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159 マースの決意

 自分はマース。


 小さい頃に見た魔球に魅せられて、強いチームのある王都の衛兵に志願して見事入隊。


 今は王都衛兵第26部隊に所属して日々魔球の練習と王都の治安を守るしがない衛兵ッス。


 連日の訓練と魔球の練習はきついものの、忙しい毎日を送っています。


 でも、肝心の魔球選手の才能には恵まれず魔球チームの最下位、8軍から這い上がれず雑用ばかり送る日々ッス。


 先日、一軍で大人気のジャビッツさんに大至急忘れ物を届けると言う任務を請け負ったッス!


 これはチャンスッス!! ここで少しでも功績を上げれば昇格のチャンスが巡って来るかもしれない!


 幸い足には自信があるから大急ぎでやるッス!


 自分は急いでジャビッツさんのロッカーから指定した荷物を背負い、試合会場まで戻ったッス。


 そんな最中、酔っ払いに絡まれていた美少女達を見つけたんッス。


 魔球選手以前に衛兵としてこれは見過ごせないッス!


 酔っ払いを追払い美少女達に賞賛と拍手をもらって少し照れていると、よく見たらなんと4人中3人が召喚獣持ちだったッス。


 確か近くに王都魔導女学園があったはず……多分そこの生徒さん達ッスかね。


 なら、こんな酔っ払いなんか一捻りだったはず……なんだか余計な事しちゃったのかと恥ずかしくなってきた所で、その中の子が荷物の事を思い出させてくれたッス。


 ヤバイッス!! 時間ギリギリ!!


 自分は大慌てで試合会場まで戻った……ッスけどギリギリ間に合わなかったッス。


 試合後。


「てめぇ!! 荷物運びもろくにできねぇのかよ!! 8軍マジ使えねぇ!!」


「いや、路上で女の子が酔っ払いに絡まれててそれを助け……」


「そんな事より俺の道具運びの方が大事だろうが!! そんな判断もできねぇなら死ね!!」


「えっ!? ジャビッツさん!? 待っ……」


 自分はそこでジャビッツさんの火炎魔法をまともにくらってしまったッス。


 確かに荷物運びが間に合わなかったのは事実ッスけど、自分の行為は間違っていないと思っているッス。


 例え自分があの子達を見捨てても十分対処できたはずとわかっていても、自分の判断は魔球選手として間違っていないと信じてるッス。


 全身が焼け焦げ、どんどん意識が薄れていく。


 あーぁ、せっかくのチャンスだったのになぁ……。


 これで自分の魔球人生も終わりかぁ……。


 あんなにみんなと練習したのになぁ……。


 せめて……せめて、1試合だけでも……試合、したかったなぁ……。


 ……。



















「終わったよぉー。結構酷い怪我だったけどこれで大丈夫」

「おぉ! ソプラありがとう!」


 あれ? 誰かの声がする。あぁ、もしかしてお迎えがきたんッスかね? でも、やたら元気なお迎えッスねぇ。


「おーい! 大丈夫かぁ?」


 痛っ!? 頬を叩かれてる!? っちょ!? 痛いッス!? お迎えってこんな荒っぽい……。


「うぅ……ん? あれ? ここは?」


 目を覚ますと、やたらボロボロの食堂みたいな家屋の中に寝かせられていたッス。


 そこには見覚えのある美少女が4人自分を心配そうに見つめていたッス。


 事情を聞くと小さいドラゴンを使役しているやたら元気なアルトちゃんが自分を救出してくれて、青髪のほんわかしたソプラという子が回復魔法をかけてくれたようでした。


 助けてもらった上に回復魔法なんて希少な魔法をこんな自分にかけてくれるなんて、この子達は天使ッスか!?


 あぁ、もうこんな優しい気持ち初め……ん? アルトちゃんの表情がやたら怖いッス。とりあえず目を逸らしとくッス。


 その後、カウウが自分を迎えに来てくれて今まで食べた事の無いチャーハンをご馳走になった後、なぜかアルトちゃんが自分達の魔球の練習を見るという事になったッス。


 魔球の試合を見たから興味持ったんッスかね? まぁ、女の子が自分達の練習を見てるってだけでも、他のチーム員の練習にも気合いが入るってもんッスよね!!














 ……っとそんなふうに考えていた時期が自分にもありました。


 アルトちゃんが急にマネージャーになると言い出したと思ったら、監督まで連れてきたッス!!


 初めは何なんだ? と思いながらみんな練習始めたんッスけど、このミーシャって言う人めちゃくちゃ厳しいッス!!


 体力作りの基礎練習から始まり、打撃練習、守備の連携、走塁の見極め、球のいなし方等々、技術や知識がとてもじゃないけど平民レベルじゃないッス!!


 食事も今までのパンとチーズだけじゃなく、やたら栄養価が高く極上の美味い料理を振る舞われたッス。


 こんな食事……1軍選手でも食べているかどうか。


 そんな料理を自分達の倍以上に食いまくっているあのドラゴンや、アルトちゃんの仕事の迎えにくる赤い鎧の冒険者は一体……。


 そして、朝から晩まで衛兵の仕事中以外は全て練習にあてがわれる事になり、チーム員からも「この練習を続けるなら死んだ方がまし」「飯だけが生きがいになってる」「サボってるとお尻を撫でられる……色んな意味で怖い」と悲痛な相談を受ける事になったッス。


 それでも、みんなが練習をやめなかったのはアルトちゃんの存在だったッス。


 なんでアルトちゃんこの地獄のような練習に平然とついてきてんッスか!? あなたマネージャーじゃなかったんッスか!? それ以前に普通の平民なんッスよね!?


 そんなアルトちゃんが苦しいながらも楽しそうに魔球の練習をやっている姿を見てチーム員の意識も徐々に変わっていったッス。


「あんな少女に負けてられねぇ!!」

「魔球が楽しいって思い出してきた」

「アルトちゃんの球打ち返すまで魔球やめられない!!」


 自分も未だかつて無いほど充実した魔球漬けの日々に高揚感を隠せない。


 絶対、1軍に……ジャビッツに一泡吹かせてやるッス!!

よろしければブクマ、評価、感想など頂けると嬉しいです!よろしくお願いします!


*9/11 158話にマースがキャプテンと言う情報を追加しました。

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