185 不思議な膨らみ
逆転を許した9回の表。まだジャイオンズの攻撃は続く。
「やっぱり最後はジャイオンズの勝利!! 間違いない!!」
「なるほど、最後の最後で逆転して俺たちを楽しませようという作戦だったのか。憎い事するねぇ」
「こんなにスカッとする試合は久しぶりだぁ!!」
客席では、今まで溜め込んだ鬱憤を晴らすかのようにジャイオンズファンが絶叫にも似た声を上げる。
流石は天下のジャイオンズ。甘くはないッス。
残りアウトは一つ、なんとか凡打にして裏の攻撃に全てを託すしたいけど、後1アウトが……遠い。
「……まだ諦めたような目はしてねぇんだな」
次の打席に入るバッターが風魔法で僕に声を届けてきた。
「もういい加減諦めな。てめぇの球では俺らは一生かかっても打ち取れねぇよ」
「そんなのやってみなきゃわかんないッス!」
「いや、無理だね。このままダラダラと連打を浴び続けて一生終わらない魔球試合になっちまう。俺はそんなだらけきった試合は望んでねぇ。だから特別にプレゼントをしてやろうと思ってな」
「プレゼント?」
「そう、今から俺が誰か真正面に打ってやる。流石に真正面ならお前らでもアウトは取れるだろう?」
願ってもないプレゼントッスけど、相手の顔はニヤニヤしていて完全に馬鹿にしてるッス。
「僕たちは弱くてもプロの魔球選手ッス! 正々堂々、勝負ッス!」
僕はすぐに魔力を込め、振りかぶって投げ込んだ!!
「まぁまぁ、プレゼントはありがたく受け取るもんだ……ぜっ!!」
キィーーーーンッ!!!!
次の瞬間、打ち返された球は僕の顔面に向けて真っ直ぐに飛んできた。
やばい、コレは避けられないッス!!
怪我でもしたら補欠もいない僕たちは魔球が続けられなくなり、そこでゲームセットッス!!
なんとか避けないと!!
でも、何故かゆっくりと見える球。
蘇る猛特訓の日々。
そして、常に目で追い続けていた……。
走馬灯が脳内を駆け巡る中、眼前に迫る球。
あぁ、避けるのは無理そうッス。
みんな抑えきれなくてごめんッス。
そう覚悟を決めて目をつぶったその時。
「おりゃーーーーッ!!!!!!」
「!?」
ショートを守っていたアルトちゃんが僕と球の間に割り込んできた!!
なんでここにアルトちゃんが!?
球の勢いと共に吹き飛ぶ僕たち!
直撃を受けたアルトちゃんは、僕より更に後方まで土埃を上げて2塁ベース手前まで転がっていった。
叫び声と歓喜でどよめく客席!!
僕はすぐに起き上がり、アルトちゃんの元に駆け寄ったッス!!
「アルトちゃん!! 大丈夫ッスか!?」
アルトちゃんは苦悶の表情を浮かべながら、背中を丸めてピクピクと痙攣しながら横たわっていた。
いくらもの凄い球を投げても、この子はまだ成人もしていない女の子。
その子が僕が死を覚悟した球を代わりに受け止めてくれた。
奥底から込み上げる感情をグッと飲み込む!!
そう、まだ試合は続行中なのだ!! アルトちゃんの決死の覚悟を無駄にさせてたまるか!!
アルトちゃんを介抱しつつ球を探す!!
でも球がない!! どこだ!! どこにあるんだ!?
バッターは球を見失ったとわかるとすぐさま進塁していく。
このままではランニングホームランだ!!
どこだ!? どこにあるんだ!?
「……ッ!?」
僕はアルトちゃんの妙に膨らんだ胸元に目が止まった。
あれ? アルトちゃんってこんなおっぱ……胸あったッスかね?
いやいや、年頃の女の子だし成長著しい時期でもあるから御成長されていてもおかしくない。
でも、この状況でコレは……。
僕の中で焦りと雄の本能と葛藤のデスマッチのゴングが鳴った!!
やばいくらい暑くなってきました。皆様熱中症などには充分ご注意下さい。
面白いと思っていただけましたら、イイネやブクマ、感想など頂けると嬉しいです!
また、下記の☆などをクリックして評価などをつけていただくともっと嬉しいです!
よろしくお願いします!
次回更新は7/17となります。




