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203 参拝前

『おぉおおおおおおおおお!! これが食祈祭か! 屋台がどこまでも続いておるようだ!! アルトよ! 早くっ!! 早く食わせるのだぁあ!!』


 朝の準備を済ませて繰り出すと、頭の上でシッポをブンブン振り回しながらムートがはしゃぎまくっている。


 それもそうだろう、俺たちは食祈祭に参加すべく祭りのメインストリートを歩いていた。


 普段馬車が行き交う大通りが全面開放され両隣には様々な屋台が並んでいて匂いや目で楽しませてくれる。


 だが、今ここで食べるわけにはいかない。この祭りに参加するにはますばやらなければならない事があるのだ。


「待てムート!! まずはターカ様への参拝が先だっつてんだろが!! それとヨダレを止めろ!! 汚ねぇ!!」


『こんな通りを食わずに通り抜けるなど生殺しではないか!! 朝飯も食わず、なぜそんな事せねばならぬのだ!? 我はしゅーきょーなどに興味などない!! 早く食わせろ!!』


 そう、食の神様ターカ様への参拝だ。


【食事に感謝をする】という当たり前のことを年に一度再認識して今年の豊作を願うお祭り食祈祭。


 この日の参拝の形式は、朝から参拝するまで水以外は口にしてはならず、清い体でターカ教本殿に赴き、祀られているターカ様の御神体へ祈りを捧げてから食事を行うという流れだ。


 しかし、参拝まで食欲という煩悩を戒めなければならないのだが、朝から腹ペコ状態でこの通りを抜けるのはかなり酷だ。


 香ばしくスパイシーな肉料理、酸味の効いた野菜の漬物の串、鼻先をくすぐる深いスープの匂い、どれも胃を刺激してたまらない。


 参拝前に食事をすると身を汚したとして一年間食事に恵まれないが、この誘惑に耐えれば耐えるほど一年間食に恵まれるということとされている。


 だからどの屋台もこぞって良い参拝ができるよう、客へ死ぬほどうまそうな食事だぞとアピールをして煩悩を奮い立たせてくれるのだ。


 つまり、食欲が強ければ強い程参拝前は酷なお祭りになっている。


 暴れるムートの口を押さえつけながらふと思った。


 ムートでこの状態なのだからターニャさんはどれほど酷いのかと思ってたら、意外と普通に歩いて……る?


 いや違う、よく見たら溢れ出す唾液をゴキュゴキュ飲んでる。めちゃくちゃ喉なっていらっしゃる。


 なんなら左右の手足同時に出てるし、目は一点を見据えて瞳孔開きっぱなしだ。


 すげぇ煩悩と脳内で激戦しまくってるわコレ。


 今話しかけながら鼻先に串肉でも近づけたらどうなるんだろう? とイタズラ心がチラチラしてると。


「アルト、ちゃんとバハムート抑えてなさいよ? 今日は特別な日なんだから」


「うっ、おおぅ。わかってるよミーシャ」


 シスター服に身を包んだ野太い声の大男ミーシャがその様子を見てか俺に注意してきた。


 今日は流石に口まで覆う布で顔を隠しているが、この人昨日まで魔球の監督してた元王宮近衛兵第1隊隊長にして魔球界の伝説カルロス・エーリッヒ様なんだよなぁ……。


 んー過去に何があったかはよくわからんが改めて不思議な人だ。


 一応俺もターカ教のシスターなので今日はシスター服に身を包み祭りの手伝いをしつつ満喫する予定なのだが一番の楽しみは……。


「ふふふ、ムートちゃんはやっぱり食いしん坊さんだねぇ。でも、我慢した方がもっと美味しくなるから頑張ろうねぇ♪」

『クックゥ』


 ぬはーーっ!!!! 超久しぶりのソプラのシスター服ぅうううううううう!!!!!!!!


 一緒に住んでた時は見慣れてたけどやっぱり久しぶりに見ると可愛さが激増しております!!


 ちょこんと出た顔と笑顔を見せた時のエクボとぷっくりとしたピンクの唇がもうたまりません!!


 このままそのピンクの果実を食べてしまいた……っは!? いかんいかん! 食欲以外の煩悩が支配しようとしている……ソプラの可愛さは凶器レベルだわ。


 そんなこんなで俺、ソプラ、ミーシャ、ターニャさんの4人で参拝へ向かっていると、先の方で何やら騒ぎが起こっているらしい人混みを見つけた。


「こんなクソまずい料理なぞターカ様への冒涜だ!! 今すぐ屋台、いや店畳んで出て行け!!」


 おやおや、朝っぱらから穏やかじゃないですなぁ。

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