これから
53話です!長めです!特にいうことはありません!それではどうぞ!
僕らは家に着き、鍵を開け中に入る。どうしてまだ住めるのかというと……企業秘密だ。大体お察しの通りだが。
一が家を回る中、僕はテレビをつける。予想通り、どのニュースもあの学校の件を報道している。それには校長の逮捕だけではなく、行き詰まっていた警察の調査が一気に進展し、学校にいた関係者数人も逮捕された。
どうやら校長は麻薬の密売人でありボスに近い人物だったらしい。その結果、麻薬組織も次々と身元がばれ、追われる身となるだろうとの事。社会の闇は深過ぎることを改めて思い知った。
そのうちに一は風呂に入る。
さっき一の携帯から、学校から一斉メールで、要約すると整理がつくまで休校だそうだ。
一は竜の力に目覚めても、今までの生活を続けるつもりだ。そうできるよう僕が支えていかなければいけないと決意した。
僕はあまりの疲れ(精神的な)から力無く仰向けでゆっくり倒れる。白い天井を見ながら考え事を始める。
いろいろな事があったが、ここまで僕の想定内。筋書き通り進んでいる。起承転結でいうなら今は「転」と「結」の間くらいだ。今まで読んできた(竜化)小説で得た情報を頼りに、次に何が起こるか予想している。母さんの死も僕の物語の材料に過ぎなかった。
覚悟はしていた。けど、正直言って耐え難いものである。
だが、一つ問題が生じた。予想ができるのはここまで。なぜかと言うと、僕が読んでいた小説は全て完結されておらず、今僕が立たされている状況はまさにその状態なのである。
だからこの先何が起こるか見当がつかない。ここからは僕の物語だ。早く次の手を打たねば。そう思った後右手を上に突き上げ、握り拳を作る。
風呂場の方からドアを開ける音がした。僕は一が来る前に、友達に向けてメールを送信した。
「大地〜、出たよ〜。この家の風呂って意外と大きいんだね。あ、そうだ。お湯溜めちゃったから、入るなら冷めないうちにね」
「意外とってなんだよ。それよりなんで一人暮らしだったのにそんなに対応が……ってそうでもなくて!ちょっと今からみんなを集める。みんなOKって言ってくれたから。服着たら行くよ」
「い、いきなり!?こっちは受験控えてるから、勉強したいんだけど」
「じゃあ勉強道具持ってきていいから。みんなにもそう言ったし」
「じゃあ準備して来る」
一の準備が終わった後、集合場所に向かう。その場所とは昨日と同じ、学校から近くの公園だ。
当然僕らはみんなより早く着き、しばらくしてみんな集まった。僕以外、いつも学校で使うカバンが背負ってある。
早速僕は本題に入る。
「みんな集まってくれてありがとう。いきなりだけど啓介こっち来て」
「な、なに?」
啓介は恐る恐る僕に近づく。
「カバンを下ろして、しっかり立って」
「わ、分かった……?」
啓介は何をされるか全くわからないまま、その場に気をつけの姿勢をする。
僕は啓介の腕を取り、油性のペンでサラサラと竜文字で書いていく。
啓介は驚いた表情で、
「ちょ、ちょっと大地!何書いてんの!?これ油性のペンだよね!?」
「すぐ消えるからじっとしてて」
僕は書き終えると、目を瞑って集中する。深呼吸をした後、僕は竜語でこう言った。
『不滅の絶対防御!』
「え、え?今大地なんて言った?ってなんか文字が染み込んでいくんですけどぉ!?」
竜語がわかる一が訳す。
「イモータルアブソリュートガード、だって」
次にもう勉強を始めている源ちゃんが手を止め、口を開く。
「ついに大地も漫画やアニメの見過ぎで、イタイオタクになったか。おめでとう」
「ちょっと!?変な勘違いしないでくれる!?普通に心が痛いよ!これでもかなり真剣なんだからね!」
一人で盛り上がる僕に対し、啓介は一に話しかける。
「ところで今僕どうなってるの?」
「なんか身体中薄い赤い膜で覆われてる。啓介に見えないなら竜にしか見えないと思う」
話してる二人の間に僕が入り、少し自慢げに説明を始める。
「今僕がやったのは、その名の通り、竜の干渉は愚か、死へ直結する怪我などすべて防ぐバリアだ。この前の文化祭では竜の干渉のみ防ぐ効果だったが、今回は車にひかれても、地上1000mから落ちても絶対に死なない、最強のバリアだ」
啓介は首を傾げた。
「あれ?でもなんで一は僕らに触れたんだ?竜の干渉を防ぐんじゃなかったの?」
「それは一がほぼ人間と同じだったからだと思う。最初のは竜力を感知して反応するようにしていて、ほぼ人間だった一には僕のバリアも意味を成さなかった。そして、今僕の作ったバリアは死へ直結する怪我だけ防ぐ。つまり、擦り傷や切り傷などは普通に付くから、ある程度普通に生活できると思うよ」
「なんでそんな中途半端にしたんだよ」
「だって一生何も痛みを感じないとか、なんかつまんないじゃない?この設定が一番苦労したところだからね。そのバリアは啓介が受けた衝撃を、地面などに受け流したり、そのまま吸収したりできる。例えば……」
僕は右手を力強く握り、じりじりと迫る。
近づくたび、啓介の顔はどんどん青ざめる。
「お、おい大地?そんな物騒な拳下げてくれよ。嫌な予感しかしないんだけ……」
言い終わる途中すぐ殴りにかかる。
「おりゃっっ!」
その瞬間轟音が鳴り響き、土煙が舞う。だが啓介にはなんともなく、あるのは足元にできた大きいクレーターだった。
「大地……これって……?」
「見た通り、今加えた衝撃をバリアが地面に流した。こういう風に勝手に発動するなら、僕の竜力は毎回消費せずに済む。ただ硬いだけだったら、またバリアをかけ直す必要があるからね」
話しながら地面にできたクレーターを直す。
家で散々考えて出した答えだ。とにかく友達を守る。もう何も失わせはしない。
残りの3人にも同じものを施す。
2人目までは良かったが、最後の源ちゃんで異変が起きる。体中のあちこちから血が出始めた。吹き出す感じではなく、ゆっくり、たらーっと垂れてくる感じで体中を伝う。
流石にただ事じゃないと感じ、僕に近寄ろうとする。
「だ、大地大丈夫!?いろんなとこからち…血が漏れてるけど」
「……ガボッ…ゲホ、いい、から立ってて……。途切れちゃうから……」
僕は最後の力を振り絞り作業を終えた。
左膝を地面に着け、右膝を立てた状態で身体を落とす。けどやっぱり力が出なかったので、数秒姿勢を保ったあと、正面へ倒れ込んだ。
だが、僕の体は地面に衝突することはなく、何かに支えられた。虚ろな目で横を見ると、一と周吾の顔が見えた。
「全く…無茶しすぎだよ大地」
「大地、お前がそんなんだったらみんな心配するだろ。そんなに1人で抱え込まずにもっと俺らを頼れよな」
「グッ……ハァ、フゥ、ありがとう2人とも。悪いけどそこのベンチまで運んでくれない?」
僕は2人に支えられ、足をずるずるとひきづられながらベンチに置いてもらった。
10秒程寝て、起きたあとみんなが目の前にいた。相当心配してたのだろう。
啓介が1番に口を開く。
「大丈夫?」
「ンーーッ、おかげさまで」
立って体を伸ばすと、僕はある提案をする。
「よし!じゃあ今からみんなでスイパラ行かない?」
「はぁ!?」
戸惑う4人をよそに僕は心を躍らせる。
ここまで読んでいただきありがとうございました!ではまた。




