裏・闇②
56話です!いきなりですが作者ドラゴンになるのが夢なんですね。でもそれは叶わないんですね。切ないですね。それだけです。
それではどうぞ!
僕は女子トイレにお構い無しに駆け込む。女子トイレに入るのは小学生のころ、間違えて入った時以来だ。そしてそこですれ違った時の気まずさと言ったら……思い出すとゾッとする。
見たところ鍵が閉まってるのが2つ、まぁ迷う必要も無い。正確な位置は把握している。
出っ張りに手を掛け、グッと押す。開いたものの金属が割れる音がし、金具やら破片やら落ちた。
「キャッ!?なになに!?」
隣の個室から声がする。ごめんね隣の人。今は緊急事態なんだ。
そして開けた先には……
「だ、大丈夫ですか!?」
口がガムテープで塞がれ、両手と両足を縄で縛られ、目の方が鉢巻みたいな布で覆われている。
取り敢えず会話できるようにしたいので、ガムテープを剥がす。
その女性が弱々しい声で話す。
「あ、ありがとうございます。もう当分このままかと思いました……」
「いや、あなたの声が聞こえたので駆けつけることができました」
「え!?あのガムテープ越しに喋ったアレが…?」
話してる最中にも僕は女性の拘束を解く。
「あっ、男性でしたのね。警備の方?」
「それよりあなたを襲った人物について聞きたいんですけど」
「はい、どうぞ」
僕が女性に聞こうとする前一に様子を聞いてみた。
『そっちの様子はどう?』
『どうもこうもさっき大地が走ってすれ違ったから、近くにいた僕にも疑いがかかってるのか、チラチラ後ろ見ながら前に進んでいるよ。もしかしてバレてる?』
『多分バレてる。尾行されてるのに。ただ、変なことしないうちはそいつも下手に動かないだろう』
『変なことって?』
『例えば走り始めたり、誰かと連絡を取るような素振りを見せたときかな』
『それじゃあバレてる尾行を再開するね』
『よろしく』
一にもはや尾行とは言えない尾行を再開させる。
犯人特定のため拘束を解きながら女性に問う。
「どんな服装をしていましたか?」
「襲われた時ちょっとしか見えなかったんですけど、地味な服装で、色は青紫で、まるで清掃員みたいな服装でした」
「(青紫?清掃員?そんな格好はしてなかったけどなぁ。あ!そうだ!)靴はどんな靴でしたか?」
「すみません。そこまでは……」
おそらく着替えた可能性が高い。とことん証拠を残さないつもりだ。でもまだ確信につながるものはある。
「香水はどんな香りのを使用していますか?」
「ユーカリです」
「(し、知らない。けどこれで確信に変わった。)ありがとうございます。なんとかなりそうです」
「は、はぁ……?」
僕は立ち上がり、
『一、そいつ捕まえて』
『また無茶を言う。やってみるけど』
一は一息ついた後、それなりの思いで行動する。
(この力、使うことはないと思っていたけど、今は使う時みたいだね。お願い大地のために!)
一は足に力を込め、捕まえに行く。
だが一つミスがあった。一の思いは想像以上に強かった。ので、一の想像を超えるスピードで男性に近づいていく。
この速さを想像してなかった一は、
(速っ!?)
と、焦りの表情を浮かべる。
ロケットの如く飛んでくる一を見ていた男性も驚きを隠せない。
「なんっだ!?うぐぅぅぉぉおおああ!」
当然避けることができなく、一と一緒に激突した勢いで、フローリングの床を爽快に滑っていく。
ようやく止まった後、男性の両肩、両足を押さえつける感じで乗っかった。さすがに一もやりすぎたので心配する。
「い、生きてるかな……?」
「う……あっ!このガキよくも……!って重!」
男性はゆっくり顔を一の方へ向け、元気な反応を見せる。
「よ、良かった生きてて」
「良くない!くそっ、離せよ!」
と、ここで男性はある違和感を感じる。
(このガキ、こんな体つきでなんて重さしてやがる。いや、そうじゃない。とんでもない力で押さえつけられてるのか!?くそっ。本当に身動きが取れねぇ。)
動きを封じた後一が僕に連絡を入れる。
『捕まえたよ。少々手荒になっちゃったけど』
『良くやった一。今すぐそっちに向かう。その間やってもらいたいことがあるんだけど、いいかな?』
『いいよ。ここまできたらもう引き下がれないし』
『そいつにカバンみたいなのあるでしょ。それを一のハンカチで指紋がつかないように取り上げて』
『分かった』
一はポケットの中のハンカチを取り出し、指紋がつかないように手にかぶせ、男性のカバンに手をかける。
「クッ、そ、それだけはやめてくれ!」
開いた右腕を使ってジタバタする。
「すみませんね。友達が来るまで待っててください」
僕は一の元へ急いで向かう。
そうしてる間に男性が何か思いついたのか、大声で叫んだ。
「だ、誰か!この上の子をどけてくれませんか!」
男性は周りの人が騒ぎを聞きつけ集まりつつあるのを利用し、人の助けを借りようとしたのだ。
その言葉を聞いた周りの人が数人集まった。
「この子をどければいいんだな!」
「今助けるからね」
結果男性3人女性2人が来た。早速一の体を数人がかりで持ち上げようとする。
が、今の一にとってはそれは無意味に等しかった。
まだ普通の人間でいるつもりの一は、この状況は非現実過ぎて、おどおどする。
「ちょ、ちょっとやめてください!」
「なんだこの子!全ッ然動かないぞ!」
「この人数でもビクともしないわ!」
この人混みの中1人知っている顔が見えた。言うまでもないだろう。その人は周りの人を押しのけ一に近づいてくる。
「皆さんそこをどいてください。ここから僕がまとめます」
そこには大地の姿があった。
ここまで読んでいただきありがとうございました!ではまた。




