2 俺は誰?
ほのかに光を感じ俺は目覚めた、どうやら死なずに済んだらしい。
暖かいベッドのような所に寝かされている感覚、甘くミルクのような匂い、天井は意外と高く、木の枠で囲まれているようだ。
いったいどれくらい寝ていたのだろう。
事故の後遺症だろうか? 体がうまく動かないし声も出ない、動くには動くのだが意識してなんとか指が動くくらいだ。
誰か呼ぼうにも「うー。うぁー」と呻き声くらいしか出ない。
骨髄損傷による不随状態か……または意識障害か……。
事故の代償とは言えこんな状態で生きていけるのだろうか……。
そんな暗い未来を想像していたらガチャ! っと近くのドアが開く音がした。
「あらあら、起きちゃったの? でも泣かないで待ってるなんてお利口さんねー」
金髪だ! 外人さんだ! すごいおっぱいだ!
目の前にきた人は俺の介助をしてくれていたのか、優しい笑顔を浮かべこちらに話しかけてくる。
金の少しウェーブのかかった柔らかそうな髪、北欧系の整った顔立ちながら目が大きく幼さも残っていそう、年は20代前半だろうか?
そして何より胸だ! 大きく胸元が開いた服から溢れ落ちそうなくらいの豊かな物をお持ちでいらっしゃる。
決して俺はおっぱい星人では無い、むしろ尻が良い俺としても流石にこれは釘付けになってしまう。
「おぉ、起きたのか?」
彼女の横から栗毛色の短髪の男性が割り込んで来る。
年齢は女性と同じくらいだろうか、身長は頭一つ高めの爽やか系イケメンだ
(この人が主治医の人かな? でも病院って感じでもなさそうだな……)
そう、2人とも白衣ではないのだ、どちらかと言うとハ◯ジに出てきそうな遊牧民系統の服を着ている。
最近の病院は制服も個性的な物が増え、コスプレみたいな物も増えていると聞いたことがあるがこれは衛生的にありなのか?
「ははっ、やっぱりシーラに似てかわいいなぁ」
イケメンが顔面くしゃくしゃで鼻の下を伸ばすように言ってくる、はっきり言ってイケメンでもキモい。
「んもぅ、ダンに似て顔立ちがいいのよ」
おっぱいさんが照れながらイケメンに肘鉄をする。
どうやら会話から推測すると、おっぱいさんはシーラさん、イケメンはダンさんと言うらしい。
てか、なんでこの2人はこれ見よがしに俺の前でいちゃいちゃしてんだ? 喧嘩売ってんのか!?
文句言ってやろうと声を出すが「うぁー! うー!」と唸り声しか出ない。こんちくしょう!
「まあ、この子ヤキモチ焼いてるのかしら? はいはい、ごめんねー」
シーラさんにひょいと持ち上げられる。
おっぱいが! おっぱいが! おっぱいが! おっぱいがぁー!!
顔面に伝わる張りがありながら重量のある感触、温かくて甘く優しい香り、ここは天国に一番近い場所なのかもしれない。
いや、それよりも驚く事がある。
持ち上げられた!?
俺も一応、成人男性だ。体重60キロ以上は楽にある、いくら入院して体重が減ったからと言って、こんな簡単に持ち上げられられるものか!?
それよりなんだか体の比率がおかしい、抱き抱えられている感触から両手の中に頭から足まで収まっているようだ。
突然の出来事とおっぱいの感触に混乱してキョロキョロしているとダンが顔を近づけてきて頬を突きながら衝撃の一言を告げてくる。
「母さんに父さんを取られると思ったのかな? 我が『娘』ながら、アルトのヤキモチ焼きは母さん似だなー」
(はあぁあぁあ!? 父さん母さん!? アルトって誰!? てか娘ってなんだ!? いったいどういうこったー!?)
俺はシーラとダンの娘、アルトとして生まれ変わったのだった。
ご高覧いただきありがとうございます。
プロローグに出てきたバハムート、実は……20万字後に出てきます。
「そんなに読んでられるか!」
「騙したなこの野郎!!」
「さっさとバハムート出せや!!」
と言う方は各章の頭に、簡単なあらすじを記載しておりますので、ショートカットされたい方はそちらからでもどうぞ。
もちろん、全て読んで頂けると嬉しいです。
本腰が入るのは4章からです。
よろしくお願い致します。