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74 でかい〇〇

 受付のプリチャさんと別れて、俺たちはモンクットさんの先導のもと、ギルドの奥にある階段で上の方へ移動していた。


 階段は岩を削って作られた物や、木材で作られた物など様々で結構年季も入っていて老朽化で脆いところもあった。


 中は洞窟のように入り組んでいたが、所々に光る魔石が吊るされていて、歩くには十分なほど明るかった。


「あーそう言えば、えーと……」


 ふと、振り向いたモンクットさんが俺を指差し困った顔をしている。あっ……名前かな?


「俺、アルトって言います。よろしくお願いします」


「おぉ! そうだ、アルトちゃんか! よろしく頼むぞ! で、ちと気になってたんだが、頭の上に乗っているのは召喚魔獣だろ? 見た事ねぇ竜種みたいだし、アルトちゃんは召喚試験で特殊属性ってバレなかったのか? 収納魔法が使える特殊属性なんてすぐバレるし、商業ギルドのお偉方や貴族の連中なら喉から手が出るほど欲しがりそうな人材なんだがな……」


 モンクットさんは歩きながら不思議そうな顔をして俺を見てくる。


「俺は収納魔法は使えないよ、この召喚獣のムートが使えるんだ。言葉もわかるよ」


 ムートは頭の上でちょっと得意げに、首を持ち上げ鼻息を吹く。


「召喚獣が収納魔法!? 竜種ならブレス系や、その系統の魔法なんかを使えるとされているが……余程特殊だったか運が良かったんだろうな。それに言葉もわかるとは……長く生きてきたが、そんな召喚獣は見た事も聞いたこともねぇな……。まぁ、あまり他のギルドで収納魔法は見せびらかさねぇでくれよ? アンタは運輸ギルドの星だからな」


 モンクットさんは一瞬驚いた表情を見せるが、すぐにニカッと笑いサムズアップをしてきた。


 けむくじゃらのドワーフがサムズアップしても、あんまりカッコよくはないもんだな。


 目的地に到着するまで無駄話などしながら、モンクットさんにこれまでの経緯や、ムートの紹介なんかもしておいた。


 しばらく歩いて、少し開けた場所に到着した。


 その開けた場所の奥に鉄の格子扉があり、1人見張りみたいなドワーフが立っていた。


「おう、おつかれさん」


「おっ? モンクットさん? どうしたんだ? 空魔石はまだか? もう在庫も残り少ないぞ……というか、ちょっとまて!? ターニャじゃねぇか!? おいおい! どういう組み合わせだ!?」


 見張りのドワーフが、ターニャさんとモンクットさんを交互にみて驚いてる。


「今回はワシが依頼出して仕事としてきとるから問題ないわい。そう、慌てるな。それより天蓄所まで上がりたいんだが、すぐ行けるか?」


「まぁ、今は大丈夫だが……」


 門番のドワーフは、チラチラとターニャさんを見て落ち着かない様子で扉を開け、俺たちを中に入れてくれた。


 なんかドワーフの人達はターニャさんを警戒しているみたいだな……王都の冒険者ギルドのアーベンさんも、行かせられないとか言ってたけど、なんか因縁でもあるのか?


 格子扉の中は、四畳半くらいの四角い箱型で、入り口以外なんも無い部屋だった。


 ここで空魔石出せばいいのかな?まるで牢獄みたいだけど、空魔石ってここではこれ程厳重にしないといけない貴重品なんだろうか?


 周りをキョロキョロしてたら。


 ガチャガシャン


「え?」


 さっき入ってきた扉が閉められ、鍵をかけられた。


「おいおい!? なんで閉じ込めんのさ!? どうするつもりだ!?」


 鉄格子から手を出して鍵を開けようとしたが、子供の腕じゃ短くて届かない。


「アルトちゃん危ねえよ、とって食いやしねぇから下がってな」


 ポンポンと頭を叩かれ俺は後ろへ下り、モンクットさんが門番のドワーフと向き合う。


「ターニャは依頼が終わったら『ドンガッドに行く』とアイツに伝えておけ。それまで、じっとしてるよう見張っておけよ」


「あいよ、いってらっしゃい」


 門番のドワーフがコクリと頷いて、入り口に吊るされた紐を勢いよく引き、紐の先についた鐘が洞窟内に鳴り響く。


 しばらくすると、部屋がガタガタと揺れ出して、徐々に速度を増しながら上にせり上がっていく。


「おっ? うおおおお!?」


『ほう、天に動く箱とは、飛べぬ種族は面白い乗り物を考えるものだな』


 これってまさか……昇降機(エレベーター)? まさか、崖の中にこんなもんがあるとは。


「はっはっは!! 昇降機は初めてだろう!? 大抵の奴はビビってへたり込んじまうが、驚くだけとはアルトちゃんは大した玉だな!!」


「いや、それより閉じ込められたかと思ってビビったよ。急上昇はムートに乗り慣れてるから多少は平気だよ」


「そういや乗って飛べるんだったな、ちっこいのに大したもんだ! 次からは昇降機じゃなく直接運んでもらったほうが早いかもしれんが、アルトちゃんを死なせたくないから昇降機使ってくれよな! はっはっは!!」


 モンクットさんが豪快に笑うと、昇降機は更にガタガタと揺れる。

 やめて、この揺れは俺でもちょっと怖い。


『ふん、こやつもちっこいではないか……焼いていいか?』


「やめろください」


 しかし、結構長い事登ってるぞ。どこまで登るんだろう? この調子だと山頂まで行くのではないか?


 あと、モンクットさんが俺を死なせたくないとか言ってるし、結構危険な魔物でも出る所なのかな?


 まぁ、その護衛のためにターニャさん雇われたんだろうし、そこまで危なくはないだろう……あれ?そういえばターニャさんさっきから、ずっと立ったまんまで動かないぞ?


 まさか、ガタガタと不安定な振動の中、急上昇したから怖くて気を失ってるとか!?


 すぐにターニャさんを下から覗き込むと、思いとは裏腹に真剣な眼差しで何かブツブツ唱えて考えているようだった。


 まさか、これから待ち受ける魔物に対して、自身の集中力を高めているのか!? 護衛の仕事に対して集中する姿勢……C級でも流石は冒険者と言ったところ……。


「……終われば食い放題……終われば食い放題……終われば食い放題……」


 あっ……違う。これあれだ……涎垂らしてるし、飯のことしか考えてない顔だ。目がキラキラして周り見えてない状態になってるやつだ。


 ターニャさんの行動に呆れていたら、昇降機のスピードがだんだん緩やかになり、目的地に到着したようだ。


 モンクットさんが重い扉を開け外に出ると、突風と共に眺めの良い景色が広がっていた。

 どうやらここは、山の頂上付近みたいだ。


「さぁ、こっちだ。風が強いから飛ばされんなよ」


 モンクットさんはそう言って、荒く削られた幅が1mも無い断崖絶壁の道をズンズンと歩いて行く。


「怖えぇーー!! ムート落ちないように支えといてくれよ?」


『この程度の高さなど、飛んできた高度より低いのだから恐れる事もなかろう』


「いや、これくらいの方が恐怖心が出るというか……イタタタタタタッ!! 頭に爪立てるな!!」


「何やってるのアルトちゃん? ほら、行くよ。手つないであげるから」


「あ……ありがとう」


 おぉ……あのターニャさんが優しいお姉さんに見える。これはあれか? 吊り橋効果ってやつか?


 ターニャさんに手を引かれしばらく歩いて行くと、岩壁にポッカリと5m程の穴が開いている所に着いた。


 中に入ると、ある程度風は落ち着き、端の方に暖をとるためのストーブが置いてあった。


 真ん中には太い鉄の支柱の根元に、ごつくて大きな鉄の箱が備え付けられていた。


「おい! 起きろ! サボってんじゃねぇ!!」


 目をやるとモンクットさんが誰かを揺すり起こしているようだ。


 近づいてみると……。















「えっ?スライム?」


 そこには1mを超える巨大な黒いスライムがいた。

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