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193 立てマース!!

 湧き上がる歓声の中、俺はなす術もなく敬遠させられてしまった。


 一応、つべこべ言わず勝負しろ! と大声で叫んでみても、会場の空気と視線は痛々しく俺に突き刺さるものばかりだった。


 クソッ! 完全にやられた。ジャビッツまんまとは強打者の俺との勝負を避け、観客を味方につけつつ勝ち目のあるマースとの勝負ができる。


 こうなったらもうマースにかけるしかない!頼むぜマース!キャプテンの意地ってもんを見せ……。


 そう檄を飛ばそうと視線を送ると、バットではなく自分の尻尾を握りしめ、プルプルと小動物のように震え、小さくうずくまるマースの姿があった。


 ダメだ! 完全に怯え切ってやがる!


 やばい……どうしよう。



 * *



 ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイッスーー!!!!!!!!


 僕は今、人生最大のピンチに立たされているッス。


 何で僕に打席が回ってくるんッスかーー!?ここはアルトちゃんが一発大逆転サヨナラホームラン、もしくは出塁したら強制進塁ルールでごり押しホームインの手はずだったのに!


 アルトちゃんは自信満々だったし、カウウだってそれにかけて死ぬ気の死球で出塁したのに……。


 全身の汗腺から汗が吹き出し、頭が真っ白になり思考回路が機能せず、震えが止まらない尻尾を強く握りしめる。


『2番、ショート、マース』


 ビックゥーーッ!!!!!!


 アナウンスと共に球場が更に湧き上がる。


 僕はなすがままフラフラと吸い寄せられるように打席に立つ。


 ふとジャビッツを見ると何かこっちに向かって叫んでるけど何も聞こえない。


 僕は一体何をしているんだろう? なぜ打席に立っているんだろう?どうしてこの場にいるんだろう?


 頭の中は台風でも吹き荒れているかのようにめちゃくちゃだ。


 そんな時『マース! 構えろ!!』と声が聞こえた瞬間腹部に激痛が走り、僕は後方に吹き飛ばされた。


「ぐはぁ!! ゲホッ!! ゲホッ!!」


 痛みで我に返った僕は、今試合中だという事を思い出した。


 いったい何をやってるんだ!! 早く立て! 立たないと試合が終わってしまう!!


 くそぅ!! こんなところで試合終了にしてたまるかッス!


 だが、腹部にめり込んだ球のダメージは甚大ですぐに立ち上がれそうにもない。


 そんな悔しさと痛みでもがいているところに手を差し伸べてきた人がいた。


「バ、バルガウォールさん?」


 僕はその手をとり、なんとか立ち上がった。


「ゆっくり深呼吸しろ。今のが戦中ならば死んでいる、戦士たるもの気を抜くな」


「え? あ……は、はいッス!!」


 無骨でそっけなくかけられた言葉だったけど僕が落ち着きを取り戻すには充分だった。


 ベンチを見るとみんなが今にも飛び出しそうにしながら僕に檄を飛ばしている。


「負けんなキャプテン!!」

「マースなら打てる!! 信じてるぞ!!」

「死んでも打て!!生きて返ってくるのはホームベース踏んでからにしろ!!」


 頭の中がクリアになっていく。


 苦楽を共にした仲間が僕を奮い立たせ救いあげようとしてくれている。


 僕はみんなの希望なのだ。キャプテンとしてそれに答えなければならない。


 やれるのか? じゃない。


 やらなきゃいけないんだ!!


 足の先くら頭の頂点へ向かい体内を何かが一気に駆け巡った。


 もう、間抜けな姿は晒さない。


 勝負だジャビッツ!!!!

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次回更新10/30になります。

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