罠の中の罠
第65話です!大変お待たせしました!その割には短めです。それではどうぞ!
僕は打倒カーマインを目標にある場所へたどり着く。ここは僕の通っていた高校。竜界なので外見は全て真っ赤だが、内装や見た目は色以外人間界のものと同様だった。
正門を飛び越えると同時に疑問に思うことがあった。
あの時感じた異様な気配が全く無く、とにかく静かなのだ。カーマインの性格上、不意打ちなどせず堂々と捻り潰しに来るはずだ。なぜか炎竜神に強い憎悪を持っているから、直接手を下さないと気が済まないだろう。
そう思い、見渡しのいいグラウンドの中央に立つ。
しばらく待つも何も起きない。僕はアドニスに任せたもう一つの場所の様子を確認しようとした矢先、頭の中へ声が届く。
『ダイチさん、もう片方の場所に現れました!これから予定通り交戦に移ります』
『よろしくお願い、アドニス。今からそっちに行く』
僕は全く焦る様子もなく、この場を飛び立った。
アドニスは屋根の上にいるカーマインと真っ向から対峙する。
「あいつ、じゃないのか。お前たちはどうしてあんなやつに肩入れをするのか理解ができんな」
視線をずらし、上の空のカーマイン。
「どうやら貴方は何か勘違いをしているようですね。ダイチさんに協力しているのはあなたと決着を、引導を渡すためです。貴方のような危険対象は見過ごすことはできません」
「そうか、じゃあ」
カーマインは振り向いて殺気立った雰囲気を醸し出し、アドニスをギロリと睨みつける。
アドニスに戦慄が走る。
「始めようか」
屋根の瓦を蹴り、右手の鉤爪をスタンバイして襲いかかる。
「グングニル!!」
アドニスがそう叫ぶと目の前から青白い光と共に、横になった状態の青い三又の槍が現れる。全体的に波のような模様が描かれており、三本指でもしっかり握れるように特殊な形をしている。
それを両手で掴んで、"ガキィ"と鳴って鉤爪を受け止めた。二匹ともジリジリと間合いを詰める。
「クク、戦闘向けではないにしろ竜神なだけあるか」
「あなたこそ、竜神じゃないくせに大層力が強いですね。ですが」
槍で鉤爪を弾き飛ばし構え直す。
「私の空中に入ったことを後悔することね!『呑尾蛇ノ輪!』」
アドニスは弧を描きながらカーマインの周囲を囲むように高速移動し始めた。水竜の飛ぶ速さは他とは比べ物にならないくらい速く、カーマインは一瞬見つけては見失う動作をひたすらに繰り返す。
そしてアドニスは360度全方位から槍の突きや薙ぎを繰り出す。
カーマインは反撃せず、鱗さえもえぐられ、切り傷が増え続ける。
(想像以上に大したことないですね。これほど動かないのもどこか不自然ですが、このまま攻めればきっと……)
と思った矢先、動きが徐々に遅くなっていくのに気づく。
「あ、あら?」
ついにはカーマインの前で止まってしまい、空中で海老反りになる。なんとか動こうとしてもキリキリと鳴るばかり。
「これは、糸!?」
ありえないくらい細いそれは、よく見ると体中に複雑に巻き付いており、一本一本鈍く光っていた。
「クハハ!かかったな、この俺を騙したお返しだ」
「くっ……これはやられましたね。テリトリーに入ってしまったのは私の方でしたか」
一緒に糸に絡まれている槍を見やると悔しそうな表情を浮かべる。
「俺をこの辺に来させたのはお前らだろ?だからあえてここで迎え撃つことにした。さっき決着がどうのこうの言ってたが、それは俺も同じだ。せいぜいあの世で悔やむんだな」
カーマインはそう言ってためらいもなく、アドニスの首筋に向かって鉤爪を振りかざす。
次の瞬間、下からいきなり数本の短剣が飛んでくる。カーマインは攻撃を中断し、短剣をひらりと躱す。
「クソッ、なんだ?」
今度は絶え間なく上空から数発の鉛玉が降り注ぐ。
これも簡単に見切りすぐ避けるが、同時に張り巡らせた糸の一部分を着火させる。
「燃えて消し炭になれ!」
火は瞬く間に広がり、アドニスへ糸を伝って段々と迫る。だが到達する前に下から黒い竜と上から黄色い竜が現れ、全て断ち切られた。
黄色い竜はガンスピンをしながら風変わりな銃を肩の上に乗せた。
「不意をつきたかったのですが、仕方ありませんね」
黒い竜は飛ばした短剣を手元へ引き寄せ、ノールックで掴み取った。
「きっと大丈夫だろ。俺らが力を合わせばなんとかなるさ!」
アドニスも解放された槍を手に取りカーマインへ向ける。
「貴方の敵は私一人ではありません。一筋縄で行くと思ったら大間違いですよ!」
三匹を前にして怖気付く様子は全くなく、むしろ逆であった。
「クク、面白い。貴様らのようなやつが増えれば増えるほど、俺の楽しみが増えるってもんだ!」
カーマインは全身を使い、翼を広げ、大きく見せた。
ここまで読んでいただきありがとうございました!ではまた。




