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プロローグ
その立派な屋敷の部屋の一室は、外観の煌びやかさからは考えられない程暗く沈んだ空気で満ちていた。
そこには、一人の美しい少女が寝かされていた。二年前から変わらない容姿をしていて、まるでその少女の周りだけ時間が止まってしまったかのようだった。
その少女の様子を見て、少女によく似た女性が、頬にかかった髪を払おうと手を伸ばすが、少女には触ることができない。薄い空気の壁がそれを阻んでいるのだ。女性は悲しげにその空気の壁をひとなですると、その手を隣の男性の手にゆっくりと重ねた。
「また空気の壁が薄くなったように思うわ。この壁が完全に無くなってしまったらこの子は…っ」
詰まった息は、段々と嗚咽に変わっていく。そんな女性の肩を男性が抱いて、励ますように肩を撫でた。
「大丈夫だ。今、秘密裏に探させている。あの、どんな病気や怪我でも、一瞬で癒してしまうという神の部族の末裔を…」