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63 ムートとお話

ここまでのあらすじ。

魔獣召喚試験で王都に来たアルト達、入都する際に鑑定魔石が暴走して騒ぎになってしまう。

ミーシャの知り合いのチューバ爺さんやトランさんに助けてもらい王都に入る事ができ、運輸ギルドからスカウトを受け宿に到着。

試験では盛大にやらかした後不合格。ソプラの召喚が王前の儀で行われる事になり、王城へ行くもそこでもやらかしまくる。

王前の儀は無事に済むかと思いきや、召喚獣が暴れ出しソプラがピンチ!助けに向かったら何故かバハムートを召喚してやっとタイトル回収。


「……んぶ…………んん……んんん? ……ぐっ!? ブハァ!?」


『おっ? 起きたな』


 朝の心地よい温もりの中、息苦しさを感じベッドから飛び上がり朝を迎えた。


「はぁっ! はぁ! はぁ! 何が起きたなだ! 顔の上に乗るんじゃねぇ! 窒息死するわ!」


『お主がなかなか目覚めぬから、起こしてきてくれと青髪の娘に言われたのだ』


「ソプラが!? ……あっ」


 窓から外を見ると、既に日はかなり高くまで登っていた。


 * *


「おはようアルトちゃん! よく寝れた?」

『クックゥ!』


「おはよう、寝すぎたくらいだよ。でも、ムートの起こし方が酷かったせいで目覚めは最悪だけどね」


『お主、揺すっても何をしても起きなかったではないか。我のせいではないぞ』


 階段を降りると、食堂で朝食の後片付けの手伝いだろうか? ソプラがテーブルを拭きながら挨拶をしてきた。他のみんなは何やら厳つい目をして、テーブルを囲って俺を見ている。


「ムートちゃんの言う通りだよ。わたしも頑張って起こしたんだけど全然起きないんだもん。クーちゃんの鳴き声で起きなかったの、アルトちゃんだけだよ?」


「やっと起きてきたのね、あの鳴き声で起きないとか信じられないわ……」


「あの鳴き声の中、寝れるお前の神経がわからねーよ」


「がはははは! 動じねぇ肝っ玉はバハムートより上みてぇだな! がはははは!」


「アルトちゃん鼓膜大丈夫? みんなの声聞こえてる?」


「え?」


 どうやらニワトリのクーちゃんの朝の鳴き声は、かなりの音量と高音だったようだ。この付近一帯の人が飛び起きて早朝から一騒動あったようで、ソプラと起きたみんなで起こしてしまった人達に謝りに回り、召喚獣の躾をキッチリするように注意されまくったようだ。


 だから朝食が遅くなり、こんな日が高くなっているのに食べ終えたばかりだったんだな。


 少し冷めた朝食を終えたあと、くつろいでいたら、チューバ爺さんの使いの人がきて王城に行く事になった。


 ドーラは、しばらく俺に関わりたくないとの事だったので宿でお留守番になった。よほどバハムート召喚した時の恐怖が応えたらしい……。なんか、ごめん。


 * *


 王城に到着した後、直ぐに城内に案内され、王前の儀の打ち合わせで使用した広間に案内された。


 そこには凛とした立ち姿のレガートさんと……。


「遅い! 待ちくたびれたわ!」


 なぜか腕を組み、仁王立ちで待ち構えていたシアンがいた。


「いや、俺らも今やっと到着したとこだし」


「シアン様! ご無事でなによりです!」


 ソプラがシアンの元に走り寄り、無事な事に喜ぶ。


「それはこちらのセリフよ! 私の召喚獣のせいで危険な目に合わせてしまって、ごめんなさい。貴女は怪我はない?」


「お気遣いありがとうございます。わたしは大丈夫です」


 シアンが少し悲しい目をしながらソプラの頭に手を置き、危険に晒してしまった事に謝っている。貴族だけど自分の非を認め、平民のソプラにもちゃんと謝るとは……何か裏でもあるのか?


「で、シアンはなんでここで待ってたんだ? チューバ爺さんに呼ばれたの?」


「っな!? 貴女は本当相変わらずね!! チューバ様を爺さんなんて!! そこのバハムートさえいなければ、私の召喚獣で直ぐにでもペシャンコにしてさしあげますのに!!」


 シアンがビシッと人差し指を俺に向けながら、青筋立てて怒ってくる。


「いやーそれほどでもー♪」


「褒めてませんわ!!」


 うんなかなか、からかいがいのある子だ事。でも俺の質問は無視されてしまった。早く中に入りたいんだけどな。


「シアン様は御二方の安否をご心配されていまして、ここに1時間前からお待ちになっておられました」


「んにゃ!?」


 レガートさんが美しい姿勢のまま、しれっとバラしてくれた。シアンもまさかの不意打ちに顔と耳が真っ赤に染まる。


 なんだ、身分関係無く普通に心配してくれるなんて、貴族だからと疑ってだけどちゃんといい子じゃないか。


「ちちちちち、違うから!! 心配なんてしてないんだから!! ちょーっと城内を歩いてたら、貴女達を見つけて声かけただけだから!! かっかかか勘違いしないでよね!!」


「そうですよー、今回の騒動の始まりは自分なのに全ての責任を貴女達に押し付る格好になってしまった事に、一晩中頭抱えながら悩まれて、一睡も出来ず、凄い寝不足なんですから! 勘違いしないでください!」


「んみゃあぁあ!? パレットォォォォ!?」


 いつのまにか巨乳メイド様がシアンの後ろに陣取り両肩をガッシリ捕まえている。


「なぜここに!? 見つからないよう、細心の注意を払って抜け出したのに!?」


「シアン様の行動は、まるっと全てお見通しですから♪ さあ、帰りますよ」


「ぐぅ!!」


 そうして、シアンは涙目で俺を睨みながら、巨乳メイド様の小脇に抱えられ、連れされていった。


「シアン様、わたし達の事心配してくれてたみたいだね」


「弄りがいがあって、いい子だよな」


「あんたにはもっと敬意ってもんを勉強させないといけないわね」


『なかなか騒がしい娘だったな』


『クックゥ』


 みんなでドナドナされていくシアンを見送った後。


「ではアルト様、ソプラ様、カルロス様中へお入り下さい」


 レガートさんが、さっきまでの事は何もなかったかのように、見事な所作で扉を開けてくれた。この人全然動じないなぁ……なんか凄い。



 * *



 中に入ると空気が変わった。


 俺達が来た時とは違い、会議のような長いテーブルの両側に、王前の儀で見かけた貴族や他国の来賓、他にも各ギルドのギルドマスターであろう人物が、それぞれの顔色で俺達を凝視していた。


 あれ?チューバ爺さんがムートの話を聞きたいって言ってたから、てっきりチューバ爺さんだけかと思ってたのに……どうも話がしたいのは他にもいたようだ。


 しかし、重い。威圧感というか、空気が詰まってるというか、ピリピリとした緊張感がこの部屋には張り詰めている。


「アルトちゃん、ソプラちゃん召喚疲れが残ってるのに急に呼び出して悪かったのう。さあ、こっちの席へ」


 チューバ爺さんがいつになく真剣な表情で俺たちを席に案内してくれてた。今まで見ていたひょうひょうとした感じとはえらい違いだ。


 ってちょっとまって。俺の座った席、テーブルの端の席なんですけど……長いテーブルの先に目をやると王様座っていらっしゃるんですが!?


 全員が俺と頭の上のムートをチラチラと交互に見てる。


『なんだこいつらはジロジロと嫌な目で見おって。アルト、焼いていいか?』


(ダメに決まってんだろがこんちくしょう!! とりあえず大人しくしてろ!! なんか空気がやばそうだから!!)


 顔に愛想笑いを貼り付けつつ、ムートがやらかさないように心の中で会話して制止させておく。


 ソプラはこの緊張感の中、ひどく怯えたように俺とミーシャをチラチラと見ている。


 ごめんなソプラ、俺もこんなんだとは思ってなかったよ……。


 そして、チューバ爺さんが席に戻りムートに話を聞きたい方達の、お話という名の尋問が始まった。

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