人間のままで①
49話です!次でついに50話。今回も長めです。あと久々の過激なTFありです。むしろそれを通り越して、考えようによってはエロいかもしれないです。ですがR18ではないのでご安心を。
それではどうぞ!
僕は、まだ縛られている校長を結界で囲み、人間形態に戻るため、深呼吸して気を抜いた。すると翼と尻尾、手が粉のように赤くキラキラ光って弾け飛び、目も最初とは違う乾きを感じ、"すうっ"と潤いが戻って来る気がした。
「ふぅ……」
竜化は生々しいが、戻るときは一瞬。全身の力を抜いて、自分の姿をイメージすれば勝手に元に戻っている。
そして、生徒の面倒を見てもらうため教師を探す。と言っても大体の目処は立っている。4階にある物置部屋だ。外への連絡手段がなく、人を入れられるスペースがかなりある。
物置部屋に到着すると、物音が中から聞こえる。
案の定、鍵がかかっており、鍵を開けるのが面倒臭かったので無理やりこじ開けた。その結果鍵が壊れ(当たり前)、もう2度と使い物にはならないだろう。
中へ入ると、沢山の道具、主に文化祭などの準備に使用するものがあり、教師達は空いている中央のスペースにまとまっていた。全員校長と同じ縛られ方だった。
それは僕にとって、とても好都合であった。教師達は僕と面識のある人もいる。見られたら色々聞かれそうだし、なんか色々面倒臭い事になりそう。
僕は身体能力を強化し、3人ずつ体育館へ運ぶ事にした。それについて、佐々木とリーダーとの戦闘でいくつか分かったことがあった。
一つ目は、凄まじい身体能力の負荷に耐えるため、勝手に肉体の方も強化されている。銃(鈍器)で思いっきり殴られてもなんともない。いわゆる「衝撃」に対し、とても強くなっている。しかし、関節の部分はあまり強化されず、脆い部分である。
二つ目は、鋭利なもの、刃物に耐性がないこと。銃弾も普通に貫通した。おそらく僕の強化は、衝撃しか耐性がなく、他のものは人間と一緒ということになる。竜力を固めてバリアでも張れば、全て無効化できるが、その分ずっと竜力を使うし、身体能力強化に比べて消費も多いのであまり進んでやろうとは思わない。
などと自分のことを解析しつつ、最後の2人になった。その2人を運ぶ最中、こんなことを思う。
(もしこの力がなかったら……今頃どうなんだろうか)
今回の僕の行為はこの力があったからだ。なかったら当然なにもできないし、いや、そもそもこの現場にすら居合わせていないかもしれない。
移動中立ち止まり、下を向き僕の無力さを感じる。だが、これも運命なんだと思い込むことで正当化した。母さんの死だってそうだ。当時はありえないほどショックだったが、同じように思い込むことによって乗り越えられた。
僕は素早く切り替え、最後の2人を体育館へ運んだ。
生徒はあのテロ5人組がまとめてくれていた。あのとき拘束を解いたら、逃げ出すんじゃないかと思ったが予想通り逃げ出さなかったようだ。
それは最後のナイフで確信した。狙ってきたのは確かに顔だった。それとは別に目線が一瞬、左ポケットの方にいき、手を突っ込んで何か取り出そうとしていた。中身は確認しなかったが、なんらかの方法で行動を封じようとしたのだろう。
要は、敵は人を殺めることなく穏便に済まそうとしたのだ。
この行為自体は許されるものではないが、正体を明かさず、指名手配もされることなく、校長の悪事を世間に知らせて、何事もなかったかのようにその後も平和暮らす。それが目的であるならば、全員生存が条件であり、僕の「仲間を殺す」という脅しは正解だったといえる。
教師達を全員集め、5人組にお別れを言い、入り口付近にあるトイレに篭りっきりの一の様子を見に行く。ひとつだけ鍵が閉まっているドアがあった。そこに向かって話しかけてみる。
「おーい。一ー、大丈夫かー?」
「う……あぅ……。もうちょっと、したら……出る、よ」
明らかに様子がおかしい。時間も経ってるし、心配なのでまた無理やりこじ開ける。
だが、そこにいたのは一じゃなかった。
「あ、大地……か。う、く……そ、また……!」
少しだけ前に出た口に、小さく後ろ斜めに伸びた2対の角、青色の目、顔と手には所々に青い鱗、胴体が長く、そして短い尻尾。人間部分が多めの水竜だった。
僕は驚きのあまり、口を少し開けつつ後ろに一歩下がった。その影響で後ろにある鏡から一が見えたが、またしても驚きがあった。竜の部位が映っていないことに。鏡には服が所々破れて、少し裸体が露わになっているいつもの一の姿だった。
ここでレイヴンの手合わせを思い出した。姿が見えないのは「人間界」の鏡の後ろにいたからなのだと思った。
こんな驚きをよそに一の体に変化が訪れる。
「よう……やく、落ち着いて…エッ、来たのにィ…ヒッ、ぐ、ぐぁぁあああッッ…、体……がぁ……」
骨が複雑に折れるような音とともにどんどん胴体が長くなっていく。服も破け薄い水色の蛇腹が露わになる。蛇腹から尻尾にかけてつながり、尻尾はだんだんと長くなる。腕と足が短くなり、手足の指は長く細く、爪は鋭いけど太くはない。どちらも親指と小指が小さくなっていき、3本になった。
「あっ、頭がああァァッ、割れるゥゥ!イタィィィイイッッ!」
2対の角が"ギシギシ"と鳴り伸びていく。その間に蛇腹以外の部位に青い鱗が生え揃う。
最後に"メキメキ"と口と鼻前へ迫り出してくる。歯もだんだんと尖り、牙になった。
「ア、アガッ、ガッ、ギッ、キ、キュュウウウゥゥッッ!」
竜化が終わると同時に水竜特有の咆哮をした。初めて聞くがすごい甲高い声だ。
見た感じ体長は6m程だろうか。この洋式トイレの空間じゃとても収まりきらない。
「キ、キュウ?(だ……大地?)キュウアッ、キュウウアッ!(見ないで……見ないでぇ!)」
僕は一が何を言ってるのか分からなかった。なぜなら竜語じゃないからだ。これはただの咆哮で、何かしら言ってるとは思うが全く伝わってない。
とりあえず意思疎通ができるか試してみる。というかえらく冷静だな僕。
僕は見上げて人の言葉で話しかける。その表情は怯えに近かった。体も小刻みに震えてるし、涙まで流している。
「一、僕のこと分かる?分かるなら右手を上げてみて」
一は素直に右手を上げる。さっきの状況から恐らく咆哮以外何も発せないだろうと思い、ジェスチャーで確認した。
案外理性はしっかりしているようだ。さて、どうしたものか。
『な、なんと!生まれ変わりであったか!』
ここで久々のスカーレットの声がする。
『な……!スカーレット!今までどこに行ってたんだよ。生まれ変わりってなんだ?そもそもなんで断定できるんだ?』
『相変わらず質問の多いやつじゃ。どこってずっとお主の中におるわい。お主に拒絶されてからずっと寝ててな。生まれ変わりとは結構前に話したが、竜以外の生物が死ぬとごく稀に前世の記憶が残ったまま竜として生まれることじゃ。我が最近見たのは10万年前くらいじゃな。お主、こやつと過ごして竜力を感じなかったろう?それは我も同じじゃ。それ故に人間のイメージが強いのじゃ。つまり元は人間だったのではないかと思ったのじゃ』
確かに僕が竜になってから、一に何回か接触しているが、特に違和感もなく、竜力も感じなかった。それだけ人間へのイメージが強いということか。
『とりあえず元の姿に戻るよう言ってみてはどうじゃ?』
『そうしてみる』
「一、いきなりで悪いけど深呼吸して、自分の人間の姿を思い浮かべてみて」
「キュウ(分かった)……」
一は深呼吸をし、目を瞑り思い浮かべた。すると全身が青く光って弾け飛び、中から一が現れた。
「はぁ…はぁっ、戻れた……。一体、どうして……」
「一、今から聞きたいことがあるけど良い?」
「うん……」
一はその場にへたり込み力なく返事をした。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
学校名は清流輝情高等学校です。頭にパッと浮かんだ高校名が割と現実の方にあって、被らないようにするのが結構苦労しました。
ではまた。




