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184 掴まれた尻尾

 逆転の一発を放ったジャビッツが耳をつん裂くような大歓声の中、ダイヤモンドを大手を振って周っている。


 でも、そんな歓声も僕の耳には一切入ってこなかった。


 たった一球。


 僕はみんなが守り抜いた貴重なリードをたった一球で無に返してしまった。


 これまでの死にものぐるいで耐えた努力も血も涙も汗も全て無くしてしまった。


 いったい僕は何をしてしまったんだろう?頭の中が真っ白で何も思い浮かばない。


 ただ一つハッキリしてるのは、僕が取り返しの効かない事をしてしまったと言う事実。


 それを受け止めなくてはいけないのに、体と脳と心が全力で拒む事でこの状況での正気を保とうとしていた。


「あは、あははは」


 変な笑が込み上げてくる。


 この試合に向けてみんなで努力してきた事は何もかも無駄……無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!


 積み上げてきた積み木が指先一つで崩れ去るように、自我が壊れていく。


 そんな精神を無意識に守るかのように意識の糸を手放そうとした……その時。
















「マース!! オラっ!! ボーッとすんじゃねぇ!!!!」


「ピギャっふぅ!?」


 突然尻尾の付け根を力強く掴まれる感覚と、全身を貫く痺れが僕を覚醒させた!


「あっ……アルトちゃん!?」


「何ホームラン撃たれて逆転されたからって、この世の終わりみたいな顔してんだよ!! 試合はまだ終わってねぇんだぞ!!」


 アルトちゃんの手に力が篭り、更に尻尾を締め上げていく。


「いいかマース!! 打たれてしまったものはもう過ぎ去った現実だ!だけど、それを引きずっていたら更に追加点を与えてしまう!! 切り替えて次をどうするか考えろ!! お前はこのチームのキャプテンなんだぞ!!」


 僕はハッと我に帰った!


 そうだ、僕は何を考えていたんだ!


 一人で弱気になって絶望してなんになるんだ!


 改めてアルトちゃんを見る。


 僕より少し小柄で年下の女の子。


 僕達よりなぜか魔球に詳しくて、負けず嫌いで、ワイルドで、料理上手で、働き者で、召喚魔獣がいて、明るくて、正義感が強くて……。


 尊敬する女の子。


 そんな子に叱咤されるなんて……。


 恥ずかしさと悔しさとが頭の中を駆け回る。


「そうだぞマース! 次だ次!!」

「気持ち切り替えて行こうぜ!! まだ俺らには裏の攻撃もあるんだ!!」

「ド〜ンマ〜イだよ〜」


「みんな……」


 いつのまにかみんながマウンドに集まって来て、思い思いに僕を励ましてくれる。


 そうだ、諦めるなんてまだ早い!!


 僕は今にも溢れそうな涙を堪えて一喝する!!


「ごめん!! 打たれちゃったッス!! 次はなんとかするから守備は任せるッス!!」


「「「「「「「「おっしゃっあ!!!!」」」」」」」」


 諦めない! 僕には心強い味方がいるんだから! 

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次回更新は7/3予定です。

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