153 プレッシャー
「隊長!?」
「何をやってるんだ?」
ジャビッツが片膝を付き、頭を下げる。
「いえ、補給隊のチビが魔球道具持ってくるのが遅れたので試合前の調整が不充分になり無様な試合になってしまいましたので躾を……」
「あの程度の相手に調整不十分だから接戦を許したと?」
ジャビッツの話を遮り、鋭い眼光で睨みつけた。
「ッ!? いえ……その……」
ジャビッツの顔からどんどん血の気が引いていく。
お? さっきまで威勢のよかったジャビッツが急に焦りだしたぞ?どうやらこのおっさんがコイツの上司っぽいな。
よし、ここは畳み掛けてガツンとやってもらおう! イケメンだからってなんでも許されると思うな!!
「おっさん見てよ! そいつ酷いんだ!こんなになる程の魔法を人に撃つのはやり過ぎだって言ってやってよ!」
ぼろぼろの少年を抱き抱えた状態で俺がけしかけると、おっさんがジッと目線をこちらに向けた。
ゾクッ!!
その目を見た瞬間、背筋が凍るような緊張が全身を貫いた!
なんだこのプレッシャーは!?
『ほう、此奴は中々強いぞ。やるか?』
ムートが耳元で少し嬉しそうに呟いてくる。
やめろバカムート!! こっちは怪我人もいるんだぞ! 戦ってどうする!!
「ふむ、補給隊が遅れたのは間違いないんだな?」
おっさんは俺たちを一瞥した後、ジャビッツに目線を戻して問いかけた。
「ッはい!! 間違いありません!!」
「……ならば問題無い。帰るぞ」
おっさんは何事もなかったかのように踵を返し球場の中に戻ろうとした。
「は? え? ちょっと待ってよ!? 何が問題無いんだよ!! こんな酷いことしといて問題無いわけ無いだろ!?」
俺は声を荒らげおっさんを引き止めた。
「……お前は今この場が戦場であったとしても同じ事が言えるのか?」
おっさんはゆっくりと振り返り、こちらを見据えた。
「は!? なんで戦場の話なんか出てくるんだよ!? そんなの知るか!! 魔球の試合とは関係な……」
「黙れ!!」
「ッぐぅ!?」
おっさんが一喝した瞬間、場の空気が震え上がり肌をビリビリとしびれさせる!
激怒した時のミーシャと変わらないプレッシャー!! 本当何なんだよこのおっさん!?
「我々は確かに魔球選手だが現役の兵士だ。いついかなる時も有事を想定して訓練している。
一刻を争う中、自身の都合で物資を届ける事ができないという事なぞあれば、最前線で戦っている兵を何人も見殺しにすることだってあるのだ。
それを考慮してもそれくらいの罰を受けるのは至極当然。平和ボケした平民と我々とは意識が違うのだ」
「だけど……」
でも何故か言い返せない……このおっさんの言う事も一理あるように聞こえてしまう。
「今回の件は、それくらいの罰で目をつぶってやる……行くぞジャビッツ」
「はい!! ありがとうございます!!」
ジャビッツは深く頭を下げてお礼を言った後、そそくさと球場のドアを開けおっさんを中へ導く。
「お前もさっさとソレを連れて帰れ」
おっさんはそう言って2人は球場の中に入って行った。
「ッくそ!!」
俺は行き場のない感情を拳に込めて地面を殴りつけた。
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