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23 王都へ出発

 朝早くから召喚魔獣試験に向けて荷馬車に旅の荷物を乗せて出発の準備をするアルトの姿があった。


 昨夜はそわそわして寝付けなかった。

 まるで、遠足前の小学生の気分だ。


 服装はいつもの修道服ではなく、ミーシャがこの日の為に用意してくれた服だ。


 白のシャツに、少し長めの生地が丈夫な茶色のカーディガン。皮の腰巻にはベルトが2本付いており、しっかりと固定が出来るようになっていて、腰を囲うようにグルリと小さな小箱が6つついている。左の腰には旅中の対魔物用にショートソードをさげて、大きなポケットが付いている綿の黒っぽいズボンをはいている。靴は皮のロングブーツでいつも履き慣れているものを選んだ。


 昨夜、ソプラはシーラから指輪を貰ったが俺には無いのか?とダンに迫ったら、いつも巻いている赤のバンダナをくれた、それで長くなってきた髪を縛り、ポニーテールにした。


 格好からすると魔術士と言うより冒険者みたいな服になったが気にしないでおこう。


「アルトちゃん、お待たせ〜」


 少し寝ぼけ感がある声に、振り向くとソプラとミーシャが歩いてきた。


 ソプラは袖と胸元に白の刺繍が入った黒のロングワンピースに前が空いている茶色の皮のベスト、腰には太めのベルトをして小箱が3つ付いている。靴は俺と同じ皮のロングブーツ。左の人差し指にはシーラから貰った指輪があり、瞳は青からブラウンに変化していた。


 ……めっちゃかわいい!普段の修道服からのギャップがたまらん! 初めてのデートで、少し背伸びしました感がヤバイ!


「ソプラ! めちゃくちゃかわいい! 抱きしめていい!?」


「えぇ!? 別にいい……いや! だめ! アルトちゃんなんか変な目してる!」


 そういって、ミーシャの後ろにサッ! と隠れてしまった。ああん……


「ちぇっ……残念。それより……ミーシャのその格好はどうしたの?」


「あら? そんなに変かしら? 昔はこれでシーラと世界中を回ったのよ。それに王都に行くんだもの、修道服は動きにくいでしょ?」


 ミーシャは髪はオールバックにして後ろでまとめてあり、黒のロングシャツに紋章の入った銀の胸当てとコテ。厚手の大きなポケットが付いたグリーンのズボン、ベルトには小箱が5つついて、護身用の装飾があるショートソードを付けていた。


「へー母さんそんな事一言も喋ってなかったなー。ミーシャ似合ってるよ! カッコいい!」


「ありがとう。本当はドレスでも着たいんだけど、身内がオカマだとバレたら試験に響くかもしれないじゃない? こんなゴツゴツで可愛くない服は早く着替えたいわ……」


 喋らなきゃ完全に高身長の男前でカッコいい……体をクネクネするな! なぜオカマなのだ!?


 試験会場になる王都までは馬車で1週間の距離だ。

 なので、旅に必要な物はだいたい昨日の内に荷車に乗せておいたのだが……。


「ねぇ……3人分の荷物にしては多くない?」


「当たり前よ、4人で行くんだから」


「え? 俺とソプラとミーシャとあとは誰?」


「ドーラよ」


「げぇえ!? ドーラ!? なんであんなやつと一緒に行かなきゃなんないんだよ!」


 俺は目を見開いて訴えた!


「町には王都まで護衛できる人って私くらいしかいないもの、それに二手に別れて私や護衛できる人がいない間も町を守る人が不足したらダメでしょう?」


 ごもっともだ……てかドーラと一緒か……先行き不安になってきたぞ……。


「アルトちゃんしょうがないよ、それに仲良くなれる機会かもしれないし……ね?」


 ソプラが、心配そうに眉根を寄せて上目遣いで見てくる。


 ソプラさん……それ反則です。なんも言えなくなります。ソプラの心配していたのに当の本人がこれだったら嫌とは言えないよ。


「わかったよ……仲良くなれるようには努力するよ……」


「へへへ、アルトちゃんのそういう所、好きだよ」


 ソプラがニカっと笑う。はい、諦めました、全力で仲良くなりにいきます。


(アルトもソプラにだけは弱いのよねー……)




 * *



 三人の身支度を済ませて、お昼前にドーラと合流した。


「おい! お前ら! 試験までの道中俺に迷惑かけるなよ! 特に男女!」


「んだとぉ!? 俺の名はアルトって何回も言ってんだろうが! 3文字も覚えられないのか!? このアホが!」


「んなっ!? ふざけんな! 覚えるほどの奴じゃねぇんだよ! バーカ!」


「おや? また泣かされたいのか!? おぼっちゃま? あーん!?」


「やってみろ! 今度こそ返り討ちにしてやる!」


「「グルルルルルル……」」


 互いを睨みながら喧嘩しそうな雰囲気の2人を見てソプラとミーシャはこう思う。


((やっぱりこうなるよねー……))


 王都までの1週間の旅に深い溜息をつく2人であった。

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