表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の希望  作者: 猫☆ライフ
66/71

措置

第61話です!長めです。少し性的描写があります。R-18ってことはないので大丈夫です。

それではどうぞ!

 僕は体がずぶ濡れのまま上がる。体を滴る水滴(海水)が床を伝って広がっていく。

 顔を上げると正面に男2人とその奥には鉄の扉。左右にはウェットスーツのような服や、数本の酸素ボンベなどスキューバダイビングで使用するセットが置かれている。

 どうやらここは更衣室のようだ。そして出入り口でもある。思ったよりも広く、ぎゅうぎゅうに詰めれば数十人は入る。


「ここじゃなんだし、ほら、これで体でも拭いてこっち来な」


 そう言って鉄の扉付近にある、プラスチック製の透明な棚から、バスタオルを取り出して僕に投げつけた。


「あ、ありがとうございます」


「それと!」


 僕に向かって人差し指でビシッと指す。


「敬語は要らない。俺らと対等とは認めないが話しづらいだろ?」


 扉を開けて出て行く男の後を追うようにしてもう1人出て行った。

 そもそもバスタオルなんて僕にとって必要ない。体温を一気に上げて体を乾かす。

 僕も扉を開け、中へ入る。そこは広い居住空間だった。真ん中にはソファーやテーブル。壁には大きなテレビ。片隅にはキッチンのようなものまで。普通の家のリビングとなんら違和感がない。強いて言うなら壁や天井が銀色の鉄のままの所が気になる。ちなみに床には隙間なく絨毯が敷いてある。


「お、来たか。まぁ座れ」


 僕は言われるがままに黒いソファーに座る。弾力性があり少し上下に揺れた。机を間に挟み、向かい合って会話を始める。


「どうだ、ここは。それなりに快適だろう?」


「そうです…あっ、そう…だね」


 言いかけて慌てて直す。


「そんなに緊張すんなっての。俺らだっていつここがお前にぶっ壊されるか警戒してるのだが」


 それを機に僕は有利な立場にあると思い、色々聞いてみた。

 まず僕がここに来ることが分かっていた事について聞いた。どうやら知っていたのは佐々木と先生のみで、ある部屋に誘導してもらった。

 そこにはたくさんのモニターがあり、モニターにはそれぞれ様々な色のコードが繋がれている。見たことない機械が沢山あってなんとも表現しずらかった。

 先生はパソコンみたいな機械にカタカタとキーボードで打っていく。すると比較的小さめのモニターに映る赤い点。僕の携帯の居場所を指していた。

 つまり僕の居場所は筒抜けだったのだ。僕はあのテロの時、メンバーの銃の装填してある弾丸にGPS発信機をつけた。

 それを先生は当たり前のように発見し、逆探知して電波の受信先を突き止めたという。あの時からお互いに相手の居場所を知っていたのだ。

 その後も長ったらしい説明をリビングに移動しながら聞いた。再び座り僕は問う。


「なんでここに僕が来るって分かったの?」


「そりゃあGPSつけられたんだから、いつかお前が来るに決まってるじゃないか」


「いや、そうじゃなくて場所がわかってるとはいえ、僕が来れるとは限らないでしょ?」


「何言ってんだ、お前ならなんでもありだろ。流石に半信半疑だったが確信したのは…」


 そう言って今度はテーブルの端にある、タブレットのようなものを手に取り流暢な手つきで打っていく。

 打ち終わった後裏返して画面の方を僕に向ける。

 画面には昨日僕が行った火山の映像が映っていた。


「お前昨日、火山の中心にいたろ?溶岩にでも浸かってたんじゃないのか」


 僕はコクコクと首を縦に降る。


「ここから俺が推測したのは、お前のその驚異的な環境適応能力だ。だからここまで来れると確信した」


 先生の言った通りこの体はどんな環境でもついていける。海の中は駄目だと思ったが(ゲームとかだったら大体弱点属性だし)、実際入ってみたら案外大丈夫で、さらには首に感じる違和感。徐々に裂けて開いていく感覚がした。手を当てて確認してみるとなんと(えら)ができたのだ。

 海中でも楽々息ができ、尻尾もスクリューのような役割を果たし、泳ぐのも苦労しなかった。

 この体には未だに驚かされる部分がまだあることを知った。


「それで、お前は何しに来たんだ?」


「あぁ(ようやく本題に移れる…)、佐々木っていう人いますか?その人に用があって」


「佐々木なら、あそこのドアを開けた先にいるぞ。あとあいつは同性愛者じゃないが、お前がいつかここに来ることを悟った時、お前に興味津々でな。最初のうちは色々何かされるかもしれん。しばしの間耐えてくれ。俺はさっきのモニターに欠陥を見つけたから修理しにいく。では失礼する」


 そう言ってソファーを離れてさっきの部屋に入って行った。

 残された僕と向かい側に1人、気まずい空気が漂う。僕も佐々木に会いに行こうとするが、その前に気になったことがあった。


「あのー」


「どうした竜人さんよ」


 口調こそ改まっていたものの、警戒しているのかすごい剣幕な表情だ。


「大地でいいよ。なんであなたはスーツを着ているの?」


 最初からずっと気になっていた。服装や見た目からIT企業の社員のよう。けど時間は昼前だし、もし出勤ならこの場にいないはず。

 それなりの理由もあると思い、聞いてみることにしたのだ。


「ちなみに俺の名前は白崎(しろざき)快斗。快斗でいい。俺は先生に『真面目で、誠実で、真摯でいろ』と言われたからそうしているだけだ」


(感化されすぎ……)

 僕は素直にそう思った。続けて快斗が言う。


「俺はもともと天才だったが、天才すぎるが故に日常がつまらなくなってグレてしまってな。先生に色々促された結果、更生する事を誓ったんだ」


「先生って人はそんなに凄いの?」


「そりゃもちろん。先生はなんだってできる。お前も同じじゃないのか?」


「それはこの力があればの話。無かったら何にもできないよ。だからあなたたちの手を借りる。話してくれてありがとう」


 そう言って僕も席を立ち、会いに行く。


「はっ、相変わらず変なやつだぜ」


 僕は一瞬止まるも、すぐ歩き始めて扉を開けた。


 そこはトレーニングルームで様々な運動器具があった。ランニングマシンや自転車みたいなやつや重量挙げで使うバーベルなどなど、普通のジムより広く、バリエーションが多くて豪華な気がした。

 例の佐々木は鉄棒に掴まり、懸垂っぽい動きをしている。顎まで体を持ち上げるのが大抵だが、佐々木の場合それを通り越して、まるで重力が反転した様な状態まで体を持ち上げている。新体操でも見ているかのよう。

 しかも小さい声で389…390…と数えていく。一体いつからこんなことやっているのだろうか。

 キリのいい400回目で手を離し軽やかに着地する。素足なのでペタッと音がした。


「400っと、やぁ久しぶり。会うのはあの時以来だね」


 体勢を整えてしっかり立つ佐々木。

 この前みたいに戦闘態勢じゃないせいか、温厚で爽やかな声だ。


「お久しぶりです。今日はあなたに用が…」


「おっと待ったぁ!その前に色々させてもらうぜ。腕相撲するか」


 佐々木は適当な台に右肘をつけてスタンバイする。僕も誘われるがままにセットする。


「準備できたな。言っとくけど俺は一回も負けたことないからな。一回も、負けたこと、ないからな」


 あれだ。大事なことなので二回言いましたってやつだ。でも結局勝ちたいのか負けたいのか不明だ。


「レディー、ゴー!」


 両者ともに真顔で開始する。佐々木は全力そうだが、僕は本当に手を抜いている。

 佐々木は顔が引きつったままほくそ笑んで僕に話しかける。


「本気、出していいぞ?」


 言われた通りグッと力を入れる。


「もっと!」


 さらに力を入れる。


「もっとだもっと!もっともっともっともっ、ゴハァッ!!」


 めんどくさいので一気に終わらせた。勢い良くやりすぎたせいで、佐々木の体が宙に浮き仰向けに倒れた。

 左手を台に置いて体を支えてフラフラ立ち上がる。


「くっ、こんなひょろひょろの腕なんかに」


 今度は歩いて僕に近づき、服の襟付近と袖を掴んできた。


「背負い投げしていい?」


 僕は快く答える。


「どうぞ」


 早速佐々木は投げようとするが、当然僕は石像の如く不動。逆に佐々木がふらつく結果となった。


「くっ、こんな棒立ちで足腰すら使ってないのに」


 よほど悔しいのが目に見える。

 その後もあれやこれやいろんな技など仕掛けられたりした。全て直立不動。完膚なきまでに佐々木のプライドを打ちのめした。その証拠に僕に背を向けて、俯いて体育座りをしている。意気消沈だ。

 僕は少し間を開け、様子を確認しようと歩み寄る。肩を叩いて気を引こうとしたが、その前に佐々木は思いっきり振り返って立ち上がる。佐々木は僕の肩をがっしりと掴みこう言った。


「お前、竜になれ。そっちの方も気になる」


 言われた通り細心の注意を払い、竜化した。竜化した際の衝撃で、佐々木は顔を両腕で覆って後ずさりする。今度は僕の方が佐々木を見下ろす感じになる。


「でっか……」


 覆っていた両腕を開くと惚れ惚れした様子で僕の体に触り始める。


『触ると危ないよ』


「うおっ!?頭に直接言葉が響くぞ!これはお前の声か?」


 僕の忠告を無視しますます関心が高まる佐々木。


『そうだけど、触ると危ないって』


「それにしても鱗って意外とツルツルして…痛ッ!?」


 案の定佐々木の右手に切れ込みが一筋入って、ドクドクと血が出てくる。慌てて出血箇所を抑える。


「頑丈な上に凶器にもなるとは、恐れ入るぜ」


 まだ佐々木は満たされないのか、僕の周りをぐるぐる回り観察する。

 一通り終わって僕の前に立った。


『そろそろ終わりですかね?こっちもあなたに聞きたいこと…イッ!?』


 突然僕の局部に向かって蹴る佐々木。僕は動揺のあまり変な声が出る。


『いきなり蹴らないでもらえますかね!?』


「お前、女だったのか」


 更に動揺する。佐々木の言葉でふと我に帰った。ここまで全然気にしなかったアソコが見当たらない。急いで角の形状を確認する。触った感じ先端は尖っているので間違いなく男(雄)だ。そもそも竜に生殖器なんてあるのだろうか。とりあえず佐々木の言葉を否定する。


『まぎれもない男だけど』


「なら爬虫類と一緒で収納式なのかもな」


 いきなり何を言いだすんだ。収納式って……。帰ったら調べてみることにしよう。


「よし、俺のしたいことは終わった、今度はお前の番だ」


『えっと、じぁあ簡潔に言うとこの体に弱点みたいなのある?』


 佐々木は自分の事を指を指して言う。


「なんでそんなの俺に?」


『あなたは対人間用の技をいくつも作った。より効果的になるように。だからその観察眼から、対竜用の攻撃方法も作ってもらおうと思ったんだ』


「なぜそんなことをする?」


『強いて言うなら…未来のため。それ以上は言えない』


「分かった考えてみよう」


 数分後、何かを閃いた佐々木は、手を叩き分かりやすく合図をする。


「これならいけるかもしれんぞ!」


 僕は真剣に考えを聞く。




ここまで読んでいただきありがとうございました!ではまた

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ