3 俺の現状
目覚めて数日が経った。
どうやら俺は前世の記憶を持ったまま生まれ変わったと理解した。
なぜか話している言語はわからないが理解はできる、おかげで話している内容から現状が多少把握できた。
父親はダン、母親はシーラ、その一人娘アルトが俺だ。
現在、俺は詳しい年齢はわからないが一歳前後くらい、住んでる所はイリス村と言うらしい。
かなり田舎と思うが文化があまり進んでいないようだ、電気もガスも水道も無さそうだ。
しかし、それを補い、苦も無く生活ができている要因に気づいた時、最も驚いた。
なんと魔法を使っているのだ!
シーラがランプや薪に火をつける時、一言二言呟くと小さな火の玉が出来て明かりが灯る。
最初はマジックかとも思ったが普段の生活の中で使用する利点も無い。
他にも俺が粗相した時にオムツを洗うため、タライに水を溜めたり。
空気の入れ替えも窓を開けて空気を巡回するように風を起こした。
どうやら一般レベルにも魔法が定着しているようだ、こりゃ便利。
俺にも使えるかと試したがまだ無理だった、どうやらコツがいるらしい。
早く使ってみたい! 40代のおっさんでも少年心をくすぐるような魔法が使える異世界。おら、ワクワクしてくっぞ!
それから毎日、やる事もないので魔法を使えるか試す事に明け暮れた。
* *
一年が過ぎた頃だろうか、小さなピンポン球くらいの水玉を作る事に成功した。
まだ、寝返りと少し這いずりができるくらいな為もっぱら仰向け状態が多い。
そんな状態で手を上に出し、水玉よ出ろ〜! っとイメージを膨らませ念じるだけだったがついに成功した!
なぜ水玉かと言うと、火は燃えたら逃げられないので却下、風は使えても目視出来ないので確認出来ないので却下。
必然的に見たことのある魔法で、練習できそうな物は水玉だったのだ。
そもそも詠唱呪文はあるがよく聞き取れないし、俺はまだ喋れない。
ならば、漫画からのイメージでなんとか出来ない物かとやってみていたのだ。
嬉しさのあまり「やー!!」っと声を出した瞬間水玉が俺の上に落ちて下腹部が濡れてしまった。
それを聞きつけシーラがパタパタと駆けつけてドアを開けて入ってきた。
「どーしたのアルト!? あー、漏らしちゃたのねー。よしよし。ん? おかしいわね? 中は濡れていないわ?」
シーラがオムツを取り不思議そうに首をかしげる。
毎度、美人のシーラにオムツを替えてもらうのは、いけない興奮を覚えるのだがこの体にはそれに反応するアンテナがない。非常に残念だ。
しかし、水玉魔法を成功した方の興奮がこの時は勝っていた。
魔力的な物を使ったからなのか、出すものを出して興奮したからなのか眠気が襲ってくる。
俺は高揚感の中、躊躇いもなく眠り込んだ。