171 初球はド派手に!!
『さあ、まもなく試合開始ですがこれはどう言った事でしょう? 見間違いなければ投球練習をしているのは年はもいかぬ女の子ではないでしょうか?
会場のあちらこちらから騒めきが起こっています』
『ホッホッホッ! カルロスも面白い事してくるのう』
『おっと! 忘れておりました!! 今回の試合は解説として魔球連会長を務めておられます、チューバ様にお越しいただいております!!』
『どーもー』
『早速ですがチューバ様!! 先発のあの子ですがナカフ音楽祭優勝者のアルト氏とお見受けします。先程面白い事とおっしゃっておりましたが? 魔球経験の浅い少女に先発を任せると言うカルロス様の狙いは何なのでしょうか!?』
『そうか君はナカフ音楽祭の司会を務めておったのだな。確かに魔球経験は圧倒的に浅いが……。それはそうと聞き及んでおるのだが、君は決勝であの子が解き放つ魔力の輝きを覚えておるか?』
『えぇ!! それはもちろん!! あれ程までに会場を包み込む魔力の演出は初め……なるほど!! そう言う事ですか!!』
『ホッホッホッ、なかなか察しがいいのう。ほれ、試合が始まりそうじゃぞ』
『これは期待が高まる一戦となるでしょう!! さぁサイレンと共に試合開始です!』
* *
球場が今か今かと盛り上がる中、打席にはジャイオンズの1番打者がバットを横に寝かせてベース上でしたり顔をしながら構えている。
本当この絵面は慣れないな。
魔球では野球と違いホームベースの両側にバッターサークルがあるわけではなく、ホームベースを中心に広い円形上のバッターサークルがある。
前世で知っている野球では見られないホームベースを跨ぐ構えが可能なのだ。
必然バッターは剣の形をしたバットで自分に向かってくる球を弾き返すのだが、魔球には体に当たってもデッドボールがない為試合続行となる。
つまり、あの打者は「小娘の球なんぞ痛くも痒くもない」と言われているのと変わらないのだ。
その証拠にベース上にもかかわらず構えてはいるが、どう見ても打つ気のない力の抜きよう。
ジャイオンズのベンチを見ても。
「優しく当たってあげろよー!!」
「もっと前で投げてもいいぞー!」
「わざと吹き飛ぶ演技くらいしてやれ!」
「初球空振りはマナーだぞー」
と明らかに舐めきっておる。
ほほう……ではお言葉に甘えさせてもらおうじゃないですか。
「おーい、カウウー。アレで行くからなー」
「う〜ん、い〜い〜よ〜」
キャッチャーのカウウが打者の背後に立ち、大きく受け止める構えをとる。
審判のプレイボールの掛け声と共に俺は一歩後方に左足を大きく下げ、腕を背中近くまで振り上げた。
どんなに頑張っても所詮はまだ10歳そこそこのこの体。
大人のましてや魔球のプロとは体格も違いすぎる。
なので普通はオーバースローで投げるところだけど……。
俺はニヤリと笑い、後方に振り上げた腕を大きく一回転させながらステップを踏み、スナップを効かせながら球を太腿で弾いた!!
そう! 俺の用いた投法はウインドミル!!
キュンッ!!という空気を切り裂く音を奏でながら球はポップしながら一瞬に打者の腹部に突き刺さった!!
「ぐへぇ!!!!!?」
打者は何が起きたのか分からず、構えていたキャッチャーのカウウの腕の中に吹き飛んだ!!
次の瞬間、球場外まで響き渡る絶叫が耳を貫いた。
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