2 冒険者登録、そしてパーティ結成!
ギルド。冒険者を統括する機関であり、王国のみならずこの世界の様々な国に支部を持つ。
冒険者は国家に縛られず、依頼があればどこへでも赴くことも可能なのだ。
だがそれ故駆け出しの冒険者は消耗品のように扱われる傾向もある。
俺のいるこの街 ドゥベリアにも支部があり、ここで登録を済ませることで晴れて冒険者になれるという訳だ。
俺は目の前の扉を開け、ゆっくりと建物の中へと足を踏み入れた。
「こ、ここがギルド……」
石造りの建物の中は広く、いくつもの机や椅子が並んでおり筋骨隆々の男性たちが食事や酒を楽しんでいた。
何人かの冒険者は俺のことに気が付いたが、すぐに視線を逸らした。
冒険者になりたい奴はいくらでもいるため俺みたいなやつは珍しくないんだろうな。
「どのようなご用件でしょうか?」
俺の元に、一人の女性が近づいて来た。
き、金髪美人だ。
「今日は冒険者になりたいと思ってこちらに来ました」
「なるほど、登録希望の方ですね? ではこちらに来ていただけますか??」
女性は表情を崩すことも無くなれた様子で受付の様な場所まで俺を案内した。
「ではまずあなたの適正を調べさせていただきます」
「適正ですか?」
「ええ。冒険者と言ってもその役割は様々です。ですのでパーティを組む際に望まれる職業の方を誘われるのですが、その際に必要などの職業に向いているのか適性を調べるのです」
「な、なるほど」
「……ではこちらに手を置いて頂けますか?」
なんだかそんなことも知らないのかって呆れられているような気がするが……、えっとここに手を置くんだな?
俺は女性が差し出した長方形の機械の様なものに手を置く。
すると目の前に俺の情報が浮かび上がったのだった。
────────────────────────────────
コウ 16歳
レベル 18
筋力 24
魔力 40
体力 32
適正 魔導士
スキル 輪廻転生 言語変換
────────────────────────────────
「なるほど、あなたの適正は魔導士のようですね」
「魔導士ですか……」
「魔導士は攻撃、防御、回復とパーティの重要な存在です。数も冒険者の中では少ないので運がいいかもしれませんね」
女性はそこで初めて笑みを浮かべた。どうやら本当に珍しい存在なんだろう。
それにしてもこれがステータスという奴なんだろうか?
この世界の平均がどうか分からないけど、これは特段良い数値という訳ではないんだろうな。
いや、これから頑張ればいいんだ! 俺の異世界ライフはこれから始まるんだから!!
それにしてもこのスキルって……
「……あの、スキル輪廻転生と言うのはどういうものなんでしょうか?」
「それは私も気になっていたんですが、このようなスキルは初めてなんですよ。この言語変換というのは別の言語が理解できるというものなんですけど……。スキルはいまだに全て解明されている訳ではないんです」
「そうなんですね」
女性は申し訳なさそうに答え、俺が手を置いていた物から出て来たプレートを手渡してきた。
「これは冒険者様が依頼を受ける際に必要になるものなので無くさないでくださいね」
「分かりました……、あ、そういえば」
出すのを忘れていた!
確かここにしまった筈……。
俺は制服の内ポケットに入れていたバルードさんからもらった紙を取り出し女性に手渡した。
「これは?」
「実は知り合いの方にギルドに行ったらこれを渡すように言われていて」
「では拝見しますね……、なるほど!」
女性は少し驚いたような表情を浮かべたが、すぐにその日一番の笑みを浮かべた。
え、何?! なんか急にそんな顔されると怖いんだが……。
「どうやらこれは王国騎士の方からの紹介状ですね! しかも登録料の銀貨1枚を負担するらしいですよ」
「ま、まじですか……」
いや、あの人どれだけ良い人なんだよ!
それよりも冒険者になるには金が必要だったのか……。
あの時バルードさんと知り合ってて助かった!!
「なぁ、あんた駆け出しの冒険者か??」
俺が全ての手続きを終え、晴れて冒険者となると背後から一人の男性が声をかけて来た。
「はい、さっき登録を終えた所ですね」
この人、俺より身長が少し高いし年齢も1、2歳上くらいか?
でも身に着けている防具にはいくつも傷がある。それなりに経験を積んでいるみたいだ。
「それなら丁度よかった! 実はこれまでパーティを組んでいた魔導士が辞めて困ってたんだ。さっき話聞いてたんだがあんた魔導士だろ?」
「そうらしいです。でも俺職業は魔導士ですけど魔法は使ったことないんですよね」
「それならこれから俺達が教えてやるよ。どうだ、俺達のパーティに入らないか?」
俺が悩んでいると、先ほどの受付の女性がこちらに声をかけて来た。
「待ってください。この方は先ほど冒険者になられた白級冒険者ですよ? あなた方は銅級冒険者じゃないですか。流石に2階級離れた人をパーティに入れるのは危険が」
確かさっき冒険者は白級、黒級、銅級、鉄級、銀級、金級、白金級の階級があるって説明されたな。
「ハハハハッ、大丈夫ですよ! 今回行くのは小鬼討伐ですし危険も少ないはずです」
「で、ですが」
「それに冒険者の掟は知っているでしょう?」
男性の言葉に受付の女性も言葉に詰まる。
冒険者の掟、それは自己責任。全ての行動は本人の責任で行う。
ギルドはその補佐をするに過ぎない……。
俺は先ほど説明されていたその言葉を思い出し、深く息を吸いこみ吐き出した。
「……俺はパーティを組みます」
「コウさん!?」
「心配してもらってありがたいです。でもこんなチャンス滅多にないと思うんです」
「……コウさんがそう仰るのなら」
女性も諦めたのかそれ以上は何も言わず、一度頭を下げ受付へと戻っていくのだった。
「それじゃあよろしくな! 俺はハーバーだ。お前はコウでいいのか?」
「あ、はい!」
「ハハハハッ、そんな堅苦しい言葉遣いやめろよな! これからは仲間なんだから!」
「……分かった」
「それじゃあ他の仲間を紹介するよ」
ハーバーは俺の肩に手を回し、椅子に腰かけている2人の男女の元へと連れて行く。
1人は青い髪が印象的な女性、腰の剣から剣士(ソーダ―)なのだろう。
もう1人の男性は180cmはあり、武器はその肉体と言ったところか?
「こいつはマリーナ。で、この筋肉ゴリラはナッシュベルだ」
「よろしくね」
「魔導士か、頼りにしているぞ!」
2人は俺に笑みを浮かべる。
ただ、2人は俺の服装に不思議そうな表情を浮かべた。
まぁそれも当然だろう。この世界でブレザーなんて来ているのは俺だけだ。
「この服はその、実家に伝わる物で……」
「……そ、そうなのね! うん、よく見るといいと思うわ!」
マリーナは自分の考えが知られたのに驚いたのか、取り繕うように笑顔を浮かべた。
これは早めに新しい服を買った方がいいかもしれないな。
「よし、それじゃあ紹介も終わったことだし早速依頼の件に移ろう」
依頼……、そうだ確か小鬼討伐の依頼があるって言ってたな。
「なぁハーバー、その依頼だけど白級の俺でもやれるのか?」
「まぁ全員白級なら厳しいだろうな。でも今回は俺達がいる。お前は俺達が危ない時に援護してくれればいい」
小鬼はファンタジーの世界だと最下級のモンスターだったはずだよな。
それなら俺でも何とかなるかも入れない……。
それに危なくなればハーバー達もいるんだ、心配はいらない!
「分かった。頑張るよ」
「おう、期待してるぜ魔導士!」
ハハハハハハッ!! ハーバーの言葉で全員から笑い声が起きるのだった。