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26 要注意人物

遅くなりました。

 ベルンの町を出て1週間、ようやく王都へ到着した。


 外壁はレンガを積み上げられた要塞のようで30mくらいあるだろうか、壁の上には見張りらしき人が数人いる。

 外壁はどこまで続いてるのか、両側の端は見えなかった。


 正面には高さ10mはある両開きの外門が大きく開門され王都の真ん中にあるであろうお城がよく見えた。


「うおー! でかーい! ソプラ見て! でかいお城!」

「本当! 素敵なお城!」

「王都なんだからでかいのは当たり前だろ? まあ、俺は一度来たことあるから驚かないけどね」

「ほら、あんた達。入門審査するからおとなしくしな!」


 よく目立つお城は、周りの建物より格段に大きく、ブルーを基調とした先の尖った屋根が特徴的なお城だった。

 某夢の国にあるシ◯デレラ城によく似ている。俺でさえ遠目でも見惚れる程の綺麗な城だ、これは女子にはたまらないだろう。


 門の前には荷馬車の列とは別に小さいゲートが5つあり、その前に行列ができている。


 荷馬車の列に並んでいると若い衛兵の男が近づいてきて手綱を持っているミーシャに声をかける。


「失礼! 訪問目的は行商ですか? 観光ですか?」


「いいえ、この子達の召喚魔獣試験の為です」


「では試験参加者は別ゲートになりますので紹介状の提示をして、1番右のゲートをご利用下さい。護衛の方はこのまま並んでいただいて結構です」


 そういうと一礼して次の荷馬車に向かって行った。


「みんな、試験参加者は別ゲートだそうだから向こうに並んで。入門審査が終わったら中で落ち合いましょう」


 ミーシャが預けていた三人分の紹介状を渡してきた。


「了解! ソプラ!早く行こう!」

「あっ! アルトちゃん待ってよー!」

「ちょっ!? 置いて行くなー!」


 俺は紹介状を受け取るなり、荷馬車を飛び降りてゲートに向かった。




 * *




「ここに並んでる子供、全員試験参加者なのかな?」


 ゲートの列には10才くらいの男女ばかり並んでいた。

 だが、その身なりはほとんど自分達とは違う貴族っぽい格好だった。


「多分そうだよ。でもほとんどは貴族の人達みたいだね……」

「ふっ……ふふん! こ……これれくらいでき緊張してると、ささ先が思いやられるるぞ!」

「ドーラ……お前が1番落ち着けよ……」


 俺らが列の最後尾でゴタゴタしていると前の男の子が振り返って声をかけてきた。


「なんだ? ここは召喚魔獣試験参加者だけのゲートだぞ? 平民の入門審査は向こうだよ」


 そいつはいかにもな貴族で、煌びやかな服装で指には宝飾品をはめ、金髪の長い前髪を右手でかき上げて、見下すような視線で俺達に言い放った。


「あっ……私達も試験参加者です……」


 まだベルンの町の人以外とは免疫の無いソプラがおずおずと答えた。


「へぇ……珍しい。試験に参加するのであれば平民としてはそこそこの魔量を有しているみたいだね。……ん?それはいいとして君なかなか可愛いじゃないか、今夜うちの宿に来るといい、平民じゃ一生かかっても食べれないご馳走を食べさせてやるよ」


 下卑た笑いを浮かべながらソプラを舐め回すように見る。


「ふえぇ!?……あっ……いや……私は」


 ソプラはそんなこと言われるとは思ってなかったようでワタワタしている。


 そこへ2人の間に金髪の女の子が割って入り睨みをきかせる。


「俺の目の前でソプラをナンパしてんじゃねぇよ! 貴族でも容赦しフガフォ!」


「バカ! 貴族に喧嘩売ってんじゃねぇ! すいません! こいつアホでして!」


 俺が今にも殴りかかろうとしている所に、やばい空気を察したドーラが俺を羽交い締めにして口を塞ぎヘコヘコ貴族のガキに謝っている。


 ふざけんな! 貴族だろうがなんだろうがソプラに下卑た視線向けただけで許さねぇ! それに、こいつは格好からして成金だ。そして、小悪党臭さがプンプンする、俺がムカつくタイプのクソガキだ。


「おーおー威勢のいい小娘だ、平民はやはり野蛮だね。ここが僕の家の領土なら僕にそんな口叩いた時点で父さんに頼んで百叩きの刑にでもなっているところだ。しかし、命拾いしたね……今は試験前だし、騒ぎを起こすと試験にも影響するからね。まあ、平民なりにいい家畜を召喚してくれよ……あぁ、そこの青い髪の君は試験の後はうちに来てもいいよ。ナリンキン男爵といえばわかるかな? 待ってるよ」


 そう捨て台詞を吐いて、奴はさっさとゲートをくぐって行った。


 ドコッ! 「グフゥッ!!」


 俺は、力任せにドーラの腹を肘で突き拘束を解いてドーラの胸ぐらを掴む。


「ドーラてめぇ! 何すんだ! 殴るぞ! それにあいつめ! ソプラに下卑た目しやがって! 何が試験後はうちに来てもいいだ! ふざけんな!!」


 俺の怒りのボルテージが上がってギリギリとドーラを締め上げる。


「ぐっ……ちょ……もう殴って……待って……」


 ドーラが必死に腕をタップしているが、だんだんと白目になっていき、タップも弱まっていく……。


「あっ! アルトちゃんストップ! ストップ! ドーラ君死んじゃうよ!」


 ソプラが俺の腕を掴みストップをかけたとこでやっと我に返りドーラを離した。

 ドーラはその場にヘタリ込むように尻もちをつく。


「ぶはっ! はぁはぁ! この野郎! 殺す気か!」


「そんな事よりあいつ何処のどいつだよ? 殴ってくる」


「仮にもシスターが俺の生死をそんな事で済ませんなや!」


「いや、割とどうでもいいから」


「身も蓋も無い!!」


 絶望感溢れる顔でドーラが叫ぶが正直どうでもよかった。


「はぁ……全くお前はソプラちゃんの事になると見境なくなるの、なんとかならないのか? でも、あいつには手出すな。これは本当に忠告だ!」


 ドーラがいつになく真剣な顔で説明してくる。


「あいつは多分、ここ10年で私財を大幅に増やし男爵まで登りつめたナリンキン商会の会長、ナリンキン男爵の一人息子のナリンキン・ナリーだ。ナリンキン男爵は強欲で金で買えないものでも、

裏で手引きをして必ず手に入れるとか黒い噂があるやつさ。その後ろ盾がある一人息子にちょっかい出せば色々面倒になるから関わらない方が身のためだ」


「へー。如何にも殴りたいやつだな。殴ってきていい?」


「お前は人の忠告を聞こうとする耳ついてんのか!?」


「アルトちゃん……私はなんとも思ってないから殴っちゃダメだよぉ」


「いや、さっきのやつの口ぶりだとソプラちゃんを試験後に無理矢理連れて行く可能性もある。要注意しておかないと……」


「……やっぱ殴ってくる……」


「「やーめーてー!!」」


 俺は止めようとする2人を引きずりながら入門ゲートに向かった。

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