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17 魔法訓練

 俺は朝から気分がすこぶる高揚していた。

 今、町から少し離れた荒野で週3回行う魔法の訓練に来ていたのだ。


 今回初参加の俺だが、そりゃもうウキウキだ! 今まで生活魔法のみで攻撃や防御魔法のやり方はわからなかったからだ。


 攻撃魔法って男のロマンってもんあるよね! ドラクエ世代の俺としてはメ◯ゾーマ的なやつとかかなり憧れがあるんだよね。あー早く教えてくれ!


「この辺でいいわね。じゃあ、魔法の基礎から始めるわよ! アルトは人一倍の魔量があるから攻撃魔法や防御魔法を覚えてもらって自身の身を守る術を叩き込んでいくからね」


「はい! ミーシャ先生よろしくお願い致します!」


「アルトちゃん凄く張り切ってる。私も負けないようにしないとね」


「まずは適性属性を確認するわ。生活魔法を火・水・風・土の順に最大出力でやってみて」


 生活魔法は普段の生活のちょっとした事に使える便利魔法だ、消費魔力は少なく適性属性が違っても誰でも使える。


 火ならマッチ程度の火の粉を出す、水なら桶に水を溜める、風は室内換気のそよ風程度、土は地面を1㎡耕すくらいだ。

 なので各属性の最大出力を見てその人の魔量と適性属性を確認する訳だ。


 まずは火だ、竃に着火するくらいだから実際最大出力でやる必要も無いし、下手すると火事になり兼ねないから今までやった事無かった。


 いつも通り人差し指を前に出し、魔力を指先に溜めて火の粉を出すイメージで魔力を最大限に込める。


「じゃあやるよ!……えい!」


 ゴォウ!!!!


 指先から2m程の火炎が立ち上った!


「うわっちぃ!! びっくりした!」


「アルトちゃん大丈夫!?」


 炎を出した瞬間、余りの熱にびっくりして尻餅をついた俺にソプラが心配して駆け寄って来た。


「驚いたわ……無詠唱生活魔法で此れ程の火炎は見た事無いわ……アルトあなたの火属性はかなり高めみたいね! 素晴らしいわ!」


 ミーシャが目を見開き称賛してくれた。


「へへへ、やったね!」


 魔法の才能が無かったらどうしようかと思っていたが大丈夫なようだ、あと褒められるとやっぱり嬉しい。


 サクサク試していく。


 水魔法は直径2mの水玉ができ、風魔法は3m位のつむじ風、土魔法は8畳位の広さが耕せた。


 振り返るとミーシャは絶句し、ソプラは「すごーい!」と手をパチパチ鳴らしはしゃいでいる。


「もはや適性云々では無いわね……魔量が桁違いだわ……生活魔法でB級魔術士並みだもの……使いこなせれば間違いなくA級……いや天の特属性も合わさればS級にも……」


 まじか! 最初はなんも能力なんて無いと思っていたけど凄いじゃん!

 あっ……でもこれやっぱりあの雷に撃たれたお陰なんだろうか?

 まぁ、なんにせよ自分の身を守ることができる先が見えたのでよしとするか。


「アルト、あなた本当に逸材だわ……ふふふ、いやねぇ。こんな凄いの見せられたら昔の血が騒いじゃうわ……」


 ミーシャさん、なんか目が怖いんですけど! 昔の血が騒いじゃうとか悪役っぽいセリフじゃないですか、やだー!


「さて、魔量が凄いのはわかったけど本題はここからよ! お手本をソプラが水魔法の詠唱付きでやってみるから同じようにやってみて。ゆっくり唱えるから間違えないように」


「よろしくねアルトちゃん、なんか……見られるの恥ずかしいなぁ」


 ソプラが顔を赤らめ、頬をかきながら前に出る。いつ見ても愛くるしい。


「にひっ! よろしくお願いします! ソプラ先生!!」


 俺はちょっとからかうように笑い深々とお辞儀する。


「わあぁ! やめてよぉ! 余計緊張しちゃうよぉ!」


 更に真っ赤になる顔を左手で隠しながら、右手をバタバタさせている。

 仕草がいちいち可愛いんだよね、あぁ……萌える。一日中からかっていたい。


「はいはい、いちゃつかないの! 早くお手本お願いね」


 パンパンと手を叩きソプラを急かすミーシャさん。もう少し遊ばせてくれい。


 ソプラの顔はまだ真っ赤だが少し落ち着くように深呼吸した。

 そして、右掌を前に出し、10m位先にある岩に狙いを定めて詠唱を始める。


「我が力の水面より矢となりて裁きを与えん、ウォータアロー!」


 キィン!!


 掌から一本の水の矢が射出され岩に直撃! 当たった瞬間矢は弾け飛んでしまったが岩を少しえぐっていた。


  「おおー!ソプラ凄い!岩がえぐれてる!」


「エヘヘ、どお? 凄いでしょ?」


 ちょっと自慢げに振り返りながら満面の笑みを向けてくる。

 あぁ! 眩しい! あざとい!


 でも魔法は素直に興奮する! 気分は初めてマジックを見た子供のようだ!

 でも、あれは確かシーラが使っていた魔法だ。

 こんなに威力があったのか……早くやってみたい!


「じゃあアルトやってみなさい」


「はい!」


 足は肩幅に開き、右手を前に、狙いは眼前の岩。大きく深呼吸をして気分を落ち着かせて詠唱を始める。


「我が力の水面より矢となりて裁きを与えん、ウォータアロー!」


 ボフン!!


 掌から直径2m位のでかい水玉が勢い良く射出され放物線を描き岩に直撃! もの凄い水しぶきを放ちながら岩も吹き飛んだ!


「うおおおおお! でかいのが出た!……けどこれソプラのと大分違うような……」


「あら? おかしいわね? 詠唱は間違いなかったのに? アルトもう一回お願いできる?」


 俺は別の岩にもう一度ウォータアローを放つがさっきと同じく水玉がぶっ飛んでいくものだった。


「んー。威力は申し分ないんだけどねー……。アルト、今度はこっちを詠唱してみてくれる?」


 ミーシャが別の詠唱を始める。


「我が力の熱情より矢となりて裁きを与えん、ファイヤーアロー!」


 キィン!!


 今度は火の矢が射出され岩に当たると同時に炎が燃え上がった!

 おお、これもかっこいい!早速やってみる! 詠唱も殆ど同じだがら覚えやすいな。


「我が力の熱情より矢となりて裁きを与えん、ファイヤーアロー!」


 ボフン!!


 俺の掌からさっきの水玉と同じ位の火の玉が射出され岩に当たると豪火に包まれた。


「……ミーシャこれって成功でいいの?」


「だめね! 威力は高いけど、スピードと整形がポンコツだわ!」


 ですよねー! 全然、矢の形していないし最大出力の生活魔法となんら変わっていないですもん!

 てかポンコツは地味に心に刺さるからやめてください……魔量が多くて調子乗ってました。すいませんでした。


「いい? アルト、詠唱はただ唱えれば良いってもんじゃないの。自身の魔力を感じて言葉に乗せて解き放つの。要は詠唱の読解力と想像力が大事って事ね」


「うーん……。よくわかんないなぁ……」


「因みに整形が玉形だったのは1番想像しやすい形だからよ。もっと具体的に矢の形を思い浮かべながらやってみて」


 おお、成る程! 具体的なイメージが大事って事ね! やってみよう。


「あと、風と土属性もできるか試してみたいけど……。アルト、体は大丈夫?」


「別になんともないよ?」


「……凄いわね……かなり高威力の生活魔法と攻撃魔法を3発も出してるけどケロッとしてるなんて……。普通はあんなの一発撃てば魔力切れで倒れてるわよ。魔量はA級以上ね」


「アルトちゃん最初は難しいのは当たり前だよ! 練習頑張ろう! でも、あんな凄い魔法たくさん打てるなんてビックリだよ!」


「そんなに褒められると照れるなぁへへへ、よーし! 早く魔法をマスターしてA級魔術士になっちゃうよ!」


 その後、他の魔法も試してみた。

 ウインドアローは同じく2m位の風玉が岩に当たると旋風を巻き起こし、アースアローに至っては1m位の土玉が目の前にズシン! と落ちただけだった……。


 日が変わって防御魔法も教わり、何回も練習したんだけど結果は相変わらず玉、玉、玉……。


 ミーシャさん、ソプラさんが哀れむような目でこっちを見ている……。

 やめて! 恥ずかしいからそんな目で見ないでぇ!!!!


 A級魔術士への道はかなり遠いみたいだ……。

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