈夫なように、訓練がてら小遣い稼ぎに行こうぜ」


思ってもみないレイの提案に、カイルは即座に頷いた。思えば、カイルは自分が育った村と王都しかほとんど知らない。まだ見ぬ景色に思いを馳せていると、そういえば、とハルが話し始めた。


「なんでも、最近広い地域で白系統の髪をした子どもや、赤系統の目をした子どもが神隠しにあってるらしいぜ」


白系統の髪に赤系統の目と聞いて、思わず肩がびくつく。それを不思議そうにハルは見たが、すぐに興味を自分が話していた噂話に戻した。


「毎回いなくなって村や街が大騒ぎになるんだけど、数日後にはひょっこりと姿を現すんだ。何があったのか聞いても、必ず覚えてないって答えるらしい。それに嘘を付いている風でもないから、一部じゃ天使に連れて行かれそうになって逃げ出してきたんだって噂されてる。だから記憶がないんだって」


そしてヒソヒソ話をするように顔を寄せてくる。


「その証拠に、何人かは実際に帰って来なかったらしいし」


ケイルの背筋を嫌な汗が伝った。

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