第1章 【始まりの日】
……カーテンの隙間から漏れる朝日で目が覚める。
「……ふあぁ………朝だぁ……。」
ベッドから起き上がり、カーテンを開ける。天気は晴天だ。
「……今日で夏休みは終わりか~。ん~……何しよう?」
クローゼットからお気に入りのワンピースを出し、着替える。
兄が最初の給料で買ってくれた水色のワンピースだ。
「ふふっ………お兄ちゃんは少々シスコンの気があるね……。」
自室を出て、一階に行く。
リビングに昨日作っておいた料理が置いてある。
「テレビテレビ……っと!」
リモコンを操作し、テレビの電源をつける。
「……もぐもぐ。」
天気予報を見ながら朝食をとる。
「……六日間は晴れか。」
朝食を食べ終わり、一日の予定を立てる。
とりあえず今日は高校の近くの図書館に行こう。
「よし、そうと決まれば行動開始!」
自室にポーチを取りに行き、家を出た。
「さてと………。」
「おっ、優美?どこ行くんだ?」
「あ、佐藤君。」
家の前でクラスメイトの『佐藤 友一』に声をかけられる。
「……図書館。佐藤君こそどうしたの?」
「暇だからランニングしてた。」
「佐藤君らしいね。」
佐藤君は居合道場の息子らしく、よくこういうことをしている。
「そうだ、暇だしちょうどいい。図書館まで付き合うぜ?」
「………。」
「どうした?」
「な、何でもないよ!?」
こういう真顔でイケメン発言するあたり、佐藤君だなぁ……。
顔もイケメンだし。
……結局佐藤君と図書館に来た。
「俺ってあんまり図書館とか来たことないな。」
「……案内しようか?」
「推理小説とかある?」
「あるよ。ついてきて。」
佐藤君を案内した後、図書館二階の料理本コーナーに来ていた。
「へぇ~……こんなのもあるんだ。今度作ってみよ。」
「おーい、優美~?」
佐藤君が上がってきた。
「何読んでるんだ?」
「料理本だよ。」
「お前料理得意だもんなぁ~。」
不意に携帯が鳴る。
「?……なんだろ。」
ポケットから携帯を出すと『天月 瞬』と表示されていた。
「ん?……お兄ちゃんからだ。……もしもし?」
≪もしもし優美か!?≫
兄の声だが、どこか焦り気味だ。
「どうしたの?」
≪おい優美!今どこにいる!?≫
「えっ?図書館だけど……?」
≪……発生源からは遠いな……。いいか、今から言うことを絶対に守れ。≫
すぐに状況を理解した。兄の様子は切迫した感じだった。
「うん。」
≪まず室内から出るな。それと、職員に頼んで図書館の窓を閉めろ。≫
「わかった。」
≪全て終わったら明日になるまでそこを出るな。いいな?≫
「オッケー。」
電話を切る。
「どうした優美?」
「佐藤君、とりあえず外に出ないで。」
「えっ?」
「私、ちょっとここの職員さんと話してくる。」
「お、おう。」
走って一階の職員カウンターに向かう。
「職員さん!」
「何ですか?」
「今すぐ図書館の窓を閉めてください!!」
「えっ!?何かありましたか!?」
「今、政治家をやっている兄から連絡があって、そうしろと……!」
「わ、わかりました。」
職員たちがドアや窓を閉めに行く。
「ん……?なんだなんだ?」
「なにかあったか?」
利用者たちが異変に気づき始める。
「……………!?」
ふと、外に違和感を見つける。
「おい、優美……あれって人か?」
佐藤君も気づいたようだ。
人が倒れている。それも一人じゃない。何十人も。
「何……っ!?」
「あれって……やばくないか?」
異様だ。外にいる人は誰一人立っていない。
「し………死んでる……?」
誰かがそう言った。
「嘘………。」
「マジかよ………。」
私たちは………ただ見ていた。
しかし…………誰も理解していなかった。
これが……………『絶望の始まり』だということを………。