相反
58話です!新年あけましておめでとうございます!この小説を書き始めて7ヶ月ほどたちました。正直言って自分がここまで続けられるとは思ってもいませんでした。完結に向けて頑張りますので今年もよろしくお願いします!
長くなりました。それではどうぞ!
急に眩しく感じ、ゆっくり目を開ける。どうやら僕は寝ていたようだ。
目を開けるとそこは自宅ではなかった。見渡す限り例のあの真っ白の空間。体の主導権が奪われたのだろうか。って事は今まずい状況じゃないのか!?寝ている間に襲撃されてるかもしれない。
僕は飛び上がるように立ち、外の状況を確認しようとしたが、外が見えない。いつもならスカーレットが見ている光景を共有することができるのだが、そんな感覚も無く、僕はただただ立ち尽くす。
それに、立ったっきり体が言うことを聞かない。何かに縛られているわけでもないのに。まるで僕だけ時間が止まっているように感じた。
「はぁ、スカーレットの仕業かなぁ」
ため息混じりにそう吐き捨てる。
この状況をどうにかしたい気持ちもあるが、体が動かないのも加えて、スカーレットからの返事も一切ない。と言う事はスカーレットは寝ていて、体の主導権も奪われていない?だったらここは……、
「なぜ、お前はこんなことをしている?」
突如聞こえる低い声。反響してエコーのように聞こえた。
「これはお前の仕業か!?さてはスカーレットだな!元に戻してくれ!」
「スカーレット?そうかお前の中にいる奴か。安心しろ、今お前は寝ている」
「どう言う事だ?寝ているのに会話ができるなんて」
相変わらず体は動かない。
「それはお前の脳内だからだ。僕は僕と話している。さて、本題に移ろうか。お前はなぜ、世界を変えるなどと言うくだらない事を考えるのだ?」
「ますます意味がわからないよ。とりあえず答えるけど、自分のために竜力を使ったら?って友達に言われたから。その結論がそれだよ」
正体不明の声に少しずつ恐怖を覚える。胸のもやもやが無いので、竜力を使ってこの状況を打破するのは難しい。今はおとなしく応じようと思った。
「わかるように言うぞ。僕は…竜の力を手に入れた時できた、もう一つの人格。憎悪や恨みの塊みたいなものだ。そしてそれが『自分のため』?笑わせるな。何一つ自分のためになってないじゃないか」
「いい事したら巡り巡って返ってくるでしょ。そもそも自分の力なんだから僕が決める事だろ」
もう一つの人格についてはあまり触れなかった。
「この力がお前のもの?生まれた時からお前はこの力を持っていたとでも言うのか。違うだろ。いつか消えるとは思わないのか。この物語とやらが終わったらどうなるのか」
「それは……」
予想外だにしない未来の提案とどうなるかわからない未来に不安を抱く。
「この力が消えたらできることがなくなる。たくさんな。無力な僕が一番よく知ってることだろ」
「…………」
竜力が無いと無力なのは図星なので返す言葉を失う。
「お前、僕をいじめた奴に復讐しようとは思わないのか?この理不尽、不合理、不条理な世界が憎いんじゃなかったのか?」
「それはそうだけど暴力的なのはいけないよ」
「この後に及んでまだそんな綺麗事を。そういや綺麗事も大の嫌いだったっけか?正直者だと言われていたが、そんなに嘘をついてまで周りをよくしたいと思うのか。全く呆れるよ」
全否定されたことに苛立ちを覚える。
「……まれ」
「よく聞こえないなぁ。お前の脳内なのに。意志が弱すぎるんじゃないのか?だいたいお前は…」
「黙れって言ったんだよ僕。それ以上言ったら本当に怒るよ?」
「怒るんならさっさと怒れば?どうせ何もできないくせに」
怒りが頂点に達し、顔だけでも前に出そうとする。
「く、そ、がぁぁッッ!!……う!?」
怒鳴ろうとした瞬間、頭に激痛が走る。
「一体、何を……?」
「なぁに、お前は記憶力が悪いからな。思い出させてやる。僕が、表に出るまで」
「こ、これは!?」
突然真っ白な空間に浮かび上がる光景。まるで映画のスクリーンのよう。その白黒な光景には僕をいじめていた奴ら。いじめている最中だ。授業道具をめちゃくちゃにしたり、様々な角度からの冷たい視線。授業中ものを投げつけられたりする光景が次々と流れる。ここで体の自由がきくようになった。ずっと縛られていたので動く感覚を忘れ、立つ時よろめいた。
動けるようになったのは理由があった。音がする方を向く。真後ろに振り返り、あるものに凝視する。それはまたいじめの光景だ。さっきと同様間髪入れずに、次々と他のいじめの場面に切り替わる。
気づけば辺り全てを見回すと。いじめの光景に囲まれていた。見渡す限りいじめ。
さらに、耳元で囁かれる陰口。いや、耳元ではなく直接耳の中へ入ってくる。色々な陰口が被さるように繰り返され、こだまする。
耳を塞ぎ、しゃがみこみ、目を瞑りながら下を向いた。目を開けると、そこには白い地面を埋め尽くすの黒い文字。僕の無力の証の言葉。今まで感じたネガティブな言葉が綴られている。字の大きさや傾きがバラバラで、不気味に感じた。
負の3コンボで僕の精神はどんどん追いやられていく。
「く…、やめ……」
「これがお前だ。僕という人間なんだ。いや、もう人間じゃなかったな。もういっそのこと化け物として全てをめちゃくちゃにするか?」
「そ、それだけは……!」
「仕上げだ」
今度はフラッシュバックする。頭の中に直接送られる。それは竜力を得た後の過ち。
人を食べてしまった時のあの光景。赤く染まり、あの妙な食感も鮮明に思い出す。
今度は…あぁ、あぁ!!母さんの死だ。思わず右手を伸ばす。その甲斐も虚しく、真紅の血が目の前を通り過ぎる。
ここで終わった。僕は正座し上半身後ろへ仰け反り、首だけ曲げて上を向く。もれなく放心状態だ。
「やはりこの程度だったか。呆気なかったな。ハハ、今日から僕がこの力を行使するんだ。やりたいことやってやるぞぉ」
放心状態でも裏の僕の声は聞こえた。最後は何か楽しげだった。これが本当の僕だったのか。傲慢で欲まみれでやりたいことをする。案外それで正解だったのかもしれない。
「さてと、体の感覚はないな。まだ時間がかかるか」
「なーんちゃってね。堕ちると思った?」
「な!?お前は!?どういう事だ!」
「実はこうなる事は予想していたんだ。王道のパターンだし。精神の方に特殊なバリアを張っておいたのだ。洗脳とかマインドコントロールとか対策はバッチリさ。正直洗脳されそうだったけどね」
「くっ、どこまでも用意周到な奴だ」
「僕のくせにそんなことも知らなかったんだね。でも君の言うことは間違ってはいない。君の言う通り、復讐とか考えたりした。多分僕は我慢しすぎたのかな。君が出てきたのは。でも大丈夫。恨みや憎悪は閉じ込めて、封じているわけじゃない。ただ、今はポケットに入れているだけ。いつでも…取り出せるように」
「綺麗事…ではないな。それが本心か。まぁ、聞けてよかった。だが裏の僕は僕が生きている限り存在し続ける。もっと正直になれよ、僕」
裏の僕の声がだんだんと近づいてくる。首を動かしキョロキョロ見回す。だが見えるものは果てしない真っ白な空間。
ふと上を見ると、すぐそこに竜化した僕の姿が眼前に迫る。そして、鋭利な鉤爪が、振りかざされる。
「わぁっっ!!はっ、はぁっ……」
僕は上半身を一気に起こし、両手で自分の服を握りしめ、顔に数滴の冷や汗が浮かぶ。
それと同時に胸に手を当て、もやもやがあるか確認する。あるのがわかり、そっと胸をなでおろす。
僕はこの出来事は夢だと思っていない。あれを戒めだと思って僕はまた新たな決意を決める。
裏の僕を忘れないように。もっと正直でいよう、と。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
久々に作者Q&Aをやりたいと思います。疑問に思った点を自分で解決しようと思います(笑)
佐々木との戦闘について
Q.見て攻撃を躱すのは当たり前じゃないのか?
A.佐々木の攻撃は見ても躱せない攻撃となっているのであの発言をしました。
Q一の全裸は竜力を使って姿を消せばいいのでは?
A.状況がさらにややこしくなりそうなので、避けました。ぶっちゃけそういう発想はなかった。
Q相変わらず描写がメチャクチャ
A.そこについては本当に反省してます。もっと周りの風景など詳しく書けていけたらなと思います。
長文失礼します。ではまた。




