150 魔球観戦
「さあ着いた! ここが魔球の試合場だよ!!」
「「「おぉー!!!!」」」
球場の入り口に伸びる道脇には出店がズラリと並び、食べ物や飲み物や魔球観戦グッズまで売っている。
奥の大きな観戦席に繋がる階段には今から観戦するであろう人々が食べ物や飲み物を持って歩く姿が見える。
いいねぇ!! このお祭りみたいな雰囲気はいつまでたってもワクワクがうなぎのぼりだぜ!!
『ウホー!! 魔球観戦とは祭りの事だったのか!! おいアルト!! この列の屋台の食い物は全部買うぞ!! ついてこいクー!!』
『クックゥーー!!』
ムートはクーちゃんの頭ををむんずと足で掴み颯爽と屋台に飛んでった。
「おいっ!! 待て!! クーちゃん持って行くなぁ!! ……ったく、メインの前にはしゃぎやがって」
「あははは! クーちゃんも楽しそうだよぅ♪」
「アルトさんの召喚獣はアグレッシブですわ」『ピィ……』
「これも魔球観戦の醍醐味だからねぇ」
そして、俺たちもそれぞれの食べ物を買い、暴走したムートを回収して長い階段を登って球場に入った。
「『おぉおおおお!!』」
目の前に広がるのはまさに転生前に見た野球場そのものだった!!
扇形に広がる白線、青々とした外野の芝生、土埃が上がらないように水を撒く人達。
その戦いを観戦する為に集まった人々と観客席は、さながら満員のプロ野球の試合会場を彷彿とさせる。
ふと高校時代の思い出が蘇ってきた。
本気で甲子園を目指して仲間と共に厳しい練習を頑張ったんだが、最後の大会は県ベスト8で力尽きた。
あの時程、感極まって泣いた日はなかったなぁ。
10年以上ぶりに見る光景に俺はしばし言葉を失って立ち尽くしてしまった。
「アルトちゃんどうしたの? 早く席行こ?」
「はぅ!?」
そんな俺を心配したのかソプラが俺の顔を覗き込んできた。
下から覗き込むように心配してくるなんてあざとすぎるよソプラ!! そんなんされたらたまらなく抱きしめたくなっちゃうじゃないか!!
くぅっ!! この両手に持った大量のホットドッグとポップコーンと飲み物が今は酷く憎い!!
とりあえず席に座った俺は試合が始まるまでみんなに魔球の大雑把なルールをレクチャーした。
基本的にルールは前世の野球と変わらないんだが違う点がいくつかある。
その一つがバッターサークルが3mくらいの一個の円形だという事だ。
魔球ではバットではなく魔球用の剣を使用する為だ。
野球のように横凪に振るもよし、正面に立ち掬い上げて振るもよし、振り上げて叩きつけるのもよしと様々なので振りやすいように円形になっているらしい。
高速で飛んでくる土魔法の玉を打ち返すのは剣技の練習にもなるし、塁間の走破や守備の連携などは衛兵隊の格好の訓練になるようだ。
スポーツというより軍事訓練みたいになってるのは異世界ならではなのかなぁ?
そんな説明をしていると会場全体から黄色い声援が沸き上がった。
「「「「「キャァー!! ジャビッツ様ぁぁぁあーー!!!!」」」」」
ふとグランドを見ると長い金髪をかき上げながらユニフォーム姿のイケメンが帽子を取って観客席に手を振っている。
「あれがジャビッツか……」
見た目は確かにイケメンだ。高身長、程よくついた筋肉、爽やかな甘いマスク……どれをとっても完璧で女性人気が高いのもよくわかる。
どこに行っても女性はこんなタイプの男が好みだよねぇ……うん。
俺がチラッと隣を見ると……。
「「キャァー!! ジャビッツ様ぁぁぁあ!! こっち向いてぇええ!!」」
ユーヤさんとシフォンちゃんがさっき出店で買っていた鉢巻やうちわなんかを持って必死にアピールしている。
『ぬっ!? 何やら楽しそうだな!! 我もやるぞ! アルトよ! うちわを買ってくるのだ!!』
「お前はやらなくていいよ!! 大人しく飯食べてろ!!」
しかし、2人とも熱量が半端ねぇなぁ。
ソプラは豹変した2人を見てオロオロしてる。なんだろう、妙な既視感があるような……。
あっ、この感じ……熱心だったジャ〇オタの姉と初めてライブに行った時だのやつだ。
普段優しかった姉が豹変したように狂いながら応援や歌を歌ってるのを初めて見てビックリしたんだっけ……。
俺が連れて行かれたのは、主にグッズの荷物持ち要員だったわけだけど……。
そんな思い出に浸っているうちに各チームがホームベース前に並び、互いに一礼して守備の選手がグランドに散らばる。
まぁ、俺は普通に試合を楽しみますか。
ソプラをそれとなく宥めて深く椅子に腰掛けると、審判の掛け声と共に歓声が上がり試合が始まった。
先週はお休みでした。今週からまた頑張りますね!
よろしければブクマや感想、下記の評価☆などをクリックしていただくと、大変励みになります!
よろしくお願いします!




