1話 剣神と暗殺者
初連載です。
書き始めて間もないですので色々指摘していただいてもらえると助かります。
「私を暗殺しに来たなら、その殺気を完全に消さないとね」
少年が後ろから突き立てたナイフを左腕の人差し指と親指で軽く受け止め、右手で優雅に紅茶を飲んでいる女性がいた。
彼女は、このフィルマメント大陸の二大英雄の一人として剣神と呼ばれ、その腕は一太刀振れば次元すら斬ると噂されている。
彼女の名はレイラ=ロスベルク。
剣の神に愛され、今まで契約できた者は誰一人いないと言われていた聖剣七本、魔剣七本、系十四本をレイラは全て契約し、使役している。
「何故だ……。俺は完璧に気配を消していたはずだ……」
「うーん。お姉さん敏感だからね。殺気がほんの少しでも出てるとわかっちゃうの」
少年は、掴まれたナイフを抜こうとしているがビクとも動かない。
「さて、少年は誰の差し金で私を殺しに来たのかな?」
「誰が言うかよ。拷問されようが家族の事は教えない」
「そっか。うんうん、立派だ。偉い偉い」
レイラは右手に持っていたティーカップを置き、少年の頭を優しく撫でた。
「な、何しやがる!!」
「だって、自分が拷問されるかもって思ってるのに、それでも家族の事を言わないって言ったから、お姉さん感動しちゃった」
少年がレイラの言葉に呆気に取られていると、扉が開き、そこにはメイド姿の少女が立っていた。部屋を一望した後、メイドは「失礼します」と言い部屋に入ると、少年の方に足を向け進んだ。
触れられるぐらいの距離まで来るとナイフを掴んでいるレイラの方に口を開く。
「レイラ様、この子殺す?」
「ッ!!」
凄い殺気がメイドから少年に向けて放たれていた。
息が出来なくなるぐらいの緊張感に、少年は殺されると本能的に理解した。震えと涙が止まらない。今までは殺す側だったが、初めて殺される側の気持ちになり恐怖する。
「はいはい。フィン落ち着いて、殺しちゃダメだよ」
レイラはフィンと呼ばれたメイド服の少女に優しく微笑み、紅茶のお代わりを頼んだ。ブツブツ言っていたフィンだが、諦めたようにティーカップを持ち部屋から出て行く。
「ごめんね少年。彼女は私の所有する魔剣の一本で名を魔剣フィンスターニス。私は、略してフィンって呼んでる」
「こ、殺す……。殺してやる──」
ガクガクに震えながら涙目でレイラを殴りにかかるが、もちろん当たるわけもなく。椅子に足を掛け、机に頭から突っ込んでしまった。
「大丈夫!?」
「こ……ろし……てやる……」
「気を失ってるよ。とりあえずベッドに運ばないと」
大きな音を聞き付き、バタバタとフィンが戻ってくる。
「死んでる?」
「死んでないって。気絶しているだけだからベッドに運んであげて、私はここの掃除するから」
レイラが座っている椅子以外の家具は、少年が突っ込んだせいで乱雑しており酷い有様だ。
「分かった。レイラ様のベッドに運んでくる」
フィンは少年を軽々持ち上げ、お嬢様抱っこで部屋を出て行く。それを見届けた後、レイラは部屋の片付けを始めた。