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竜の希望  作者: 猫☆ライフ
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昨日の敵は今日の友

第60話です!今回はちょっとバイオレンスな部分があります。気をつけてください。

それではどうぞ!

 僕が家に帰った時にはもう朝だった。日が明け、背中全体に日光の温もりを感じた。

 何気なく玄関のドアを引いて開け、家に入るのだが、鍵を閉め忘れていたことに気づく。一応全て家の中にあるものを確認するが特に奪われたものはない。そもそも僕にはこの家に大事なものなんて無かった。いや、無くなってしまった。

 リビングのカーペットの上に立ち、両手を握り俯いた。また様々な感情が込み上げてくる。

 すると階段から降りてくる音がする。ドアを開けリビングへ入ってきた。


「おはよう大地。どうしたの?そんなところに立って」


 僕は後ろへ振り返り、改まった態度で朝の挨拶をする。


「おはよう(はじめ)。何でもないよ」


 そうだ。僕はまだ全てを失ったわけではない。友達という大切な仲間がいる限り、僕は前に進むしかないんだ。

 またそんな考え事をしていると、気づけばまたさっきみたいに下を俯いて突っ立った状態になっていた。

 そんな僕の姿に見兼ねた一は、心配そうな表情をして言った。


「本当に大丈夫?疲れてるなら早く休んだ方が…」


「いや本当に大丈夫だから!全然疲れて…なんか……」


 適当な作り笑いをして誤魔化そうとしたが、裏の僕のことを思い出した。だんだんと顔は血の気が引き、一の足元一点を見つめる形で固まった。


「自分のため」「綺麗事」「正直」の単語が脳裏で交差する。言うことが出来るタイミングはこれを逃せば、いつ訪れるかわからない。僕がいなくなってしまったら伝えられるものも伝わらない。

 僕はいつもと低いトーンで話し始める。


「全然、大丈夫じゃない」


「え?」


「全然大丈夫じゃないよ!いつ一や僕やみんなが死ぬか分かったもんじゃない!今まで運命だの思ってたけどそうじゃないんだ。ただ僕はそう自分に言い聞かせて、現実から目を背けてるだけなんだ!友達なんて、はっきり言って重り!僕に重圧をかけるだけの道具なんだ!」


「いきなりどうしたの!?」


 一はそろりそろりと僕に近寄る。


「うるさいっ!!」


 僕はあろうことか、一の左頬を右手で力一杯に叩いた。


「ぶへぇっ!」


 そのまま一は飛んでいき、本棚を蹴散らし、家の壁に頭をぶつける。

 口の中が切れて唇から血が滴る一は、右手で拭うと僕にやり返そうとする。


「いきなり…なにするんだよっ!!」


 一は右手に拳を作り、仕返しを試みる。

 が、そんなの僕にとっていつも避けてるので、なんともない。僕は飛んでくる拳を後ろへステップして避け、一の頭上にかかと落としを炸裂させる。

 床は大きく凹み、一はピクリとも動かず、静かになった。

 僕はまだ気分が晴れないのか、左手で一の髪の毛を鷲掴みにして持ち上げ、顔面に向かって右手で殴り続けた。


「お前らなんかに!僕の気持ちなんて分かりゃしないんだ!分かった風に心配するな!」


「そんなのっ!」


 僕の右手を一は左手で受け止める。


「言ってくれなきゃ、なおさら分かんないだろ!!」


 頭突きで応戦する一。完全に竜の力を解放した2人は異次元の喧嘩に発展する。殴り合うたびに衝撃波が発生し、家の壁にヒビが入ったり、窓ガラスが割れたりする。人間なら全身が弾け飛んでもおかしくないレベルだ。

 僕はさらに一に怒号を浴びせる。


「言ったって、みんなを危険に晒すだけだろ!」


「もう十分晒してるよ!言ってることとやってることが全然ちがうじゃないか!」


 僕は本当のことを言われ、手を止める。


「そ、それはっ!ンガアアァッ!」


 その隙を見て一は僕の顎に会心の一撃を食らわせ、打ち上げた。天井に背中から激しくぶつかり、床で一回バウンドしてから奥の壁に当たり、寝そべった。

 今度は一の怒号が飛ぶ。


「それが君の本音か!?また人の為か!?偽善もいい加減にしろ!君の本心はなんだ!」


 僕は一の熱烈な様子に感化された。


「僕は、僕はっ!」


 目から一滴の雫が垂れる。


「未来が、分からない。先に待ち受けてるものが分からない。怖い、怖いよ。今がとても…怖いよぉぅ」


 僕はうずくまり、子供のように泣きじゃくった。無意識に隠していた本心を初めて友達の前に明かした。


「大地……」


 一は僕に寄り添い、背中をゆさゆさ(さす)ってくれた。


「大地は一人じゃない、僕たちがいるから」


「うん……、うん……!」


 言葉にならない嬉しさがこみ上げてきた。

 僕はしばらく泣いたあと一の提案を聞いてびっくりする。


「えっ!?学校を辞める!?」


「うん。別に僕にとってはっきり言ってどうでもいいし、出来ることなら大地の助けになりたい」


 一の真っ直ぐで曇りない目線は覚悟というものが感じ取れる。

 僕は今一度顔を拭い、気持ちを整理する。


「にしても大地のビンタ痛かったな〜。年末の例のビンタもあんな感じなのかな?」


「知らないよ。あと、手出してごめん」


「謝る必要ないよ。こんなの数秒で治っちゃうし、ほんとこの体って便利だね」


 僕は決心がつき、立ち上がった。


「決めた!もう逃げるのはやめる!全ての現実を受け止めてこの物語に終止符を打つ!」


「それで、どうやって打つの?」


「いかにも悪そうな、母さんを殺したカーマインってやつをぶっ倒す!そして()()()にみんなも守る!」


「ついでか〜。嬉しいことには変わりはないんだけど」


 僕は昨夜の事が気になったので一に問う。


「そういえばなんで昨日、一の机が濡れていたの?」


 一は一瞬反応して表情が固まり、決まりが悪そうにする。


「あっ、それは……、ちょっと勉強の合間に竜力使って遊んでたんだ」


「どんな風に?」


 思いのほか興味がある僕。


「ほら僕って水竜じゃん?水使って何かできないかな〜って思って、指を立ててイメージしたら…」


 そう言って一は人差し指を立てた。すると何もない空間からぽつぽつと藍色の水が現れた。それは徐々に大きく、そして形を作っていき、最終的にバスケットボール程の大きさの球型の水が出来上がった。


「おぉ、すごい…。あ!これがあれば火事とか熱中症対策とかバッチリじゃない!?」


「確かに、考えてなかった。ってこれ飲めるのかな?」


「飲んでみる」


 僕は台所からストローを持ってきて、水の球に刺して飲んでみる。味は比較的天然水寄り。色に不安はあるが、飲み水としても料理に使ってもいけそうだ。


「でもこれちょっと問題があって、」


 一が解除したのか水球は床に落ちて、ビシャビシャに濡れる。


「僕が消し方を知らないのか、解除しても消えないんだ」


「んー。それについてはまた後で考えよう。とりあえず、拭こうか」


 2人で雑巾を一枚ずつ洗面所から持ってきて、竜力を使わず手作業で拭き始める。


「そういえば、布団かけてくれてありがとう」


 僕の後ろから一が床を拭きながら話しかける。


「そんなのどうってことないよ。いつもお母さんが夜ぅ……」


 突然催す吐き気に襲われる。


「無理しなくていいよ。それに布団なんていらなかったよ。最近ずっと暑いじゃない。37度は超えてるよね」


「えっ?そんなはずは」


 僕はカレンダーを見て日付を確認する。まだ6月にもなっていない。なのに一の体感では40度近くある?どう考えても重症だ。僕は即座に体温計を持ってきて、脇に挟ませた。


「え、大地ちょっと」


「今測ってるからしっかり挟んでて」


 ピピピピ……ピピピピ……


 僕は表示された文字(デジタル時計の数字のようなフォント)を見て驚いた。なんとERRORの文字。

 体温計は最低32度が限界だ。それ以上、下は行かない。とすると体温は限りなく低い。

 ここで僕は火山での出来事を思い出す。これは恐らく竜特有の環境適応能力。いかなる環境でも生き抜くことができる順応性があると思った。

 だが一自体はそれほど冷たくはない。表面だけ平熱ということだろうか。

 ということは僕もと思い、今度は自分の脇に挟む。案の定、ERROEの表示。僕の場合、寒いと言った感じはしない。

 僕は温度計を引き出しにしまい、スマホを見てある場所を確認する。ポケットに入れると一にこう告げる。


「それじゃあ、ちょっと僕はやることがあるから。一は学校辞める手続きでも済ませておいて」


「ちょっと大地待っ……、行っちゃった……」


 いつものように僕は飛翔する。


 ーーーーーーー


「チェックメイトっと」


「だぁ〜〜っ!また負けた!」


「はは、これで278勝1敗。また俺の勝ちだな」


 とある場所でチェスをやる2人。片方は頭を抱え身を反らす。


「ほんと先生には勝てませんよ」


「フッ、快斗もよく諦めないな」


 つい先日学校を襲ったとは思えない屈託のない会話が続く。


「それにしてもこの場所は永遠に安泰ですね」


「まぁな。俺が考えたんだから当たり前だろ?だがあいつにはこの場所はわかってるし、もしかしたらいつか来るかもな」


「またその話ですか。どうやってここまでたどり着くんです?いくら人外でもここまでは」


 すると突然、先生と言われた人物の端末から警告音みたいな音がなる。


「来た!ものすごい速さで接近してくる!」


「そ、そんなありえませんよ!幾ら何でもこんなところ……」


 先生は後ろの無数のモニターへ向かい、映った姿を確認する。


「俺のナノマシンに搭載した幾万の監視カメラを見破る素振り、そしてこの姿。間違いない」


「そんな!この場所に来るのにどれだけの費用がかかると思ってるんです!?」


「いや、あいつなら生身でどこへでも行けるはずだ」


 確信したのか床に取り付けられた扉船のような場所で待機する。そしてこんこんとノックをする音。


「先生、ほんと気をつけてくださいよ。なんかのスパイだったらどうするんです?」


「お前は心配性だなぁ〜。大丈夫だろ」


 先生はハンドルを回し、片開きにした。

 僕は水面から顔を出すと、元の姿に戻り、何気なく挨拶をする。


「お、お邪魔します」


「フッ、ようこそ海中の隠れ家へ!俺は待ってたぞ!」


「えええぇぇぇーーーっっ!!」


 隣で快斗は一歩後退し、仰天して叫び声をあげる一方で、先生は腕を大きく広げ、自分をアピールした。



ここまで読んでいただきありがとうございました!

それにしてもこの小説いつまで続くんだろう?早く終わらせて次の書きたいな〜。

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